第3話 彼の優しさ
それから数か月が過ぎたある日の学校帰りの事だった。
最近、仕事ばかりで休む事なく仕事に追われていた。
フラつく体で帰っているとバランスを崩し倒れそうになる。
「おいっ!大丈夫か?」
「…はい……大丈夫です…すみません…」
私は去り始める。
「おいっ!ちょっと!待てよっ!」
後を追う男の子。
「か、構わないで下さい!」
「ねえねえ、ドラマの撮影かな?」
「でもスタッフとかいないよね?」
「じゃあプライベート?」
「えっ?じゃあ、魅琴ちゃんの彼氏?」
「カッコ良くない?」
「イケメンだよね」
「………………」
グイッと私の手を掴み、その場から去り人の目のつかない所に移動する。
「何ですか?」
「女優なら自分の体を大切にしろよ!休む位出来るだろう?無理そうなら病院行って薬もらうかした方が良い」
「………………」
私は熱があるせいか泣きそうになり下にうつ向く。
スッと両頬に触れる。
ドキン
「熱あるじゃん!体調不良って休む事あったりするのは誰もがある事じゃん!時間ありそうなら俺が付き合うから。その体じゃまともに歩けねーだろ?」
「………………」
「病院行きな!テレビ出演が決まってるなら出演するお前がいないんじゃ視聴者は悲しむだろうし」
私は彼に連れられ病院に行く事にした。
そして――――
「あの……すみません…」
「別に。俺の親友があんたの大ファンだから、アイツヘコむと思うし」
「友達想いなんですね」
「とにかく無理はすんな!」
「…はい…ありがとうございます…」
私達は別れた。
彼とは何回目だろう?
業界の人間の私と
普通に接してくれる
友達思いなだけ
彼の中で
私をどういう扱いしているの?
彼の扱いに
私の心を
夢中にさせる
――― ある日の事 ―――
「悠次くーん♪」
「うわっ!出たよ!仁士原 由衣菜っ!」
俺は隠れる場所を探した。
偶々、ちょうど良い隠れる場所があった為、隠れる俺。
「あれぇ~、さっきの、この辺りで……もうっ!本当、逃げ足が早いんだから!」
「危ねっ!全く疲れるっつーの!」
俺はそこを出る。
その直後だ。
一人の人影と目が合う。
「あっ!」
「どうも」
そこには親友の大好きな椎菜 魅琴の姿があった。
彼女は眼鏡を掛けて普通に過ごしている様子。
肩を並べて帰る俺達。
多少の注目をされるものの気付く人はいない。
と、いうより気付いているけど声を掛けて来ないのか?
まあ、俺も普通に肩を並べて歩いているのが不思議だが、竜助にしてみれば願ってもいない事になるだろう?
「……不思議な奴……」
「えっ?」
「隣に女優いんのに声を掛けて来ないのは何でだ?」
「さあ?あなたが目立っているからじゃないですか?」
「えっ!?」
「イケメンですし」
「イケメン?」
「つりあっているのでは?」
「お前と俺が?」
「知りませんけど…学校では、さぞかしモテモテでしょう?」
「いや、毎日、言い寄って来る女いるから困ってる」
「それモテモテって事でしょう?」
「いや!一人の女優さん。今日も追い掛けられて大変だった」
「クスクス…その女優さん余程あなたの事が好きなんですね。見たことありますよ。仁士原 由衣菜さんですよね」
「そう!女優でもこんなに違うのか?と思っている」
「そう?そう言えば私、あなたの名前、良く会うのに聞かなきゃと思っていたんです」
「あれ?俺、言ってなかったっけ?」
「はい」
「悠次。早深 悠次(はやみ ゆうじ)16歳。彼女は居ません!まあ、どうでも良い情報だけど」
「…早深…悠次…さん。私は…」
「椎菜 魅琴。16歳」
「はい、そうです」
「本当、同級生なのに相変わらず敬語なんだな」
「癖です。やっぱり色々な業界の方と会いますので…業界は厳しい所なんですから」
「ふーん…」
私達は色々話をしながら帰るのだった。
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