絶望のとき
「なんか寒い風が吹いてきたな」
俺はそう思いながら螺旋階段を降りて行った。
「よっと、ぅぅ寒いな。みんなはどこにいるんだ?」
俺は降りてから辺りを見回した。俺の目に入ってきたのは一面の銀世界だった。
そして俺が降りてきた螺旋階段から少し離れたところに、銀世界には無いような色の塊が倒れている。
「なんだ?あの塊は?」
俺は雪の上に転がっているその塊を見るために近づいてみると、
「えっ、道雄?」
そう、道雄だったのだ。と言うことはこの周りにある塊はみんななのだ。
「おい!何してるんだ!?あと、なんだこの刺し傷は!?」
俺は大声で叫びながら道雄に話しかける。しかし何の反応もない。
俺は埒が明かないと思って、他の皆のところに向かった。
しかし、向かっているうちにしんしんと降っていた雪が、まるで吹雪のような勢いで吹き付けてきた。
「マジかよ、皆が倒れているときに吹雪いてくるのか、とりあえず皆を吹雪から守らねえと」
俺はそう言い、皆に飛行魔法をかけて俺のところまで運び、錬成魔法を使って簡易的なかまくらを作る。
「強制起床でも使うか」 『強制起床』
沈黙がその場を覆った。
「あ~れぇ?寝てる場合は起きたんだがな、寝てるわけではないのか。にしても寒いな」
俺はかまくらに避難した後に寝てるのかと思い、起こそうとしたが起きないのでそのまま待っているが、かまくらで吹雪の風は防いでいるのだがそれでも寒気が襲ってくるのにイラついていた。
10分ほどたった
吹雪の音が弱くなってきたので俺はそろそろ出れるかなと一応魔法で聴力強化して周りの環境を把握しようとする。(園部みたいに便利な能力がないからな)
すると、
「うん?何だこの重い音は?」
俺は周りから重い音が聞こえてきたので警戒しつつ、みんなに強制起床が聞かなかったのでステータスを見ると、
「はあ?みんな、麻痺してるのか。どこから麻痺にされたんだ?」
俺が考えていると、かまくらが豆腐のように破壊された。
「何が起きたんだ!?」
かまくらが破壊された方向を見ると、体長2メートル以上はありそうな白熊っぽい魔物が立っていた。
俺はとっさにみんなを飛行魔法でこの場から離れさせた瞬間に、右手で宝剣「天國」で斬る。
が白熊が肉眼では到底とらえきれないような速度で避け、宝剣「天國」は虚しく空を斬る。
「畜生!何でみんなの方に行くんだよ!」
俺はみんなを逃がした方向に白熊が先ほどと同じ速度で向かったのを見て叫ぶ。
しかし、叫んでも白熊は反応せずにみんなの方に向かうので、飛行魔法を使ってみんなを浮かせて白熊から離す。
「よし、ギリギリ間に合ったぜ。吹雪が止んでるだけましか」
白熊が獲物がいきなり空を飛び、自らが届かない距離にいるから苛立っている。
俺はその隙に強化魔法で素早さを上げて白熊との距離を詰める。
白熊は気配感知のスキルでも持っているのか、俺が普通の反応速度では絶対に反応できない速度で詰めたのにもかかわらず、白熊は俺の速度に合わせて強大な爪を振るう。
「やっぱそうしてくると思ったわ」
俺は不敵な笑みを浮かべ、腰の刀ではなく収納してあった『デル・フリス』を持ち、目にもとまらぬ速さで引き金を引く。
白熊は魔物なので知能があるから刀で詰めてくると思っていたのか反応できずに俺の『
『ガァァル!?』
白熊が困惑を含んだ声を上げる。なぜなら白熊の毛は着弾地点の周りは焼け焦げ、弾丸に至っては体に刺さっているからだ。それを見て俺は弾のある限り撃ちながら、魔法を使う。
『光魔法 光の花弁』
『グガァァ!!』
俺の使った光魔法で作り出した、光の熱を凝縮して作り出した花弁のようなものと、銃弾が白熊に襲い掛かり、白熊はその場から動けない。
全く動けないで攻撃され続けることにいら立ちを感じたのか、それともこのままではいけないと野生の本能が働いたのかわからないが、俺の弾幕が止まった瞬間に怒涛の速度で少し離れた俺の眼前に立ち襲い掛かってきた。
「やっぱそうしてくるよな、やっぱ魔物だろうと獣なんだよ」
俺はこうなるようにあえて弾幕をやめていたので、白熊が詰めてくるその数瞬前にアイテムボックスから直接デル・フリスに弾を装填しておいた。特別製をな。
その特別製とは、魔紅玉と俺の血を混ぜ合わせ『
雷魔法で貫通力を格段に上げつつ轟雷を纏い、爆裂魔法で貫通の瞬間に小規模かつ絶大な威力の爆風を放ち、時空間魔法で特別なスキルや時空間魔法を持たない者には認識できないようにした。
当然白熊には何も理解できないまま眉間に銃弾を撃ち込まれ絶命した。
「ま、当然の結果だ。ただの獣が俺に勝てるわけないだろ」
俺はどや顔で言い切る。しかし、その後俺は飛行魔法を使っている感覚がないことに気が付き、皆を浮かしている場所を見る。
「何でだ、、、何でみんな消えてるんだ?」
俺は立ちながら呆然としていた。その時、とてつもなく強大な咆哮が聞こえてきた。
俺はなぜか咆哮を聞いた時、体が少ししびれたように感じた。
「何だ!?この竜が叫んだような声は?」
俺は咆哮の方向を見ていると、まさに巨大で荘厳な白銀の世界に合っている白銀のうろこが体の表面にあり、目は人と同じくらいのサイズで全てを飲み込む大海のような群青色をしている。
爪は青みがかった銀色で生物なら振るだけで容易く切り裂いてしまいそうな見た目をしている。
「畜生が!喰らえ!」
『火魔法 |炎のや、
俺が魔法で攻撃しようと頭の中で詠唱し始めた瞬間に、銀竜が咆哮を浴びせてきた。
それを喰らった瞬間、俺の体は数秒間だけ頭が白紙になり詠唱が止まってしまった。
銀竜は俺が硬直した瞬間に、鼻で笑うような動作をした後、皆を掴んで飛び去ってしまった。
「何でだよ!?俺が白熊と戦っているその隙にかよぉぉぉぉ!!??」
一面の銀世界に俺の叫び声だけが悲しく響いていた。
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