第9話 恋愛の勉強

「魅琴」

「何?」

「悠次君って彼女いるのかな?」

「どうかな?悠次の事気になるの?」


「えっ?まあ……確かにカッコイイとは思うけど」


「それとなく聞いておこうか?」

「えっ?ううん、大丈夫」

「そう?」

「うん」



ある日の学校帰りの事だった。


事務所から連絡が入っていて、折り返し連絡すると私は帰り事務所に寄る事にした。


向かっている途中、背後から誰かにつけられてる気がして―――



「気のせいかな?」



事務所に寄る私。



「ごめんね。魅琴ちゃん」

「いいえ」

「一人で来たの?」

「はい」

「危険だよ」

「すみません……」



「帰りはタクシーを利用して帰るんだ。良いね」

「はい……」



「実はドラマの話の出演依頼が来ていて、急遽、特番で君の出演と既に共演者が決まっていて」


「はい」



私は説明を聞いた。


どうやら学園ドラマの話で恋愛ドラマだというのだ。


学園ドラマの出演は何度もあるものの、恋愛が絡む学園ドラマは一切やった事がない為、初の試み



全くといって良い程、恋愛に疎い私に務まるのだろうか?



私は頑張って出演を受ける事にした。



その日の帰りはタクシーを利用して帰るように言われたもののタクシーは捕まらず歩いて帰る事にした。


辺りは薄暗い。




「恋愛……ドラマ……」




グイッと背後から抱きしめられるようにされ口を塞がれ路地裏に連れて行かれた。


ドサッ

押し倒され押えつけられた。



「や、やだ…離…」

「静かにしな!」



「………………」



「ある人からの命令でさ~」

「えっ?」

「悪いな」

「い、いやぁっ!」




ドカッ

相手の股間を蹴り足早にそこから去った。




その日の夜。


「…琴…魅琴…み~こ~と~ちゃん」



グイッと肩を抱き寄せられる。



「きゃああっ!」



ドサッ

勢いで倒れ込む私達。



「いってぇ~」

「いったぁ~」



ドキーッ


至近距離。


私の目の前にある悠次の顔に驚く。




「きゃああっ!」

「馬鹿っ!落ち着けっ!」

「は、早く降りてっ!」

「わ、分かったからっ!」



「………………」



「つーかノックしたわけ?」

「したし!」

「嘘だっ!」

「本当だし!お前考え事している様子だったし」

「考え事?あー…まあ…あっ!ねえっ!悠次って彼女いる?」


「いきなり何?つーか、俺、前にいないって言ったはずだけど?」

「前でしょう?現在(いま)いないって保証ないじゃん!」


「まあ、そうだけど……現在もいないけど?」

「そう?好きな人は?」

「いない」

「分かった!ありがとう!」


「で?」

「えっ?」

「今日、帰りが遅かった理由は?」

「えっ?理由?事務所に寄って帰ってきた」

「一人で?」

「うん」


「へぇ~…一人でねぇ~…」

「だって急…」



ムニュ

両頬を摘ままれた。



「急な事だろうと連絡しろ!何かあったらどうすんだよ!お前は自分の立場分かってんのかなぁ~…?椎菜 魅琴さぁ~ん」

「ご、ごめん…なさい…以後気を付けます…」

「とか言って、お前は連絡しないもんなぁ~」

「うん」


「“うん” じゃねーんだよ!」

「もう、そんなに怒らないの!ゆ・う・じ」

「お前なぁ~…で?」

「えっ?」

「事務所に寄って帰った理由は?」



私は事情を説明した。



「恋愛ドラマ?へぇー」

「だけど、私、恋愛ドラマってなくて…学園ドラマでも恋愛一切なかったからさぁ~」

「初の試み」

「そう!」


「断れば良かったじゃん!」

「いや…今後の為にと思って……女優魂が……」

「……女優魂……」



「何?」

「別に…まあ頑張るんだな」

「まあ頑張るしかないよね?」



そしてさっきの出来事を話した。



「ほらっ!だから言っただろっ!」


「…………」


「もっと意識して行動しろよな!」
















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