第28話 私とご主人様との狩り
どうやら考えていることはお見通しのようです。
そして続けてこう言われました。
「帰りたくないのならここにいてもいいんだよ」
と言うと優しく微笑みかけてくるのですが、
その笑顔が逆に不気味で恐ろしく感じてしまいました。
でも帰るわけにはいかないので仕方なく残ることにしました。
そして、次の日から彼による魔法の指導が始まりました。
といっても最初のうちは基本的な知識や技術を身につけるためのものだったので、
それほど難しくはありませんでした。
ただ、それでも魔法を使うことができるということが嬉しくて仕方がなかったので一生懸命勉強しました。
おかげで半年後には一通りの魔法を使いこなせるようになりました。
しかし、それでも完全に記憶を取り戻すことはできず、思い出すことはできませんでした。
それでも彼は諦めることなく、毎日欠かさず世話をしに来てくれますし、
色々と話を聞かせてくれるので退屈することはありませんでした。
それからというものの、彼と一緒に過ごす時間が私にとって何よりも大切なものとなっていきました。
そんなある日のこと、いつものように二人で過ごしている時にふと思い立ち、思い切って彼に尋ねてみることにしました。
「ねえ、どうして私なんかのためにここまでしてくれるんですか?」
そうすると彼は不思議そうな顔をしてこう答えました。
「それはもちろん、君のことが好きだからだよ」
そう答える彼の表情は優しい笑顔でした。
その言葉を聞いた瞬間、私の心は大きく揺れ動きました。
今までずっと心に秘めていた想いが溢れ出し、気がつけば涙を流していました。
そうすると彼は慌てた様子で駆け寄り、私のことを抱きしめてくれました。
私は彼の胸に顔を埋めて泣き続けました。
その間、彼は何も言わずに背中をさすってくれました。
しばらくしてようやく落ち着きを取り戻した私は顔を上げ、彼と見つめ合いました。
お互いの吐息がかかるほど顔が近い距離にあり、心臓の音が高鳴ります。
彼は私を見つめ返すと、ゆっくりと顔を近づけてきました。
私は目を閉じて受け入れようとしますが、唇が触れる寸前で止まり、耳元で囁かれました。
「愛してるよ、誰よりも君のことを大切に想っているからね」
そういって優しく口づけされました。
その瞬間、心の中にあったモヤモヤが一気に晴れていくような気がしました。
そして、私は自分の気持ちを伝えようと思いました。
「……私もあなたのことが好きです」
そう告げると、もう一度キスをしてくれました。
「ありがとう、嬉しいよ」
そういう彼の笑顔はとても輝いて見えました。
その後は幸せな時間を過ごすことができました。
お互いに愛の言葉を囁き合ったり、手を繋いだりして過ごしました。
そしてついにその日はやってきました。
その日を境に私は少しずつ思い出していくことができたのです。
そして全てを思い出した時、私は決意しました。
彼を裏切らないこと、そして何があっても守ることを誓いました。
最後にもう一つだけお願いしたいことがあることを思い出し、聞いてみることにしました。
「あの、一ついいですか?」
私が尋ねると、彼は優しく微笑んで答えてくれました。
「なんだい?」
その言葉を聞いて安心した私は意を決して言いました。
「もし、私がご主人様に愛想を尽かしてしまったらどうしますか?」
それを聞いた彼はキョトンとしていましたが、すぐに笑顔に戻ると、こう言いました。
「大丈夫だよ、そんなことはありえないから安心していいよ」
と答えた後、私を抱きしめる腕に力を込めたのを感じました。
どうやら冗談だと受け取られたようです。
本当は本気だったのですが、これ以上追求しても意味がないと思ったので諦めることにしました。
その後、私達はベッドに入り抱き合って眠りにつきました。
朝になると、いつも通りの日常が始まりました。
朝食を食べ終え、身支度を整えた後、玄関に向かいます。
そこには既にご主人様の姿がありました。
私は深呼吸をしてから、挨拶をすると、一緒に出発することになりました。
目的地までは馬車に乗っての移動となります。
到着までの間、色々な話をしたのですが内容は全く頭に入ってきませんでした。
緊張しているせいだと思います。
いよいよ森の入口に到着いたしました。
ここを抜けて行くと目的の街があるはずですが、問題はそこから先なのです。
森の中には魔獣と呼ばれる生物が存在しているため危険が多くあります。
そのため慎重に進まなければなりません。
