第2話

 私は悩まされていました。急に発病してしまった、謎の熱病に関しては全くの知識がないのが困り事です。この病を発病したのは4月に入って直ぐのことになります。最初は風邪だと思い病院に行き薬を処方されました。しかしながら、この薬では全く効果が出ずまた別の病院に行っても何も進展はありませんでした。


 さらに最悪の事態と言っても過言ではないのが、枕元に化け物が出る事です。巨大な蛇のような化け物ですが、誰に言っても信じてくれません。それはそうでしょう。この現代社会における蛇の化け物だなんて誰が信じてくれるのでしょうか。普通に考えても気が触れた女の戯言ととして処理されてしまいます。処理されるのであればまだ意のかも知れませんが、処理が適切ではないと、現代的には本当に黙殺されてしまいます。多様性を認めるが、多様性の中に人知を超える何かは含まれていないように感じてしまいます。


 蛇は熱の温度と共に日に日に大きくなるような気がしましたが、どうしてこのような蛇のお化けが私のところに出るのか検討も付きません。付いたところで、非日常の空間を元に戻せるわけではないので、心がすっかりと諦めを許容してしまいました。


 お化けでならば多くの人が思うところの、半透明だとか、霞む様な希薄な存在だと言われがちですけれど、私の目にははっきりと蛇に見えます。蛇をまじまじと観察したことはないのですけれど、私の思っている蛇と見えている蛇に相違はありません。確実に蛇だとわかるような特徴を持っています。

 

 大学での数少ない友人に話をしてみると、経済学部の院生に妖怪に詳しく、何か専門的な知識を有しているという方がいるようなので、その方に泣きつくほか手段がありませんでした。急にオカルトめいた、専門家にこのような事を頼む私ですけれど、現代医学が通用しないのならばいっそのことオカルトの専門家に頼むのが吉だと思っただけです。決して自暴自棄になっていたわけではありませんが、本音は私にもわかりません。既に私の中では何かに縋る気持ちで一杯だったので、他に手を尽くしてくれる人などは考えもつきませんでした。


 先輩は不思議がらずに私のの話を綺麗に最後まで茶化さずに聞いてくれました。精神科の医者なんてものは私のことを気が狂った女としか相手にせず、適当に精神安定剤を複数処方するだけの事務的な人間だったので、ここでの先輩の行動は凄くありがたいものでした。精神病院もビジネスですから、私のような狂った女の事なんて、気にもしないでしょう。よくいる変な女の一人だと考えてたほうが納得ができます。


 しかしここで問題が発生してしまいます。なんと先輩は例の妖怪退治の専門家ではないと言うのです。私としては勇気を振り絞って最後の願いのような気持ちでここまで足を運んだのにその気持ちが無下にされてしまった気がします。それでも少しだけ気持ちは晴れやかになりました。何も解決していないのに晴れやかな気持ちになるのはおかしい気もしますが、元々気が狂った女として医者に烙印を押されたので、そこまで深く考える必要もないと思います。私ががおかしい可能性も否定仕切れませんし、そもそも大蛇のお化けと、熱病の事をいきなり話してしまう私自身に矢張り問題があるような気もします。


 大学4年生になり、これから先の事を考えなければならない大事な時ににこのような環境で心身共に襤褸雑巾のようになってしまった私が悪いのかもしれません。春はいい季節だと思っていた私が馬鹿みたいです。新しい出会いが、巨大な蛇と、謎の病気、最低です。歴代の春の中で、最低の季節です。22年間生きてきた中でこんな酷い扱いを受けたのは今回が最初で最後と思いたいです。


「俺は詳しくないけれど、友人にそっち方面で信用できる人間が一人いる」


 どうにもならないと思っていた矢先に先輩が答えてくれました。助け舟といいますか、渡りに船といいますか私にも少しの希望が見えてきました。


「助かるんでしょうか……」


「胡散臭いヤツだけど信用はしていいと思う。ただちょっと気難しいって言うかなんというか。まあ、変なヤツなんだよ。それだけ理解してくれれば直ぐにでも」


 できれば今すぐにあの悪夢と決別したいので、どうにかして頼んでもらうようにお願いしました。どう考えても、おかしいじゃないですか?いきなり現れて助けてくれって言ってくるおかしい女ですよ私?それなのにこの先輩は助けてくれるそうです。どういった神経をしているのか不思議に思いますが、ここは性善説を信じて先輩に助けてもらいましょう。図太いと思われても仕方ありませんけれど、実際にあの地獄のような夜を過ごしている私からすれば藁にも縋りたいのです。どうしても、助かりたいので四の五の言ってはいられません。


