第12話 彼女のお陰

私はホッと胸を撫で下ろしつつ、感謝の言葉を口にしました。

そうすると、王様は笑いながら答えました。

「良いんだよ、気にしなくて。困った時はお互い様だからね」

と言ってくれたことで、ますます嬉しくなった私でした。

その後は、食事をいただき、ゆっくりと休ませてもらうことが出来ました。

その日はそのまま眠りについたのですが、翌朝起きると身体に違和感がある事に気付きました。

何故だか全身が重く感じてしまったのです。

まるで筋肉痛のような症状でしたが、私は特に気にせず起き上がると、

いつも通りギルドに行くことにしました。

(今日も頑張るぞ!)

そんな思いを胸に秘め、一歩足を踏み出した瞬間に転んでしまうほど

自分の足に力が入らなかったことに衝撃を受けました。

(一体何が起きたんだ?)

と考えつつも何とか立ち上がろうと試みるも、やはり上手くいかないみたいです。

そんな時、脳裏に誰かの姿が浮かんだ気がしました。

(ああ、そうか……私が強く願ったからだったんだ)

と気付いた時には既に遅く、ゆっくりと目を閉じるしかなかったのです。

気が付くとそこは見慣れた天井でした。

そう、私の自室のベッドの上だったのです。

カーテンからは朝日が差し込んでいて、小鳥たちの囀りが聴こえてきます。

(助かったのね……)

と思っていると、不意に声を掛けられました。

声の主はどうやらガルアレーアでした。

「おはよう、気分はどうかしら?」

そう言ってきたので、私は素直に答えました。

「悪くないよ、むしろ元気いっぱい」

と言いましたが、内心は不安でいっぱいです。

果たしてこれは現実なのか、それとも夢なのか、

それともまた別の何かなのか、今の私には知る術がありませんでした。

しかし、それでも構わないと思ったのです。

何故なら、私には強い決意があるからです。

(二度と自分の大切な人達を失わないようにしよう)

と誓った瞬間、脳裏に再び何者かの声が響いたのです。

それは聞き覚えのある声でした。

私の中で存在する謎の女性の声、ハレルヤさんです。

どうやら私の意識とは関係なく、心の中に住んでいるみたいで、

時折出てくることがあるのですが、今回は違ったようでした。

突如として声が聞こえてきたことに驚きつつも耳を傾けていると、彼女はこう言い放ちました。

「あなたは強くなりすぎたようね?

そんなあなたが、これ以上強くなってしまってどうするの?」

私はその言葉を聞き、ハッと目を見開きました。

彼女の言わんとしてる意味を理解したのです。

(つまり、私が強過ぎた為に、他の人達を傷つけてしまう可能性があるってことなんだ!)

そう思うと、途端に怖くなりました。

もし自分が強くなり過ぎた事で大切な人達を傷つけてしまったらと想像するだけでゾッとしてしまいます。

そんな私の様子を心配したのでしょう、心配そうに声をかけてくれたのはガルアレーアでした。

彼女は私を抱きしめて、優しく頭を撫でながら言ってくれたんです。

「大丈夫、私が付いているわ。何かあったらすぐに言って頂戴、力になるから」

その言葉を聞いた瞬間、涙が出そうになりました。

心の底から湧き出るような嬉しさを感じることができたからです。

私にとって、この人は私の事を理解してくれている特別な存在だという事を再認識した瞬間でもありました。

だからこそ、絶対に守らなければいけないと思いました。

そして、その為には自分も強くならなくてはなりません。

自分の限界を超える為にも、更なる成長を求めて頑張ろうと決心しました。

(まずは基礎から始めることにしよう!)

と心の中で宣言すると、さっそく行動に移したのです。

基礎体力を付けるために筋力トレーニングを行いました。

それから持久力を付けるためにランニングや短距離走などの走り込みを行いました。

また、柔軟性を高めるためにもストレッチなども欠かさずに行います。

これらの積み重ねにより、徐々にではありますが、少しずつではありますが、

私の身体能力は向上していきました。

最初は全く成果が出ず、辛い日々ではありましたが、

少しずつでも進歩が見えるようになった時には大きな喜びを感じることができ、

より一層頑張っていける自信に繋がりました。

そして半年後、遂に成果が現れることになったのです。

なんと、私の身体が以前とは比べ物にならないくらい、強く逞しくなっていたのです。

これは、きっとガルアレーアのアドバイスがあったおかげなんだと思いました。

私は嬉しくて、ついその場で踊り出してしまいそうでした。

それくらい興奮していたのです。

この変化は私にとって大きな成長でしたし、これからも努力を積み重ねれば更に

高みへと昇っていくことが出来ると確信していました。

だからこそ、これからも頑張り続けるつもりです。

そんなある日、いつものようにギルドに向かうと、突然声を掛けられました。

「お疲れ様です、今日も魔物を狩ってきたんですか?」

と声を掛けてきたのは、なんとガルアレーアでした。

私は驚きつつも頷きました。

そうすると、彼女は驚いたような顔をして言いました。

どうやら、私のことを心配してくれているようでした。

私は嬉しくなりながらも、笑顔で答えました。

やはり私にとって彼女が特別な存在なのだと実感した瞬間でもありました。

だからこそ、これからもずっと一緒にいたいなと思いましたし、

彼女を守る為に強くなろうという気持ちがより一層強くなる出来事となりました。

こうして、新たな目標を手に入れた私は今日もまたギルドへと向かうのでした。

そして、魔物狩りに明け暮れる毎日が始まったのです。

ある日、いつものようにギルドへと赴いてクエストを受けようと思った時、

受付嬢さんに呼び止められてしまったのです、

そして、こう言ってきたのです。

それは私にとって予想外の提案でした。

「実はあなたに指名依頼が来ております。是非受けていただけませんか?

報酬もかなり高額ですし、悪い話ではありませんよ」

(はえ? どういうこと? 指名依頼なんてあるんだ!)

と考えているうちに、どんどん話は進んでいました。

私はとりあえず詳しい内容を聞いてみることにしました。

そうすると、受付嬢さんが説明してくれた内容は次の通りです。

それは、とある洞窟の最深部にいる魔物を倒すことです。

その魔物は希少でとても強いため、多くの冒険者達が挑戦したものの、

誰一人帰ってきた者はいないという話でした。

そんな危険な任務に、私を指名してきた理由はというと、

私が以前受けた任務での活躍を見て、この人ならば任すことが出来ると考えたようです。

要するに、私を信頼して任せてくれるということのようでした。

確かに私は以前にも似たような状況になったことがあるので、なんとなく予想が出来ました。

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