第17話 想い
「魅琴ちゃん」
「竜助君」
ある日の学校帰り背後から声をかけられ、振り返ると竜助君がいた。
「悠次から聞いたよ。ストーカー捕まったって?」
「うん」
「良かったね。俺だったら串刺しだったかも」
「えっ?」
「別に強い訳じゃないからさ」
「大丈夫だよ」
「いやいや、俺だったら絶対護れてなかったかも」
「そう?」
「絶対にそう!」
「あれ?そう言えば竜助君一人?」
「うん。悠次用事あるって言ってたし」
「そうなんだ。デートかな?」
「いや、デートじゃないと思う」
「デートなら由美とするか。あっ!でも待ち合わせすればデート出来るよね。放課後デート」
「…まあ…でも、悠次は由美ちゃんは恋愛対象にならないって言っていたけど?」
「えっ?良い子なのに」
「でも、魅琴ちゃんは嫌なんでしょう?」
「えっ?」
「悠次が気になるから」
ドキッ
何故か胸が大きく跳ねる。
「いや、別に嫌じゃないよ」
「だけど、二人の関係は気になるんでしょう?」
「大丈夫だよ」
「そう?」
「うん」
「そっか」
私達は色々話をしながら帰る。
「魅琴ちゃん、撮影いつから始まるの?恋愛ドラマの出演依頼あるんでしょう?」
「うん。来月からだよ」
「じゃあ、1回出掛けない?二人で」
「うん、良いよ」
「やった!人目のつかない所が良いよね?」
「大丈夫だよ」
「いやいや、騒がれたら俺が大変だから」
クスクス笑う。
「そう?」
「そうそう」
私達は出掛ける日程を決めた。
その日の夜。
「ただいま」と、悠次。
「おかえり。遅かったね」
部屋の出入り口で迎える。
「彼女とデート?」
「彼女!?いねーし」
「またまた~」
「彼女はいらねーよ。お前がいれば良いし」
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「えっ!?」
「なーんて!」
「あのねーっ!」
「何、真に受けてんの?バーカ」
そう言うと、自分の部屋に入って行く。
「あっ!そうだ!お前いつから撮影?」
「えっ?あ、来月からだよ」
「ふーん。そうか」
そう言うと部屋に入って行った。
出掛ける当日、朝から、竜助君が迎えに来た。
「お前らデート?」
「そうだよ」
「ふーん。行ってらっしゃい」
「行って来ます」
私達は出掛ける。
「悠次、ご不満げな顔してたなぁ~」
「えっ?留守番だからじゃない?」
「それもあるけど…もしかすると気付き始めてるのかも?」
「えっ?」
「魅琴ちゃんへの想い」
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「まさかっ!絶対ないよ」
「そうかなぁ~?」
「そうだよ!今日は楽しもう!撮影始まると時間なくなっちゃうから」
「そうだね」
私達は遊園地に行く事にした。
色々な乗り物乗って楽しい時間を過ごす。
「魅琴ちゃん、今日はありがとう」
「こちらこそありがとう。来月からお仕事頑張ります!」
「そうだね。それと今の魅琴ちゃんの気持ちを教えて」
「えっ?」
「悠次の事、どう?心に変化あった?」
「それは…何とも言えないけど…だけど…好き寄りに近いのかな?」
「そっか。俺は好きだよ。魅琴ちゃんの事。だけど…魅琴ちゃんの事を応援側になってファンに戻るよ」
「えっ?」
「今日デート出来た事が何より幸せだった」
「竜助君」
竜助君はおでこにキスをし頬にキスをした。
「唇は悠次に奪ってもらいなよ」
「えっ!?」
赤面する私。
「すっごい分かりやすい反応なんだけど」
クスクス笑う竜助君。
「さっきも言ったように多分、アイツ気付き始めてると思うよ」
「えっ?」
「魅琴ちゃんへの想い」
「えっ?まさかっ!」
「今日の出来事聞いてくれるかもしれないし、それとなく悠次に意地悪してみると分かるよ。反応見てみなよ」
「いやいや、無理だよ。アイツが上手だと思う」
「そう?じゃあ、俺が仕掛けてみようかな?」
「えっ!?仕掛ける?」
「別れ際に魅琴ちゃんに唇以外にキスして見せ付けてみようかな?」
「ええっ!」
そして、その日の別れ際。
グイッと引き寄せ竜助君から頬にキスされた。
まるで唇にしているかのように見せ掛けて ―――
「ただいま」
「おかえり。デートは楽しめたか?」
玄関先で迎える悠次。
「うん。来月からお仕事頑張らなきゃ!」
「そうだな。……なぁ」
「何?」
「いや…やっぱ良いや」
「えっ?」
「………………」
「ねえ、悠次」
「何?」
「悠次って好きな人いるの?」
「えっ?好きな人?」
「うん」
「どうして?」
「いや…」
その時、私の携帯に連絡入る。
「はい、もしもし。お疲れ様です。はい、分かりました。今から伺います」
携帯を切る。
「ごめん、事務所行ってくる」
「えっ?今から、一人でか?」
「うん。だってストーカーも捕まったし一人で…あっ!竜助君に頼もうかな?」
「連絡すれば?別れて間もないんだし」
そう言うと自分の部屋に移動し始める。
私は、竜助君に連絡してみると、悠次に頼んだら?って言われた。
一応、俺から言ってみるとの事だった。
私が家を出てしばらくして ―――
「魅琴!」
「悠次ぃ!?」
「アイツから連絡入って頼まれたから後追ってきた。何かあったらいけないから」
「そっか」
「竜じゃなくて悪かったな」
「いや…別に良いけど…」
「そうか」
会話が続かない。
緊張してからなのかは分からないけど……
言葉が出て来ない。
「ねえ、悠次は…今まで女の子と付き合った事あるの?」
「えっ!?唐突にどうしたんだ?」
「いや…会話がなくて」
「えっ!?」
「ごめん…いや…」
「竜とは会話が弾むんだろうな…」
「えっ?」
「アイツ、ファンだし色々話をしてくれんだろう?」
「別に…普通だし」
「ふ~ん…」
「……ごめん…気悪くした?」
「別に」
「………………」
「…悠次…ごめん…いいよ…」
「えっ?」
「やっぱり一人で行く…時間掛かりそうだから」
私は走り去る。
「…おいっ!魅琴っ!」
すぐに追い付かれ、グイッと腕を掴まれ、半回転し私の体は悠次の胸の中にスッポリと収まる。
ドキッ
「大丈夫だから。何かあったらいけないから俺の傍にいろ!」
ドキン……
「なっ!第一、何かあったら竜が一番気にする。断った事、後悔するから。俺も責められるから…。だから一緒に行こう。魅琴」
私はゆっくりと頷く。
事務所に着き、台本を預かる。
「また内容や場面(シーン)など変わるかもしれないけど目を通しておいて」
「分かりました」
そして事務所を後に帰り始める。
「ごめん…お待たせ」
「じゃあ、帰るか」
「うん」
私達は帰るのだった。
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