第22話 私とメイド長

(ん!?)

テーブルの上に置いてあった手紙を手に取った時に気が付いたのです。

宛先が自分の名前になっていたことから自分に

宛てたものなのだろうと思い封を切ることにしたが、

中身を見た途端固まってしまうこととなった。

なぜならそこに書かれていた内容が衝撃的すぎたからだ。

というのも、差出人はなんと自分自身だったからだ。

驚きつつも読み進めていくうちにその内容を理解していった結果、ある一つの結論に至ったのである。

それは、これは自分に宛てたラブレターであるということである。

つまり今見ている自分は目の前にいるもう一人の人格ということだと思われるのだが、

何故このような状況になったのかは不明である。

だが、一つだけ言えることは、この状況は非常にまずいということだという点だです。

何故なら今の状態で表に出てきているのは自分の意識ではないため、

下手をすると勝手に体を動かすことができるかもしれないからである。

とはいえこのまま放置しておくわけにもいかないので、まずは一旦戻ることにするとしよう。

そう思った次の瞬間には意識が遠のいていき、気がつくとベッドの上だった。

どうやら無事に自分の体に戻ることができたようです。

ひとまずホッと胸を撫で下ろした後、周囲を見渡してみたところ誰も

居ないようだったので起き上がることにしました。

そうすると、枕元に一枚の紙が置かれていることに気付いたのです。

そこにはこう書かれていました。

おはようございます、ご主人様。

本日もお勤めご苦労様でした。

ゆっくりお休みいただけましたでしょうか?

もしまだ眠られているようであれば、引き続きごゆっくりどうぞ。

また、朝食の準備ができておりますので、いつでもお呼びください。

それでは失礼いたします。

かしこ。

なるほどそういうことだったのかと納得しつつ部屋を出ていく私であったのだが、

この後の展開を予想できていなかったことを後悔することになるとは思ってもいなかったのである。

私は急いで支度を済ませた後、食堂に向かいました。

そして中に入った瞬間に目に飛び込んできた光景に唖然としながらも、

とりあえず席に着こうと歩き出したのですが、その時でした。

急に目の前に現れた人物によって行く手を阻まれてしまったではありませんか!

驚いて顔を上げるとそこにいたのはメイド長さんでありました。

そして、彼女は満面の笑みを浮かべたまま口を開くととんでもないことを言ってきたのです。

「おはようございます、ご主人様!」

その言葉を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。

それはまるで洗脳されているかのような口調であり、明らかに普通ではありませんでした。

そこで慌ててその場から立ち去ろうとしたのですが、彼女に腕を掴まれてしまいました。

振り解こうとするもののビクともしませんし、それどころかどんどん力が強くなっていきます。

やがて痛みすら感じるようになってきたので、仕方なく従うことにしました。

そうすると、ようやく解放されたのですが、ほっとしたのも束の間のことでした。

今度は後ろから抱きつかれてしまい、身動きが取れなくなってしまいました。

さらに首筋に息を吹きかけられたことでゾクッとしてしまいましたが、

なんとか我慢することに成功いたしました。

ですがそれも束の間のことに過ぎず、今度は正面に回り込まれてしまう始末です。

そんな絶望的な状況に立たされながらも必死に打開策を考えようとしたのですが、

良い案など浮かぶはずもなく途方に暮れるばかりなのでした。

そうすると突然、彼女が私の耳元に顔を近づけてきたかと思うと、

甘い吐息を吹きかけながら囁いてきたのです。

そのあまりにも妖艶な仕草に思わずドキッとした私だったのだが、

次に発せられた言葉によって現実に引き戻されることとなりました。

そしてその直後、私は驚愕することとなったのです。

なぜなら彼女がこう言ったからです。

――今から私が行う行動は全て貴方様の本心からの行動でございますよ、と……。

その言葉を聞いた瞬間、私の心は一瞬にして支配されてしまいました。

それからというもの、私は自らの意思とは関係なく動いていく身体に

戸惑いながらも抗おうとしていたはずなのですが、結局は無駄な努力に終わりました。

というのも、実は私は既にこの身体の支配権を彼女に奪われてしまっていたようなのです。

その結果として、今の私は完全に彼女の操り人形となってしまっているという訳です。

とは言え、それを自覚したところでどうすることもできませんし、

そもそも私には抵抗する術がありませんでした。

だってそうでしょう?

相手はあのメイド長さんなんですもの、勝ち目なんてあるはずがありません。

というわけで私は為す術もなく身を委ねていました。

そうすると彼女はゆっくりと顔を近付けてきたかと思うと、

そのまま唇を重ね合わせてきました。

最初は、軽いキスから始まりましたが徐々に激しさを増していきました。

舌まで入れられてしまってはもう抗うことなどできるはずもなく、

されるがままの状態になってしまいました。

その後も長い間貪られ続けたせいですっかり脱力してしまい、

立っていることすらままならなくなったところでやっと解放してもらえました。

「大丈夫ですか?」

心配そうな表情で聞いてくる彼女に対して、私は小さく頷くことしかできませんでした。

その後、しばらく休んでいると体調が回復したので仕事を再開することにしました。

ところが、いざ部屋に戻ってみると机の上に例のメモ用紙が置かれていて、

そこにはこう書かれていました。

「今日の夜ご飯は何に致しましょうか?」

という内容だったので、取り敢えず適当に答えておきましたが正直言って気が気じゃありませんでした。

まあ、それはそれとして、次の日の夜になると早速夕食の時間になりましたので

いつも通り食事を取ってから部屋に戻る途中のことだったんですが、またしても謎の手紙が置かれていたんです。

しかも、今回は二通あります。

これ全部同じ人物が書いたものなんでしょうか?

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