第12話 心の中の気付かない想い

その後、一時期は良かったもののドラマの撮影が続き缶詰め状態な私は精神的にも疲労感が増していた。


撮影もスムーズに進まない。


正直、私も限界を越えていた。


だけど、それだけじゃないような気もした。


最近、撮影の為、由美と会っていないのもあり、一緒に住んでいる悠次と顔を合わせる事がなく、悠次と由美の関係が気になっているのもある。


正直、自分がどうして、そういう気持ちになるのか分からなかった。



ある日の撮影終了後、瞬さんを待っている時の事だった。




「魅琴ちゃん」

「竜助君!?どうしたの?」

「いや、撮影見学来ていたから」

「そっか…」

「大丈夫?無理してない?」

「えっ?」


「いつもの調子出てないなぁ~と思って」

「…えっ?そうかな?」



スッと両頬を優しく包み込むように竜助君は触れる。




ドキン



「無理しなくても君は輝いているから、力入れ過ぎないで」


「竜助君…」


「俺は一人のファンとして言っているんだ。魅琴ちゃんが無理しているのが凄く分かるから。普段の演技に君らしさがなくなっている。我慢して演技しなくても自然に演技しよう」


「ありがとう…竜助君」

「魅琴ちゃん」

「あっ!瞬さん」

「お邪魔だったかな?」



「「大丈夫です!」」


二人同時に言った。



「えっ?」



私達は顔を合わせ、すぐに瞬さんを見るとクスクス笑っている。



「じゃあね、魅琴ちゃん」と、竜助君。


「あっ、君も一緒に送るよ」

「えっ?いや…でも…」

「危険だよ。魅琴ちゃんも心配するだろうし。一人も二人も変わらないから」



私と竜助君は、瞬さんの車で送ってもらう事にした。



ある日の夜。



「…今日は…疲れた……我が儘な女優さんと拘りのある俳優さんの間の演技は疲れるし半端ない空気感だった……」





コンコン……


部屋のドアを誰かが叩く。



「どうぞ」



ドアが開く。



「お前、体大丈夫か?」と、悠次だ。


「大丈夫だよ。暇よりも忙しい方が良いし。つーか、私の事は良いから由美と仲良く宜しくしときなよ。はい、つー事で出て行って」




私は悠次を追い出す様に部屋から出し始める。




「お前なぁ~」

「何?他に何か用事あるの?」

「ねーけど」

「じゃあ出て行ってくんない?一人になりたいから!」


「はいはい、分かりました」


「…ねえ…悠次」

「何?」

「…ううん…やっぱり何でもない…ごめん呼び止めて」

「いや別に良いけど…」



悠次は私の部屋を後に出て行った。




「………………」



私は出入り口を背に立つ。



「…聞けなかった…」


「何を聞けなかったんだ?」


「きゃああっ!何でいんの?出て行ったじゃん!」


「で?」


「えっ?」


「何を聞きたかったんだよ」

「何でもないから!」

「何でもないわけねーだろ?」

「いや…本当に何でも…」



ムニュと両頬を摘ままれた。



「痛い…」

「嘘ばっか。正直に話せよ」

「いや…えっと……由美と仲良くしてくれてんのかな?って……」

「由美ちゃん?あー友達のまんまだけど?」

「そっか」


「つーか普通に聞けば良いじゃん!」

「聞ける訳ないじゃん!」

「どうして?」

「女の子同士は、その辺聞けないから」

「そういうものか?」

「だって…聞く理由分からないんじゃん。私だったらそうだけど」

「へぇー…」

「ともかく、そういう事だから」


「魅琴、言っておくけど、由美ちゃんとは友達以上にはならないと思うけど」


「えっ?」


「確かに彼女は良い子だけど…恋愛となると、また別だから」

「…そっか…」


「それよりも、お前、無理すんなよ」

「えっ?」


「最近、全然顔会わす事ない日々送っていたから帰ってきたの全然知らないし、朝は早いしで同じ家に住んでんのに、こんなに合わないのか?って思ってたから」


「私は業界の人間なんだから、そういうものだよ。まだまだだなぁ~。ゆ・う・じ・くん」




スッと両頬に触れる悠次。



ドキッ



「家族なのに、お前の心配する余地もねえし」


「えっ?」


「体の心配、一人位いても良くね?俺が一応家族の代表して心配しておかねーと」


「だ、大丈夫だよ。竜助君も心配してくれてたけど」



「竜?」


「うん。今日、見学来てて、瞬さん待ってる時に声掛けられて、竜助君、本当良く見てるなぁ~って……私の体調とか雰囲気とか気付いてたから」


「アイツはファンだからな……俺よりも観察力あるだろ?まあ、アイツがいるなら見張り役任せて報告でも貰うかな?じゃあ、俺、部屋に戻るわ」


「あ、うん」



悠次は部屋を後に出て行った。





一緒に住んでいる俺よりも先に気付く竜助が羨ましいと思った。


俺は魅琴の何を知っているのだろう?


俺は家族であり


もしもの時の

ボディーガードみたいなものだから……































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