第11話 重傷
そこは、深い森の中のようで周囲には木々しか見当たりませんでした。
ただ、一本だけ開けた場所があり、そこに小さな家が建っていました。
中に入ると、家具や調理器具などが揃っており、すぐにでも生活できそうでした。
ここが今日から私達の家になるんだと言われて、感動すら覚えるほどでした。
私は、彼女に感謝しつつ今後のことを考え始めました。
(そういえば、お金とかどうしよう)
などと、考えていると彼女が微笑みながら教えてくれました。
何でも、この家には特殊な魔法が施されており、必要な物は念じるだけで手元に現れるようになっているそうです。
つまり、欲しいと思えば何でも出てくるという優れものなのです。
ただし、生き物だけは無理ということで、注意が必要でした。
他にも色々と便利な機能があるのですが、使っていけば分かると思いますと言われたので、
取り敢えず今は考えないことにします。
そして、当面の生活に必要な物を揃えた後、私達は今後について話し合いを始めました。
まず、最初に決めなければならないことは、これからどうするかということです。
何をするにしても、先立つものは必要になりますから。
なので、私が持っている宝石類や装飾品、貴金属類などを売り払うことにしました。
これで、当座の間は何とかなるはずです。
次に、生活費を稼ぐ方法を考えなければなりません。
といっても、そんなに選択肢はないのですが、一つ目は冒険者ギルドに登録して依頼を受けること、
二つ目はダンジョンに潜って魔石を集めることです。
三つめとしては奴隷を買うことです。
最後の手段とも言える四つめは人身売買でしょうか?
どの道、稼ぐためには何かしらの方法で収入を得なくてはなりません。
そこで考えた結果、私はギルドで依頼をこなしながら魔石集めをすることを決意しました。
一方、彼女はと言うと私に着いてくると言い出しました。
理由を聞くと、一緒にいた方が安全だからという理由らしいです。
確かにその通りかもしれないと思いましたが、それでは彼女の負担が増えてしまうのではないかと思い、
断りましたがどうしてもと言うので仕方なく了承することにしました。
こうして私達は共に行動することになりました。
それからというもの、毎日のように魔物狩りに明け暮れる日々が続きました。
時には死にかけることもありましたが、その度に彼女が助けてくれました。
本当に彼女には頭が上がりません。
いつか恩返しをしたいと思っています。
ある日、いつもの様に森に行くとそこにはゴブリンの群れがいた。
数は全部で10体ほどだっただろうか?
それくらいの数なら簡単に倒せるだろうと思った私は剣を抜いて駆け出した。
一気に間合いを詰めると、先頭にいた奴の首を刎ね飛ばす。
続いて隣にいた奴を蹴り飛ばし、その後ろにいた奴ごと吹き飛ばす。
次々と仲間を倒していく私に恐れをなしたのか逃げ出そうとする者もいたが、逃すはずもなく全て始末した。
(よし、これで終わりかな?)
そう思った瞬間、背後に気配を感じて振り返ると、そこには巨大な熊のような姿をした魔物が立っていた。
(しまった! コイツが居たんだった!)
そう思いつつ身構えたが遅かったようだ。
一瞬で距離を詰められてしまい、鋭い爪で切り裂かれてしまったからだ。
傷口からは大量の血が流れ出し、意識が朦朧としてくる……そんな中、最後に見た光景は迫り来る牙だったのであった。
目が覚めるとそこはベッドの上だった。
どうやら生きているようだが体が重い気がする。
起き上がろうとしても上手くいかない、手足を動かすことすら儘ならない状態なのだ。
まるで鉛でも流し込まれたかのように全身が重く感じる。
そして、傍にはガルアレーアが居たのです。
「あら、目が覚めたのね。良かったわ」
そう言いながら優しく微笑む彼女を見て、私は安心しました。
どうやら彼女が治療してくれたようです。
(ありがとうございます)
と心の中で感謝しつつ、改めて自分の体を見ると、全身に包帯が巻かれており、
所々血が滲んでいる箇所もあることから相当な重症だったことが窺えます。
(これは一体どういうことなんだろう?)
と思っていると、不意に扉が開き誰かが入ってきました。
その人物は私がよく知っている人でした。
それはガルアレーアの従者であり私の友人でもある女性でした。
名前はソフィアというらしいです。
彼女は私を見るなり駆け寄ってきて手を握ってくれました。
その手はとても温かくて安心感を与えてくれます。
そして、涙を流しながら何度も謝ってくるのです。
どうして謝るのか不思議に思っていると、その理由を教えてくれました。
なんでも私が意識を失った後、ガルアレーアはソフィアに私を託し、
一人で魔物の群れと戦いに行ったらしいのです。
その結果、彼女は重傷を負いながらも何とか生還することができたそうですが、
その時にはもう私は虫の息でとても危険な状態だったらしく、慌てて治療を施してくれたそうです。
(そんなことがあったなんて……)
と思いながら話を聞いていると、今度は別の人物が入ってきました。
「目が覚めたようだね、良かったよ」
そう言いながら入ってきたのは、この国の王様でした。
彼は私を見ると優しい笑顔を浮かべながら話しかけてきました。
「身体の調子はどうだい? どこか痛むところとかはないかい?」
私は首を横に振って答えました。
そうすると、彼は安心したような表情を見せつつ、私に尋ねてきたのです。
「ところで、君は一体何者なんだい? どうしてあんな場所に倒れていたんだい?」
と聞かれたので、正直に答えることにしました。
(実はですね……)
それからこれまでの経緯を話すことにしたのですが、途中で遮られてしまいました。
というのも、ガルアレーアが割り込んできたからです。
彼女は私を守るように立ち塞がりながら言ったのです。
「この子の素性については詮索しないで頂戴」
と強い口調で言い放ったことで王様は少し驚いた様子を見せましたが、すぐに笑顔に戻りました。
そして、少し考えた後でこう言いました。
「分かったよ、無理に聞くつもりはないからね」
そう言って引き下がってくれました。
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