第19話 体調悪い、私

「大丈夫だよ、君ならきっとできる。だって、

こんなにも頑張っているんだからさ」

彼女はそう言って、慰めてくれると、優しくキスもしてくれました。

そして、サナトスさんは私を励ますような言葉をかけてくれました。

その言葉で元気を取り戻すことができた私は、改めて自分の使命について考えるようになりました。

しかし、今はまだ具体的な方法が思い浮かばず、悩み込んでしまうばかりでした。

そんな中、ある日のこと、私は、ある夢を見ることとなりました。

夢の中で私は、自分が勇者として戦う姿や、仲間と一緒に冒険する様子を想像していました。

その夢の中での自分は、とても幸せそうでしたし、とても充実した日々を送っているように見えました。

そんな幸せな夢を見ているうちに、徐々に目が覚めていきました。

そして、目を覚ますと同時に、私は自分が何をしたいのか、はっきりと理解しました。

そう、それが、私自身の夢でもあったのです。

それからは、より一層、訓練に励むようになりました。

サナトスさんと一緒に、剣や魔法の練習をし、時には魔物と戦うこともありますが、

それも、すべては、自分が、勇者として活躍することに繋がると思えば、苦ではありませんし、

むしろ、楽しみで仕方なかったのです。

そんな日々を過ごすうちに、徐々に実力も付いてきたようで、

今では、それなりに戦えるようになりつつありました。

それでも、まだまだサナトスさんや他の仲間達には遠く及ばないというのが現状でした。

ですが、毎日訓練を続けていくうちに、少しずつ、成長しているという実感を

得られるようになってきましたし、自信もついてきたように思います。

今、自分が、何を目指すべきなのか、その答えを探すため、

そして、サナトスさんと共に歩んでいくために、私はこれからも戦い続けていくことを心に誓い、

前へと進む決意を固めました。

翌朝、目が覚めると、隣には素肌のサナトスさんが寝ていた。

それを見て昨晩の出来事を思い出す。

彼女と初めて愛し合った夜のことだった。

そして、今でもその余韻が残っているような気がしてならなかった。

だからかもしれない、もう一度、彼女に触れたいと思ってしまうのは……。

そう思って手を伸ばすと、突然彼女が目を覚ました。

どうやら起こしてしまったらしい。

寝ぼけ眼のままこちらを見て微笑む彼女にドキッとすると同時に、どうしようもなく愛おしく思えてくる。

そして気がつけば、無意識のうちに彼女を押し倒してしまっていたようだ。

自分でも驚いたが、もう止められなかった。

夢中でキスをすると、彼女もそれに応えてくれる。

そのままお互いを求め合っているうちに、結局朝まで愛し合ってしまったのだった。

「はぁ……」

私は大きくため息をつきながら天井を見上げていた。

今日はなんだか身体が重い。

昨日、たくさん運動したせいだろうか。

それとも、慣れない環境にいるストレスのせいだろうか。

どちらにせよ、あまり良くない兆候だと思った私は、気分を変えるために散歩に出かけることにした。

外はまだ薄暗く、肌寒かったけれど、歩いている内に身体も温まってくるだろうと思って歩き始めた。

しばらく歩くと、前方に人影が見えた。

こんな時間に誰だろうと思いながら近づいていくと、そこには見知った顔があった。

「あっ、勇者様!」

私に気付いたその人は、嬉しそうな笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。

どうやら私に会いに来てくれたらしい。

しかし、今は正直言って会いたくない気分だったので、適当な理由をつけてその場から立ち去ろうとしたのだが、

呼び止められてしまった。

仕方なく足を止めて振り返ると、彼女は心配そうな顔でこちらを見つめていた。

「大丈夫ですか? 顔色が悪いようですけど……」

そう言われてハッとする。

確かに言われてみれば、何だか頭がボーッとするような感じがするし、

心なしか体も怠いような気がする。

もしかして風邪でも引いてしまったのだろうか?

だとしたらまずいなと思いつつ、大丈夫だと答えたが、信じてもらえなかったようだ。

それどころか、ますます心配そうな顔をされてしまったので、申し訳なく思いつつもその場を後にした。

その後、部屋に戻ってベッドに横になったものの、なかなか寝付けずにいると、

部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

時計を見ると深夜1時を過ぎていた。

こんな時間だというのに誰が訪ねてきたのだろうと思っていると、外から声が聞こえてきた。

それは女性の声だった。

しかも聞き覚えのある声だ。

(まさか……)

嫌な予感を覚えつつドアを開けると、そこに立っていたのはやはりカルアレーアだった。

彼女は寝間着姿で、大きな枕を抱えるようにして立っていた。

どうやら寝るところだったようだが、どうしても心配になって様子を見に来たらしい。

私は迷った末に部屋に招き入れることにした。

さすがに追い返すわけにもいかなかったからだ。

それに、このまま放っておくわけにもいかないと思ったからである。

部屋に入るなり、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

その様子を見ているとこちらまで嬉しくなってくるような気がしたが、同時に申し訳ない気持ちにもなった。

何故なら、今の自分は明らかに体調が悪そうだからであり、その原因が何なのかを理解しているからだ。

おそらく、今の私は熱があるに違いない。

そうでなければこんなに体が熱いはずがないのだから。

そして、それを自覚した瞬間、一気に力が抜けてしまい、その場に倒れ込んでしまった。

朦朧とする意識の中で、最後に見たのは、こちらに駆け寄ってくるカルアレーアの姿だった。

そこで私の意識は途切れた。

気が付くと、私はベッドに寝かされていたようだった。

窓の外はすっかり明るくなっており、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

ふと隣を見ると、そこには彼女の姿もあった。

どうやら一晩中付き添ってくれていたらしく、目の下にうっすらと隈が出来ていた。

(ああ、そうか、昨夜、彼女に看病してもらっていたんだ)

そう思い出し、お礼を言おうと口を開いた瞬間、声が出ないことに気付いた。

それどころか、全身が重く、思うように動かせない状態だった。

それを見た彼女は、私の状態を察したのか、優しく頭を撫でてくれた後、

ゆっくりと目を閉じたかと思うと、静かに寝息を立て始めた。

私はその様子をぼんやりと眺めていたが、やがて眠気に襲われ、再び眠りに落ちていった。

次に目が覚めた時、部屋の中は既に暗くなっており、枕元にあった時計を確認すると

午後7時を少し過ぎたところだった。

相変わらず体は重かったが、昨日よりは幾分ましになっていた気がした。

ふと視線を下ろすと、そこには椅子に座ったまま眠っている彼女の姿があり、慌てて揺り起こした。

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