あなたと恋愛出来ますか？

第15話 業界の人間じゃなかったら…

「魅琴ちゃん、最近、変わった事ないかい？」

「変わった事……ですか？いいえ特に」

「そうか……」

「どうかしたんですか？」

「いや…最近事務所に変な電話掛かってきていてね」

「変な電話？」

「魅琴ちゃーんとだけ言って男の人から連絡きて…すぐに切れるんだよねぇ～」

「えっ？それだけ…ですか？」

「そうなんだよ。何か話す訳でもなくて名前だけ呼んで」

「ある意味ホラーですね……」

「まあ、そうだね。こっちとしても警察に話をして対策考えてはいるんだけどね…単独行動は絶対に辞めた方が良いと思うよ」

「そうですね……」

「ちなみに今日は一人で？」

「はい。急遽、学校帰りに立ち寄ったので」

「悠次君、もしくは竜助君には連絡つきそうかい？」

「えっ？悠次か竜助君…ですか？」

「うん。悠次君はまだ君には話していなかったかな？いや…実はね悠次君には話をしておいたんだよ。連絡も時々していてね。竜助君と悠次君には瞬君の代理として出来る範囲内で良いからボディーガードをして欲しいって。力のあるとかないとかよりも一緒に行動するようにという事で話をしているんだ」

「そうだったんですか…」

正直知らなかった。

まさか二人が

私に携わっていてくれていたなんて……

「気悪くしたら謝るよ。やっぱり身の危険は業界では、一番怖いからね。世の中、何が起きるか分からないから」

「そうですね…」

「こっちから連絡しておこうか？」

「いいえ、大丈夫です」

「それから魅琴ちゃん、この前話したドラマの話なんだけど、監督と、プロデューサーが君を推しているんだ」

「えっ？」

「是非君にドラマの出演をして欲しいって」

「………………」

「……恋愛ですよね？」

「そうだよ。断りは入れたんだけど君以外じゃ駄目なんだそうだ」

≪私に拘る理由って何だろう？≫

≪演技が下手過ぎて勉強をしてもらいたいからかな？≫

「……あんな演技最低だったのに……」

「魅琴ちゃん、どうする？」

「……分かりました。……引き受けます」

「そうか！無理言って申し訳ない。ありがとう」

「いいえ」

その日の帰り ―――

自信喪失気味の私は、ぼんやりと帰る。

連絡する事さえも忘れていた。

グイッと私の背後から口を塞がれ路地裏に連れて行かれ押えつけられた。

≪ヤバイ油断してた！！≫

私は抵抗し暴れる。

次の瞬間、相手が私から離れた。

「魅琴っ！大丈夫かっ！？」

ドキン

「……悠…次……？」

相手は足早に逃げ去った。

グイッと腕を掴まれ立ち上がらせると、抱きしめられた。

ドキン

そして、すぐに離す。

「何で一人で行動すんだよ！事務所に行くなら連絡しろ！って前に言ったはずだけど？お前、もっと自分の事自覚しろよ！」

「…ごめん…」

「全く…帰るぞ！」

「うん……」

さっきの恐怖からと悠次に怒られた事に私は何故か泣きそうになった。

「魅琴」

「何？」

ドキーッ

顔をあげるとかなりの至近距離に悠次の顔があった。

今にもキスする寸前の距離だ。

「わ、わ、悪い！」

「きゃあっ！…ごめん…」

≪えっ？何？何？キスされそうになった？違うよね？≫

「ご、誤解すんな！別にキスしようとか思っていたんじゃなくて様子がおかしいから顔のぞき込んで余りの至近距離で俺も驚いたんだからな！」

「わ、分かってます！近過ぎっ！馬鹿っ！」

グイッと手を掴むと手を繋ぐ。

ドキン

「マジごめん…さっきはきつく言い過ぎたなぁ～って……」

「…悠次…」

「だけど……何かあったら遅いから……竜や俺に連絡するようにして欲しいって思うから」

「うん……」

私達は手を繋いで帰る。

ドキドキ加速する胸は

悠次への想いに気付き始める瞬間だった

業界の人間じゃなかったら

私はあなたと恋愛出来たのかな？