第12話 廃墟に佇むホテル〜あれから

「今日は早い帰りでしたねぇ?」

「そうねぇ?まさか、8時間の滞在とはビックリでしたねぇ。」

「そうねぇ…とはいえ、現世では10日間滞在した事にはなっていますけど…」

「そうなんですかぁ?ところで、現世に戻ってその後、どうなったのですか?」

「現世に戻った美幸さんはすでに、こちらの世界に戻っているわよぉ。」

「えぇ!そうなんですかぁ?」

「そうよぉ。現世に戻っても10日間危篤の状態で戻ったら自分との最後の別れとは複雑だったかも知れないけど…とはいえ、前世の記憶は消去されて、今では、賀正院 京介のメイキャップをしているわぁ。名前も変わってねぇ。なんだっけなぁ…確か…あぁ、思い出したMikin(ミキン)よぉ。鷹宮 美樹よぉ。先程も伝えたけど現世での1年は黄泉の国では12年よぉ。でも、黄泉の国では時の概念がないから、1日を早くする事も可能なのよぉ。だから、仮に20年以上経過してもどちらかが「出逢いたい」と思えば一瞬で逢えるのよぉ。」

「えぇ?一瞬でスターのメイキャップをしているのですか?」

「違うわよぉ。前にも言ったけど、黄泉の国は時間の概念がないから、黄泉の国に来てから生まれて大人になるのも一瞬なのよぉ。」

「そうなんですねぇ。それにしても、お互いの運命は繋がっているんですねぇ?」

「そうかも知れないわぁ。それよりも、今日も、これから新しいお客様がくるから、戻るわよぉ。」

「えぇ、もしかして、現世に帰ったら、何日間滞在した事になるのですか?」

「そうねぇ…1ヶ月は居なくなっているわぁ。」

「えぇ!大丈夫なんですかぁ?その間は?」

「猿渡さんや竹中さん、おじいちゃんが働いているわよぉ。」

「そうなんですかぁ。それなら、急いで戻らないと!」

「大丈夫よぉ。壁を挟んで見に来ていたから!」

「時空が違うのも大変ですねぇ?」

「そうかなぁ…案外、楽しいけどなぁ。こっちに2日間滞在したら、2ケ月いなくなっていた事実を知った時はビックリしたけど…でも、黄泉の国から現世に戻って生まれ変わった時は長い人生も貴重に感じないから不思議よぉ。」 

「そりゃそうですって…黄泉の国では時間の概念がないし、それに黄泉の国の記憶がないんですからやむを得ないですって。」

「そうねぇ…。仮に黄泉の国で2ヶ月は現世では10年という事に気付くのは黄泉の国を体験した人だけの特権ですからねぇ。」

「そうなんですかぁ?私は現世に戻れますかねぇ?」 

「どうかなぁ?現世に逢いたい人がいれば戻れるけど…」

「だと良いですけど…今は思い出せないなぁ。」

「ところで、大丈夫ですか?時間になりますよぉ。」

「あぁ、もぅ嫌だぁ。これから、新しいお客様が来るんだった。戻るわよぉ。」

「はい。」


その頃…

「それにしても、なかなか戻って来ませんねぇ?」

「そうだなぁ…1ヶ月経過するけどなぁ。」

「ですねぇ?今日は又、新しいお客様が来る事になっていますけど…大丈夫ですか?」

「まぁ、戻って仕事になるのはキツイけどなぁ。」

「今回の仕事が終わったら、少し、みんなで温泉にでも行こう。」

「えぇ、本当ですか?楽しみにしてますよぉ。」

「もちろんだよぉ。とは言っても、現世の地球は消滅しているからタイムトラベラーになって過去の地球になるけどなぁ。」

「それでも、良いですよぉ。温泉は箱根や熱海に行きたいなぁ。」

「解った。解ったよぉ。みんなで行こう!」

「やった!支配人有難うございます。」


「ただいま。」

「もぅ、待たせ過ぎよぉ。立ち話していたでしょ?」

「ちょっと、黄泉の国のフロントに寄ってフロントバッグで1時間程話混んじゃって…時間通りでしょ?」

「ちょっと、時間通りじゃないでしょ?1時間も話して…もぅ、壁を挟んで黄泉の国のフロントとつながっていても時空は違うんだからすぐに戻ってこないと…」

「あぁ…しまった。ですねぇ…。1日が1ヶ月になるから1時間でしょ。8時間は10日、4時間は5日、2時間が約3日、そっかぁ、予定の1ヶ月は約2日も待たせてしまったんだぁ。」

「そうよぉ。30分は1日よぉ。10分は約8時間、5分は約4時間、1分は約80分よぉ。30秒は約40分なんだかねぇ?」

「そりゃ、解っているけど…すいませんでした。」

「ところで、黄泉の国はどうだった?」

「いやぁ、まだ慣れないですよぉ。」

「あれぇ、お客様は?黄泉の国に来るんじゃないのぉ?」

「おいおい、明日だよぉ。少し、休んでおきなぁ。明日の夕方までゆっくりしてくると良いよぉ。」

「はい。そうします。」

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