第18話 旅と冒険

そして、遂に、目的の町まで辿り着いたのです。

サナトスさんと二人で喜び合っていると、一人の男性が声を掛けてきました。

その人は、この町の町長さんだったようで、挨拶を済ませると、

私達を歓迎すると言って、案内してくれたのです。

そして、この町について色々と説明をしてくれましたが、

どれも興味深いものばかりで、聞き入ってしまいました。

その中でも特に興味を持ったのは、ダンジョンの存在です。

この世界には、数多くの迷宮が存在し、攻略することで、

様々な宝物を手に入れることができるそうです。

その話を聞いた私達は、俄然やる気になって、早速向かうことにしました。

ところが、いざ着いてみると、そこは廃墟になっていて、

とても人が住めるような場所ではありませんでした。

仕方なく引き返そうとしたその時、背後から足音が聞こえてきました。

振り返ると、そこには見知らぬ男性が立っていたのです。

彼はこう名乗りました。

彼曰く、自分は、このダンジョンの管理を任されている者で、

ここに来た冒険者達から、入場料として、一人につき、1000ゴールドを受け取っているのだと言います。

それを聞いた私は、迷わず彼にお願いすることにしました。

しかし、返ってきた答えは意外なものでした。

なんと、彼は、無料で通してくれるというではありませんか!