 すんなりと話が進んでしまいちょっぴりと困惑している私がいるのですけれど、ここまで簡単なお話ではないと思うのです。しかし先輩はスマートフォンを開いて、例の友人とやらに連絡をしているみたいです。この人は問題を簡単に考えているのかと不安になるくらいの即決スピードです。決断力が早いのはいいことでしょうけれど、ここまでとは思ってもいません、


「明日、夕方時間ある?」


「はい。あります」


「じゃあそれで。彼を捕まえてくるからまた明日ね」


 思った以上にとんとん拍子です。これでは、今まで悩んでいた私が馬鹿みたいです。それで背に腹は変えられない状況ですので、ここで決断するしかありません。そして都合よく明日は予定が何もない私も丁度いいと思ってしまいました。これで現状から抜け出せると考えると、嬉しさで涙がこぼれてしまいそうです。できれば原因不明の病を治してから、涙は流したいです。


「場所は君の家でいいかな?」


「かまいませんけれど……」


 急に人が来る事を考えていないので、人を入れたくありません。それに女性の部屋にいきなり、男性を入れるは抵抗があります。


 しかしながら、この際仕方ありません。助けてもらおうとしているのは私なのですから、我侭を言っては始まりません。


「それでちょっと待ってて」


 無駄に優しく接してくれたお陰で先輩に対する警戒心が解けたような気もしますが、怪しいのには変わりありません。どう対応したとこで私と先輩は今日会ったばかりの先輩と後輩に過ぎません。さらにこれから会う妖怪の専門家なども怪しさ満点で悪く言えば、怪しい宗教家みたいな人だと思います。


「それとなんだけど、そいつの事は先生とでも呼べばいい。名前を呼んでいいけれど、妙に照れ屋なところがあるから。そいつもそいつで人付き合いが苦手なんだよ。そのくせ妖怪相手には妙に饒舌だ」


 先生だなんていきなり言われてもよくわかりませんが、私の悪い部分を直してくれるのであれば、先生と呼んでも差し支えはなさそうです。先生という響きは教師意外に使うと怪しさとなんとも言えない危険な香りがしてしまいます、訝しいのは当然としても、ちょっとだけ面白がっている私がいます。気が滅入っているのにどうしようもなく思考は回ってしまいます。


「今日はありがとうございます。明日はよろしくお願いします」


 こうして、私は謎の経済学部の院生と知り合い、これから、さらに怪しい妖怪の先生とやらに会う事になりました。


 ######


 帰宅したら熱が徐々に高くなってきた気がします。どうしてこのような症状を毎日体験しなければならないのかさっぱりわかりません。一番奇妙な症状jは、体力を奪われる熱病ですけれど、次の朝には何事もなく活動ができるのです。


 このような謎の病気は今まで体験した事はありません。それに普段から健康体ですから、熱などは幼少期に煩った経験しかありません。こればかりは親に感謝するしかありませんし、健康が大事なのは代わりありません。


 体が気だるさを訴えてきていますが、私にはやらなければならない事が色々あります。簡単に説明しますと部屋の掃除です。明日には見ず知らずの男が2人ほどこの部屋に上がりこもうとしています。乙女の部屋とは言いがたい惨状なのは仕方ないと諦めてしまおうかと思いましたが、片づけの気持ちが少しだけ上回り、せめて、洗濯物はたたんで、仕舞うことに成功しました。


 いくら片付けても夜中は蛇が部屋の中をぐるぐると徘徊するので直ぐに散らかってしまいますし、掃除をする気力も熱に持っていかれてしまいます。ここで体の不不調よりも、乙女としての行動を優先した辺り、まだまだ浅ましい人間なのかもしれません。こんな神経衰弱のような環境だと、普通は下着を衣装ケースに仕舞うことなど、後回しにしてしまうと思います。


