Ⅰ-5

「あいつは問題ないのよ」

「付き合ってた男」

「そう」

「ちゃんと話しつけてあるから」

「でも刺されそうになったんでしょう」

「はずみでね。あいつにそんな度胸ないし、チャラチャラしてるだけで」

「でもなんでそんな男と付き合ってたの」

「付き合ってないよ」

「さっき付き合ってるって言ったじゃない」

「そうだっけ」

「いっしょに住んでただけなの。お金も持ってたし、かっこ良かったし」

「まあ、いつものことだけどね。倫ちゃんらしいっていうか」

「勘ちゃん、ほかにも知ってるの」

「全部じゃないけど。おばさんに後始末頼まれたこともあるし」

「とにかくあいつは大丈夫なの。クスリやってたし、警察も入ってるから」

「倫ちゃんはやってないんだよね、クスリ」

「さすがにね。あんまり好きじゃないし、あーゆうの」

「やっぱりすごいよね」

「何が」

「そこで切れるところ。カンが働くっていうか」

「でも結局あーなっちゃって」

「それで刺されそうになったんだ」

「そう。それで警察呼んだの」

「それ相当ヤバかったんじゃない」

「そうかなあ。はずみだよ、はずみ」

「まあいいか。それはいいとして、それじゃ危ないっていうのは誰なの」

「それがね。誰だかわからないの」

「何人かは思い当たるんだけど、そのうち誰かは不明」

「勘違いする人が多くて」

「勘違いさせてるのは、倫ちゃんだからね。わかってる」

「わかってるよ」

「倫ちゃんは、ちゃんと付き合ったことあるの」

「ちゃんとっていうのがよくわからない」

「勘ちゃんはどうなの」

「ないよ」

「何だ、勘ちゃんもないんだ」

「僕のことはいいからさ。ちゃんとっていうのは、真剣に相手のことを思いやるっていうか」

「そうゆう人」

「そうゆう人ならいるよ」

「どうして別れちゃったの」

「別れてないよ。ずっとそうだもん」

「それって誰なの。僕の知ってる人」

「知ってるっていうか、勘ちゃんだよ」

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