第2話 女優

「悠次くーん♪」



前方から声がし声のする方に目を向ける。



ストッ


私の前に飛び降りる男の子。



「あーん!もーっ!ズルーイ!」

「うるせー!つーか、何?」

「悠次君とキスしたらぁ~仕事頑張れる気がするからぁ~だからぁ~お願い♪」

「断る!」



≪つーか…あれ女優の、仁士原 由衣菜(にしはら ゆいな)じゃん!≫


≪即フラれてるし!明らかに一方的な感情だよね?彼女の≫




「もう照れちゃって可愛い~♪」


「いや、照れてねーし!俺よりもカッコイイ俳優さんとキスすりゃ良いだろう!?つーか、しろよ!」


「悠次君が良いの!」

「やーだね!あーーーっ!」



空を指差す男の子。



彼女は振り返る。




「えっ?何?何もない……えっ?ちょ、ちょっと悠次君っ!ひどーい!意地悪〰〰〰っ!」


「バァーーーカ」



そう言うと男の子は既に去り始めていて、遠くの方から叫んだ。




≪私も馬鹿にされた気分…小さな子供がするようなイタズラにまんまと騙された≫




私は渋々帰る。





その途中 ―――――




「すみません。椎菜 魅琴さんですか?」

「はい」




私に歩み寄り、周囲にバレない様に話しかけて来るファンと思われる人達。



「握手して下さい!」

「サイン下さい!」


「良いですよ」



私は対応した。





そんなある日の休日、近くの公園のベンチにいると、声をかけて来る人影があった。



「なあ」



私に男の子が声をかけてきた。



ドキン

何故か私の胸が大きく跳ねた。



「…あんた…女優の…」

「えっ?あ、はい…」

「つーか…オーラ消しまくり?もしくは人気あるけど影がうっすーーい感じ?」

「騒がれるよりマシですから」


「休みの時くらい、ゆっくりしてれば良いじゃん!」


「まあ…そうなんですけど……」

「もしかして彼氏待ち?」

「彼氏ぃっ!?」



つい声を張り上げてしまった。



「えっ!?何?その反応」

「か、彼氏いたら、こんな所で待ち合わせなんてしないですよ!」

「つまりそれっていない感じ?女優さんなら俳優さんとか業界の人間寄って来るでしょう?」


「…業界の人間は時間が合わないですから」

「じゃあ一般人?」

「それは…」

「俺の友達があんたの事スッゲーファンなんだよね」


「そうなんですね」

「サインとかもらったらアイツ喜ぶと思う」

「書くのあれば書きますよ」

「残念ながら書くのがない!」

「それは残念です」


「なあ、あんた16なんだよな」

「はい」

「タメ口で良くね?」

「考えておきます」


「いや、今度いつ会うか分からないから」

「それもそうですね。だけど、あなたも珍しい方ですね」


「えっ?」


「私に普通に話しかけられるって凄いです」

「まずかった?」

「いいえ」

「そっ?」

「はい」

「それじゃ」

「はい」




私達は別れた。





休日は公園で


ぼんやりしながら過ごす




さっき声をかけられたのは正直驚いたけど……










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