 なぜ私がこんな目に会うのかもわかりません。性格の悪さが祟ったのであれば、仕方ありません。お世辞にも人に褒められるような人格者ではないと考えています。


 人に恨まれるような人間である事も少しは自覚しています。理由も察しは付きますが、それ以上の事を考えると面倒になってきます。無自覚の祟りであれば、諦めが付くといいますけれど、少しばかりは自覚があるので、これがどうにも厄介です。どうせならば、天然と呼ばれるような、無邪気とアホが絶妙に混ざりあったバランスのよい性格に生まれたかったです。


「それにしても先生ってなんでしょうか」


 既に熱は上がり始めているので体を動かしたくはありません。この病気が発症してからは毎日朝にお風呂に入っているので、後はもう寝るだけとなっています。だって朝起きたら汗だくなんですから。さっぱりしたいと思うのが普通だと思います。


 私の人生はおそらく嫉妬が多くを占めているのだと考えています。理由は勿論私が多くの男性から見て、綺麗だとか美人だとか言われるからでしょう。物心が付いたときには既に男性からの視線を浴びて育ってきました。人からの好意を受け止める程の器量は私にはありません。そこまで聖人ではないのです。全ての異性を許してしまうほどの盛大な心を持ち合わせてはいませんから。


 無自覚な美人であるよりは自覚を持って、人と距離を取って生活をしたほうが無駄がなくて楽なのです。これに気付く事はそれなりに早かったです。だってそうでしょう。無自覚であれば、相手の気持ちを考えず振り回してしまいますけれど少し自覚をしていれば、適切な距離感で適切な気持ちを振り撒けます。好きで美人と呼ばれる現代的な価値観で生まれたわけではないのです。それを考えて欲しいけれど、多くの人は私を羨ましがるのです。ないものねだりなのはわかります。誰だって隣の芝生は青く見えるものです。


 だからこそ、今回の下海先輩の態度は気になりました。大体私を見ると下心を丸出して接してくるのですが、彼にはそのような素振りが一切なかったのですから。このパターンは久しぶりです。


 無駄に今日の出来事を考えてどうにか思考を続けます。そうでもしなければ、熱に全てを持って行かれそうになるからです。嫌になりますけれど、私の楽観的な態度もよくないのかも知れません。慣れてしまえば、熱だろうと少しづつ体は順応してくるのが嫌になってきます。どうせなら、このような思考をする暇を与えないくらいには体力を奪って欲しいです。


 くだらない考えを適当に垂れ流していれば、ある程度は楽になれるのですが、それでもそろそろ限界が来てしまいそうです。段々と意識が朦朧としてきます。そろそろ無駄な思考を巡らせるのがきつくなってきました。私は普通の大学生が寝るのには早い時間に眠りに落ちました。


 ######


 蛇を見るのは既に何度目かわかりません。昨日の夜もその前も蛇は私の前に現れます。爬虫類を怖がるのは基本的な女性であれば当たり前ですけれど、こう何度も現れては、少しばかり慣れてしまいます。寝ているのにはっきりと蛇の姿だけは覚えています。どうしてなんでしょう。


 今日は例の妖怪の先生が私に会いに来てくれるそうなので、ちょっとは気が休まります。普段であれば、面倒ごとが増えたと考えますが、体の不調、精神の不調を訴えているのですからこんな好日はありません。好日が口実っておもしろくないですか。そうでもないかな。なんでもいいや。


 4月の頭から、始まった高熱もこれでおさらばです。晴れて健康体に戻れると思うと晴れやかな気持ちになってきます。春の季節くらいは快晴が続いて欲しいものです。


 ######


 昼を過ぎた頃に先輩から連絡がありました。「これから向かうよ」と短く一言だけを書いた連絡に少しあっけに取られてしまいました。好意的な文章を長く連ねてくる連中が多い中でこのようなそっけない短文は少しだけありがたかったりします。大体長文を送りつけてくるような人の文章は面倒なので読みません。基本的に上面だけの文章ですから見飽きてしまいました。皆さんも気にしてみてくださいね。


