第18話 ファーストキス
その後、恋愛ドラマの撮影が始まる。
今回は、怖いくらいスムーズに行き順調だ。
「魅琴ちゃん!良い表情だよ!前と随分と変わったんじゃない?」
「スタッフさんや皆さんのお陰ですよ」
「いやいや、魅琴ちゃんも変わったよ。もしかしてプライベートが充実してるのかな?」
「いいえ、相手いませんから」
「またまた~。台本の内容が予定よりも変更になるかもしれないね」
「そうなんですね。分かりました」
そして ――――
「えええっ!待って!待って!聞いてない!明らかに変わり過ぎだよぉ~……こんなシーンなかったじゃんっ!」
部屋で一人で騒ぐ私。
バッ
背後から台本を取り上げられた。
「えっ!?あっ!ちょっと見るなっ!」
台本を取り上げたのは悠次だ。
取り返そうとする私に意地悪しながら台本を見る。
「ちょっとっ!悠次っ!」
「へぇー、キスシーン。初(ファースト)キスは俳優さんにドラマで奪われてしまうのか?あー、でも、竜とやってるから良いか」
「や、やってるとか…言い方やらしいから」
「そう持っていくお前がやらしいんじゃねーの?」
「違うしっ!それより台本っ!返してっ!」
「はいはい」
台本を渡す素振りをみせる悠次。
私は受け取ろうとした次の瞬間 ―――
グイッ腕を掴まれ引き寄せられた。
ドキッ
キス寸前の所迄、顔が近付く。
「………………」
「本当の所、どうなのか知らねーけど」
そう言うと離れ、台本を返す。
「まあ、精々頑張りな!女優の椎菜 魅琴さん」
そう言うと部屋を出て行き始める。
「私のファーストキスは俳優さんでも竜助君からでもないからっ!」
「じゃあ誰から奪われるんだ?」
「そんなの……」
歩み寄りグイッと引き寄せられたかと思うと私の唇に悠次の唇が重なっていた。
ドキン……
≪えっ?う、嘘……≫
唇が離れる。
「俳優さんでも竜でもねぇなら…お前の望みは1つしかねぇだろう?椎菜 魅琴」
そう言うと再び唇が奪われる。
そして、そのままジリジリと歩み寄るようにベッドに倒れ込む。
ドサッ
両手を押えつけられ股がる悠次。
ドキン
「俳優さんや竜に奪われる位なら俺が良いって?」
「………………」
「だったらそれに応えてやるよ!好きな男でも浮かべてキスシーンしたら?練習に付き合ってあげても良いけど?」
「………………」
「悠次…」
「何?」
「容赦なく人のファーストキスの唇奪ったぁぁぁっ!この狼男っ!この野獣男っ!もっと雰囲気……」
再びキスをされ優しいキスをされた。
何度も何度も向きを変える悠次。
「待てっ!魅琴っ!」
「何?」
「…お前…女優の顔じゃなくなってる!」
「えっ?いや…普通でしょう?」
「違う!…お前……気付いてねーんだろうな…」
「何?えっ?何か変?」
「…男と女の関係になりそうな雰囲気醸し出し過ぎだから」
「ええっ!つ、つ、つまりそれって……Hな顔になってる?」
「ある意味…」
かぁぁぁぁっと身体の隅から隅迄、熱くなったのが分かった。
「ゆでダコ…真っ赤だし…いや…悪い…俺も調子に乗り過ぎたかも…適度に節度ある行動する。一先ず部屋に行くわ」
「う、うん…」
そう言う私にキスをし部屋を後に出て行った。
~ 悠次 side ~
正直俺も危なかった。
アイツが竜と付き合い始めてから
しばらくして自分の心の異変に気付いた。
まさかと思ったけど
俺がアイツを好き?
疑問に思い始めていた。
そんな時
彼女の台本を見て嫉妬する自分がいた
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