第8話―進退して回っていく―
12月になった。クリスマスムードで騒いでいる教室の雰囲気に俺は無関心だった。
(そういえば明日が終業式。だからクリスマスの予定を作ろうと必死になっているのか…)
話題の大半はクリスマスで支配していた。心待ちに談笑するグループとせめて疎外感のない予定を作ろうと躍起になると、十人十色。
あの中に入ってクリスマスを賑やかな予定のチケットを手に入れても俺には興味がないクーポンに同義。かつて友達と騒ぎまくり楽しんだ時期があったが…振り返れば
空虚で思い出と呼べる物じゃなかった。
そして無理した代償にここまで冷めてしまった。思春期が何かを模索して、そこに俺だけの定義を付ける事を面倒くさくなった。
放課後、世界の終末のように黄昏が染まる廊下を歩いてフッと変化する俺の心。
(そうだ…萩川はクリスマスは、どうするんだ。寂しく過ごすつもりなのか…だとしたら)
いつもの屋上ドアを開けず、隅に座る事にこだわりとお気に入りな
少女を向けていた足取りが、いつもよりも早くなる。
(何を心配している俺は。寂しそうに笑ってばかりだからか?
そうだ。もうそういう事にしておこう)
霧がかった問題だこれは。だから迷わずに駆け抜ける事にした。
階段を上がりきると萩川がいた。
「こんにちは…でもないよね。こんばんは吉良」
「萩川、クリスマスの予定はあるか?」
突拍子もない言葉を出していた。
「クリスマス…ですか。誘ってくださる奇特な人がいませんので今日も一人ですね」
「だったら、その奇特な人は目の前にいるな。クリスマスは俺達だけで盛大に楽しまないか?」
「えっ!?それって…あの、あの、吉良とお二人だけと意味ですか」
飛び跳ねるように立ち上がる萩川。好奇心と高揚感などのポジティブが眩しい光に似た笑顔で尋ねてきた。そんなふうに表情が豊かな萩川は珍しく俺は
「いや…2匹も」
俺は親指と人差し指を立ててピースサインを作る。
「……はい?」
「ヴィステリアと萩川が拾った猫だよ」
「あっ!そ、そうだね。置いてけぼり出来ないからね。連れて行こう」
そうして俺と萩川のスケジュールの白紙が一つ減る。そこからは一緒に帰るわけでもなく別々の道に帰路を就く。空は見上げると真っ暗。
(俺らしくないな。
「思春期という奴なのかもな」
12月の下旬が迫ってようやく高校生になったのだと俺は実感したのだ。
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