 こんな感じで先輩たちが来る時間となりました。インターホンが鳴ったので先輩たちを部屋に招き入れます。鍵は掛かっていませんよ。自棄になっているとかではなく、ただ鍵を閉めると逃げられない感覚が出てきますので蛇が現れるようになったときから、できるだけ自由に扉を開閉できるようにしています。ただ、蛇が現れると私は動けなくなるのですけれどね。


「お邪魔しますよ」


 こうして来たのは昨日ぶりの先輩と、言ってた通りの怪しい男です。どこにいるのかもわからない骨董市ににでもいそうな古めかしい雰囲気を出している人です。髪もぼさぼさでボロボロの白衣にも似た、ねずみ色の薄手の羽織を着ています。アトリエコートっていうんでしたっけ?


 私は簡単な自己紹介をして本題に入りました。じろじろと見てくる先生と呼ばれる人間が気になりましたが、不快感よりも、これから助かるのだという気持ちの方が勝っています。それにしてもこのような人が本当に私を助けてくれるのでしょうか?風貌だけなら、新興宗教の人達のほうがよっぽど信頼できる見た目をしています。それでも専門家と呼ばれるくらいならば何かしらの解決策を持っているはずです。希望と期待を持ってしまいますが期待をするだけ、損をしてしまったときの絶望が大きくなるので、過度な期待はしたくありません。


「先生と呼ばれる程のものではないですけれど……。まあいいか」


 そんな事をいいながら、適当に話が進みます。結論として、先生は私を助けてくれるそうです。実際のところは助かるのではないと話してくれましたが、よくわかりません。妖怪なんて学問が存在している事もわかりませんし、専門的な話をされたところで、これっぱっちもわかりません。それにしても話し方までここまで胡散臭いとは思ってもいませんでした、見た目どおり古い小説にでも出てきそうな人間です。どこにいるんですか、こんな懐古的な人間は。


 「じゃあ200万円で」


 ある程度話すと、今度は依頼料のお話しになりました。高いにも程がありますが、仕方がないと考えてしまいます。どうやら、私は死んでしまうようです。いきなり死にますと言われても実感も沸きませんし、納得もできません。それどころか怪しさが100%増してしまいました。いきなり死ぬなんて、悪徳宗教家や詐欺師でも使いません。使ったところで実感がない嘘は真実味に欠けてしまうんです。これだけ批判的なことを思いつつもどうせこの先生に頼むのはなんとなく創造的手仕舞いました。説得力とでもいうのでしょうか?わかりませんが、結論としては結果が既に出ているような気がします。


「朝倉さんの問題は意外と簡単なんだよ。意外なほどにね」


 どうやら、先生の中では、既に心当たりがあるようなのです。こんなにあっさりと、解決の一歩が見えるのであれば、現代医学の敗北ですよ。日本という医療先進国が、小汚い怪しい人間に敗れてしまいました。オカルトは科学を超える日が来てしまいました、いや、また来てしまいました。


「解決するにはその蛇とやらが現れないと駄目なんだよ。駄目っていうよりはどうにもならないっていえばいいのかな。だから現れるまでは何もできない干渉するには原因本体に触れなければならないんだ。触れるというよりかは認知するに誓うのかな」


 最もらしい事をいってはいるけれど、実際問題そんなに簡単なものなのだろうか?私を助けてくれるのはありがたいが、決して少なくない金額で、美少女からお金を毟り取ろうとする詐欺師ではないのでしょうか?なんにしても意味がない気がしますので、信じるしかなさそうです。


「だからそれまでは準備と雑談でいいんだよ。ところでなんだけど朝倉さんってもしかして僕の知っている朝倉さんだったりする?」


 ######


 準備をするといいつつ、来たのは近所のホームセンターです。こんな現代的な場所で道具が準備できるなんて思ってもいません。私が考えている以上に、妖怪と呼ばれる類の怪異はインスタントなモノなんでしょうか?俗な存在であると考えましたが、妖怪自体も俗なものなので気にはしないように考えます。