驚いて聞き返すと、彼は笑いながら、理由を説明してくれました。

何でも、最近は挑戦者が少なく、退屈していたのだとか……それで、

久しぶりに腕試しも兼ねて、自ら挑もうと考えたのだそうです。

つまり、彼にとってこれは、一種の娯楽のようなものであり、

挑戦者を迎え撃つことが、彼の生き甲斐なのだと言われました。

それを聞いて、私も納得してしまいました。

確かに、自分が楽しめるからこそ、他人も楽しませることが出来るという考えには共感できますから、

その点については、素直に尊敬できると思います。

それから、彼と話をして、どうすれば勝てるのかを教えてもらうことができました。

まず最初に、相手の戦力を知るために、戦闘を行うことになりましたが、結果は惨敗でした。

あまりにも弱すぎて、逆に心配になったくらいです。

それでも、諦めるわけにはいかないので、何度も何度も挑戦を繰り返しました。

その結果、徐々に成長していくことが出来たのです。

そして、ついに、勝利を手にすることができました。

その瞬間、私とサナトスさんは抱き合って喜び合いました。

こうして、無事、ダンジョンを攻略し、宝を手に入れた私達は、意気揚々と帰ることになったのです。

その途中、たまたま立ち寄った町での出来事でした。

何やらお祭り騒ぎのような状態になっており、大勢の人々が集まっていましたが、

どうやら、何かのイベントが行われているようです。

気になって中を覗いてみると、そこにいたのは、何と王様でした。

驚きのあまり固まっていると、近くにいた人達から声を掛けられました。

彼らは、私の顔を見るなり嬉しそうに駆け寄ってきて、こう言うのです。

「もしかして貴方様は、勇者様ではございませんか?」

そう言われた瞬間、私は戸惑ってしまいました。

なぜなら、私にはそのような自覚が無かったからです。

そこで、正直にそうであることを告げると、その場にいた全員が歓喜に包まれました。

その後、国王様に謁見することになったのですが、正直言って緊張しました。

何しろ相手は一国の王なのですから、粗相の無いように気をつけなければなりません。

しかし、私の心配をよそに、王様はとても気さくな方で、

気さくに話しかけてくださいましたので、こちらも肩の力を抜いて話をすることが出来ました。

それから、色々な話を聞かせていただいたのですが、中でも印象に残った話が一つだけあります。

それは、王様自身の経験談についてです。

なんでも、若い頃はかなりやんちゃしていたそうで、各地を旅して回り、

各地で多くの仲間を得ていたという話をしてくださいました。

そして、その話の中で、最も印象的だった内容というのが、とある村を訪れた時の話です。

その村は、どこにでもある普通の農村でしたが、ある晩、何者かに襲われてしまい、

壊滅状態に陥ってしまったというのです。

その日以来、毎日のように、魔物の群れに襲われるようになり、

何人もの住民達が犠牲になっていったといいます。

そんな状況に陥ってしまった村の人達を救うべく、王様は立ち上がり、

仲間達と共に戦いに赴いたのです。

激しい戦いの末、何とか勝利を収めることに成功したのですが、被害は決して少なくなかったといいます。

そんな出来事があった後で、王様がふと呟いた一言に、私の胸は締め付けられるような思いでした。

その内容とは一体何なのか、知りたいと思い尋ねると、王様は少し困ったような顔をしながらも、

教えてくれました。

「実はね、その時の生き残りの子が、今この村にいるんだよ」

そう語る彼の顔はどこか悲しげでした。

なので、それ以上深く聞くことは出来ませんでしたが、

その子に会ってみたいという気持ちが強くなりました。

そして、その日の夜、こっそり家を抜け出して、その子の家に向かうことにしたのです。

幸い、警備の人はおらず、難なく辿り着くことができました。

恐る恐るノックすると、中から返事がありましたので、扉を開けてみました。

部屋の中に入ると、ベッドの上に腰掛けていた少女の姿がありました。

年齢は十代半ばといったところでしょうか?

黒髪のロングヘアで清楚な雰囲気を感じさせる美少女です。

そんな彼女を見て、私は思わず見惚れてしまいました。

それほどまでに美しい容姿をしていたからです。

そんな彼女と目が合うと、私は慌てて挨拶をしました。

「あ、あの、初めまして!」

そう言って頭を下げると、彼女も微笑みながら応えてくれました。

彼女は少し恥ずかしそうにしていましたが、やがて意を決したように口を開きます。

彼女の名前はレイナさんといい、村長の娘であることが判明しました。

(この子があの時の……)

そう思うと、胸が熱くなります。

何故なら、彼女にとって唯一の肉親を失った事件だったからです。

そんな辛い過去を抱えているにも関わらず、笑顔を絶やさない彼女に感心しつつ、

しばらく話をした後、そろそろ帰ろうと思った時のことです。

不意にドアが開き、そこに立っていた人物を見た途端、私は固まってしまいました。

それは、先程の話に出てきた少年だったのです。

少年はこちらを見るなり、驚いた表情を浮かべていましたが、

すぐに笑顔になり、私に話し掛けてきました。

(この人も知り合いなのかな?

でもどうしてここに居るんだろう?)

そう思いながら首を傾げていると、少年が話しかけてきました。

彼は私のことをまじまじと見つめながらこう言います。

その言葉を聞いて、私も思い出しました。

この人は確か、サナトスさんの仲間の人だったはずです。

ということは、彼もまた女神アルテミア様の加護を受けているのでしょうか?

そんなことを考えながら見つめていると、その視線に気づいた彼が、再び話し始めます。

彼の言葉に耳を傾けると、衝撃的な事実が判明しました。

なんと、彼は私が伝説の勇者だと言っているではありませんか!

まさか自分がそんなふうに思われているなんて思いもしませんでしたし、

何より、そんな風に思われるような器ではないと思っていましたから、余計に驚きました。

それでも、悪い気はしませんでしたし、むしろ嬉しかったくらいです。

だからこそ、思い切って聞いてみることにしました。

本当に私なんかが伝説になるような力を持っているのかと、

すると、彼は笑顔で答えてくれたのです。

その日からというもの、私達の冒険は大きく変わりました。

まず第一に、私達は魔王を倒すための旅をしているということでした。

サナトスさんによると、この世界は今、危機に瀕しており、

一刻も早く問題を解決しなければ大変なことになってしまうというのです。

それを聞いて、私は不安になりましたが、サナトスさんが優しく抱きしめてくれたことで

落ち着きを取り戻すことができました。

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