道中では何度か魔物に襲われましたが難なく撃退することができましたが、
流石に疲れが出てきてしまい休憩を取ることにしました。
その際、突然尿意を感じてしまい我慢できなくなり、
茂みに隠れておしっこをする羽目になりました。
終わった後は羞恥心でいっぱいになりましたが、同時に何とも言えない快感に襲われてしまったのも事実です。
そんな状態のまま再び歩き始めたのですが、次第に意識が朦朧としてきて、足元がふらつき始めてしまいました。
まずいと思った時には手遅れでした。
そのまま地面に倒れ込んでしまいます。
意識が遠のいていく中、誰かが駆け寄ってくる気配を感じましたが、
それが誰かを確かめる前に気を失ってしまいました。
目が覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝かされていました。
隣を見ると、彼が椅子に座っていました。
彼が心配そうにこちらを見つめています。
目が合うと笑顔を見せてくれたので安心しました。
そうすると、彼が口を開きました。
どうやら街まではまだ遠いらしく、今日はこの近くに野営することになったようです。
それを聞いて、ホッとした反面、残念にも思いました。
「そうですか……それなら仕方ないですね……」
と言うと、彼は申し訳なさそうな顔をして謝ってきました。
そんな顔をされるとこちらも困ってしまいます。
話題を変えようと思ったその時、彼がおもむろに立ち上がるとこちらに向かって歩いてきました。
何をするつもりなのかと思っていると、私の目の前で立ち止まり、じっと見つめてきます。
どうしたのだろうかと思っていると、不意に手を伸ばされてきました。
驚いて身を引こうとするよりも早く腕を掴まれてしまいました。
そしてそのまま引き寄せられると抱きしめられてしまいました。
突然のことで頭が真っ白になり何も考えられません。
心臓の音がバクバク鳴っているのがわかります。
顔も真っ赤になっていることでしょう。
恥ずかしさのあまり死んでしまいそうです。
しかし、それ以上に嬉しさの方が勝っていました。
しばらくそのままでいると、彼が口を開きました。
その声は少し震えているように聞こえました。
顔を上げると、目が合った瞬間にキスされました。
舌を入れられ、口内を舐め回される感覚にゾクゾクしてしまい、力が抜けてしまいます。
その場に座り込んでしまった私に彼は覆い被さるようにして迫ってきました。
このままではまずいと思いましたが逃げることもできず、されるがままになってしまいました。
気がつくと服を脱がされていて、下着姿になった状態でベッドに押し倒されていました。
私は抵抗しようとしましたが、力が入らずなす術がありません。
結局、されるがままになってしまうことに。
「これから狩りへ行きませんか?」
「ああ、構わないよ」
こうして私達は森の中へ入って行くことにしました。
最初は順調でしたが、奥へ進むにつれてだんだんと暗くなり、足元が見えにくくなってきました。
おまけに薄暗く不気味な雰囲気になってきたため怖くなってきました。
そうすると、彼が手を繋いでくれたのです。
そのおかげで少し落ち着きを取り戻すことができました。
そうして歩いているうちに、目の前に大きな岩のようなものが現れました。
なんだろうと思って近づいてみると、なんとそれはドラゴンでした!
びっくりして思わず叫んでしまいそうになりましたが、なんとか堪えることができました。
それにしてもどうしてこんな所にドラゴンがいるのでしょうか?
不思議に思っていると、彼が教えてくれました。
どうやら、この辺りに生息しているらしく、たまに人里に下りてきては暴れまわることがあるようです。
今回もそれに該当するようで、早急に対処しなければならないということでした。
ですが、相手はドラゴンです。
果たして私達だけで倒せるのでしょうか?
不安を抱いていると、彼は大丈夫だと言って微笑み返してくれました。
その言葉に安堵しつつ、覚悟を決めて戦いに臨むことにしました。
まず最初に動いたのは私でした。
炎の魔法を詠唱し、ドラゴンに向けて放ちます。
そうすると直撃を受けたドラゴンは大きな悲鳴を上げた後、よろめきました。
その隙を狙ってすかさず攻撃を仕掛けます。
懐に潜り込み、渾身の力で剣を振るいます。
ザシュッという音と共に肉を切る感触が伝わってきました。
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