「朝倉さんてミスコンに出てた人だよね。見かけたことはないけれど、周りの人が噂をしていたからね」


 このような人間が噂などをするのかとも思いましたが、知ってくれているのならば、話が早いのかも知れません。


「噂は案外馬鹿にできない。噂が怪異になる可能性もゼロではないし、実際に人が伝承する事で広がる怪異もある。俗っぽいけれど君たちが言う妖怪だって成り立ちは簡単な噂話に尾ひれが付いてできたものかもしれないよ」


 それらしい事を言うがうまく丸め込まれたと考えたほうがいいでしょう。どのようにしても、あまり信用できる話ではないです。


 ただミスコンのことは大体知ってくれているらしいです。こちらは語ると長くなりそうななので、簡潔にお話していきます。


 私の友人が勝手に応募して、勝手に舞い上がって広告部が空回りした挙句全ての視線が私に来ただけの話です。視線は怖いものですよ。漢字を間違えてしまうと死線です。いきなり物騒になってしまいます。それにそんな適当な手順でミスコンなんてものに応募できるのかと思われそうですけれど、意外と大学生って馬鹿なんですよ。もっといえば、広告部のような自分の力を過大評価するようなサークルだと特にです。


 勝手に5年に一度の美女だとか、色々好きなように書いて、知らないうちに私はそれなりに有名人になってしまいました。10年に一度でしたっけ?よく覚えていません。なんでもいいでしょう。尾鰭を付けるのであれば、もっと誇張表現をしてもよかったのに。クレオパトラを越える!なんて面白そうではないですか?それにそんな面倒になっているとは知らなかったので、最終的には辞退しました。ミスコン開催日の2週間前の辞退でしたので、結構揉めたのは事実です。


 しかし宣伝用の写真なども全て盗撮だったりしたので、結果としては折れてくれたのは広告部の方たちでしたが、これで話は終わりません。


 今回のミスコンの参加者は全員私のことが嫌いでしょう。なんせ、1番が決まっていたのに補欠で1番になるなんて、嫌なことでしょう。有名になって、アナウンサーなどになりたい人達からすれば自尊心を酷く傷つけられたに違いありません。知ったこっちゃないですけれど。


 簡単に説明ですから、この辺りで終わろうかと思っています。長くしても意味はないと思いますし。


 結論として私が辞退して逆恨みをされた最悪の出来事というわけです。ちゃんちゃん。


「あれは大変な出来事だったらしいね。他人事だからいいけれど僕は絶対に当事者にはなりたくないよ」


 当たり前のことを当たり前のように言ってくるこの男に腹が立ちますけれど事実は事実。誰だって当事者にはなりたくありません。


「私だって二度とあのような事に逢いたくありません」


「だろうね」 


 なんて素っ気無い言葉を使うのだろうかと思いましたが、気にしては始まりません。今はこれからを考えて行動しているのですよ。


「材料なんだけれど、これはサービスしとくよ。200万円込み込みで」


 だからそんな俗っぽい事を言わないで欲しいです。そもそも、購入したガラクタはどう考えても使いたがわかりません。それで何をしようとしてるのでしょうか?


「使い方次第でどんなものでもある程度は代わりになるんだよ。もし妖怪の中でも面倒な連中を相手にするならば、それなりに準備は必要だけれど、今回の場合はもっと簡単。因果が解ればば解決するから。さらに言うなれば、因果は既に見つかったんだ」


 勝手に解決してくれれば、ありがたいのですけれど、私は残念ながら当事者ですので、解決していただいてありがとうございますという立場の人間です。消費者は辛いのです。


 そんなに勝手に話を進めないでいただきたいですけれどいいでしょう。好きにしてください。


「それじゃあ帰るよ。途中でコンビニにでも寄って御飯を食べたら早速はじめよう」


 暢気に考えているようですが、この暢気さが嬉しかったりもします。神妙な顔で剣呑な雰囲気を出されたらたまったもんじゃないです。この場合は適当なほどいいのかもしれない。若しくは私がおかしくなっているのかも知れないのですから。


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