第14話 悠次の想い

「おかえり」



ドキン

胸が大きく跳ねる。




「あ、ただいま、悠次」



部屋に入ろうとする直前に悠次の部屋のドアが開いた。



「何だったんだ?」

「何が?」

「事務所、寄って来たんだろう?」

「あー、そうそう!また、ドラマの撮影が入るんだって」


「へぇー。やっと終わったのに、また仕事?」

「うん……でも…断った!」

「えっ!?」

「だってさぁ~また恋愛だよ~…もう…懲り懲りだから」



クスクス笑う悠次。



「わ、笑うなっ!」

「女優魂の椎菜 魅琴さんも流石に懲りたってやつ?仕事を選ぶ女優。珍しいな!」


「仕方ないじゃん!あんな無様な撮影も演技も最悪だよ…13年間の芸歴の私でも初のお蔵入りだから」



「ハハハ…笑える!じゃあさ。マジ恋すれば良いじゃん!」


「えっ?」


「俳優さんとか一般人と」


「出来たら、とっくにしてるから!好きな人いないしそんな相手もいないし」


「竜は?」

「えっ?」

「アイツ、ファンだから、案外良いかもしれないじゃん!」


「そうだね!良いかもね!」



私は部屋に入ろうとドアノブに手を掛ける。



スッとドアノブに私の手の上から手を重ねられ、もう片方の手は背後から抱きしめられた。




ドキン



「それとも…俺と楽しむ魅琴」





ドキン…



ドキン…




胸がざわつく中、ドキドキと胸が加速する。



「ちょ、ちょっと悠次…そうやってからかうの辞め…」




うなじに唇を這わす。



「悠次っ!辞め…」

「満更じゃない気すんのに」

「えっ…?」



グイッ ドンッ


ドアに押し付けられた。



ドキッ



「自分の気持ち押えてんのか知らねえけど…」

「何?何が言いたいの?」

「由美ちゃんとの事、気にしてたのかカラオケ楽しんでる感じなかったし」



≪えっ!?悠次も気付いて…?≫




スッと離れる悠次。



「いつでも相手になるけど?恋愛のシミュレーション」


「ありがたいけど断ったから。それに、もしシミュレーションするなら竜助君いるし」


「竜?」


「そう!だから大丈夫だし」

「竜ねぇ~」

「とにかく私も色々考えてるから」




そう言うと自分の部屋に入った。




「………………」





時々


自分の気持ちが分からなくなる


胸のトキメキは


彼へ対する恋愛としての


想いなのだろうか……?



まだ


ハッキリとしない


私の胸は


正直


モヤモヤしていた


それとも私のここは


既に奪われている?


気付いていないだけ?



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