第3話―虚空のリアリティ―
土曜日の昼過ぎに俺は愛犬のヴィステリアを連れて近くの公園まで散歩に
来ていた。
「ヴィステリア少し遊ぶか?」
カラフルな色のボールを正面で見える高さに俺はしゃがみ込む。
「ワン、ワン、ワン」
「はは、嬉しそうだな。よーし、投げるぞ…はあっ!」
バトル漫画に影響をかなり受けている俺は勇ましい声で投げるとヴィステリアはボールに向かって走っていく。ボールを取って戻る。
「偉いぞヴィステリア…んっ、なんだか呼吸が激しくなっている」
ボールを受け取ってすぐ口呼吸ではぁはぁと苦しそうにしている。
「パンティングは…少し早いか」
パンティングは体温を下げようとする過剰な口呼吸。
いつもよりも苦しそうに呼吸していると熱中症の初期症状にあたるかもしれない。
「最近インドアの俺にも、この暑さは参っているからなぁ。軽度だと思うけど一応は獣医に診てもらうか」
「ハァッ、ハァッ…ワン!ハァッ、ハァ」
水は飲める。よし、深刻ではなさそうだ。獣医に診てもらい結果は軽いものだった。後遺症も残るような心配もないようで一安心する。
先生が言うには高揚感が原因のようらしい。飼い主の俺が肝に銘じて今日は帰る。近くのコンビニに寄りリードを物に結んでから夕食を買いには入る。
お弁当を購入して出るとアブラゼミの合唱と熱烈な太陽の歓迎に
辟易する。早く帰ってのんびりしようと決意して待っているヴィステリアの方へ目を向けると、いなかった。
「見た目に反してヤンチャな正確だよ。元気になるのは、いいけど。
おーい、どこだ?」
近くを探してみるが見つからず、思い当たる場所にもいなく家の前にいるのではないか脳によぎり向かう。思い立ったらの行動。
「ワン、ワン!」
「探したぞ。家の前に帰ってきたのか?せめて俺を連れて行けよ。ともかく」
「見つかって良かったねぇ。
こ、こんにちは」
ヴィステリアに笑顔を向けて屈んでいた彼女が立ち上がる。屋上の近くと図書委員である彼女であった。
「こんにちは奇遇ですね」
「そ、そうですね」
またも彼女と偶然にも出会う。学校ならともかく外となると稀有だと思う。
そして話が発展せず沈黙が支配をして重たくっ感じる。このまま事務的な言葉で帰ろうと検討したが俺は先にやるべきことをする。
「俺は吉良義央だ」
「わたしは…
こんな不意を突くような名乗りに彼女は…萩川は驚く表情せず応える。
「そうか。いい名前だな萩川」
「えっ?」
「ん?…ああ、悪い。呼び捨てを気にするよな。こういうのは
「い、いえ違います。いい名前と褒めてくれたの驚いて」
「そうか、そっちの方なのか。
それは、良かった。俺なんかの言葉に響いてくれて」
「い、いえ?」
最後の自虐に対して萩川は小首を傾げて疑問を抱いているようだ。
理由なんて珍しくない。ただの自己嫌悪なのだ。
「なら萩川と呼ぶ事にさせてもらうとするか。
俺の事も呼び捨てで構わない」
「わ、分かりました…吉良」
「無理そうなら君付けでも構わないぞ。萩川は遊びに出掛けているのか」
「そんなところかな…それじゃあ、また学校で」
「ああ」
そういえば、これが初めての萩川と会話であった。
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