第11話 廃墟に佇むホテル〜まさかの出来事
「それにしても、私に逢いたい人なんているのかしら?名前も賀正院 京介って…知らない人に逢うのは怖いなぁ…。」
「お待たせ致しました。あなたが賀正院 京介さんですかぁ?」
「えぇ!何で、何で、あなたがいるのぉ?」
「久しぶりだなぁ。元気だったかぁ?泣くなって…。」
「ちょっと、ちょっと、何よぉ、偽名まで使って…田中 健司さんが本名じゃないのぉ。」
「おいおい、偽名じゃないよぉ。ここでは賀正院 京介が本名なんだよぉ。それに、若いじゃないのぉ…?嘘?化粧までして、あり得ないなぁ。雰囲気も違うし…いつから、こんな王子様キャラに?それにこんな、お婆ちゃんじゃ、釣り合わないでしょ?」
「おい、何を言っているんだぁ。鏡を見て見なよぉ。」
「えぇ!嘘。若い、若くなっているわぁ。それにさっきまで来ていた服がドレスになっているわぁ。」
「驚くのは、まだ早いよぉ。右肩の刀傷を触ってみなぁ。」
「えぇ!嘘でしょ?綺麗になっているわぁ。」
「驚くのはまだ早いぜぇ。ちょっと、ホテルの外に行ってみたら、もっとすごい事になっているよぉ。」
賀正院様。京介様。カシャ、カシャ。パシャ…
「かっこいいわねぇ。」
「本当に素敵よねぇ?ドラマや映画に出て俳優としても最高よねぇ?」
「本当ねぇ?アクションも最高よねぇ?」
「すいません、写真良いですかぁ?」
「あぁ、もちろんだよぉ。」
「有難うございます。」
「応援してますので、次回のドラマも楽しみにしてます。」
「あぁ、有難うございます。」
「えぇ、どうなっているのぉ。もしかして、ここではスターなのぉ?」
「まぁ、そうなるかなぁ。」
「お待たせ致しました。賀正院様。車にお乗り下さい。」
「あぁ、どうも有難う。」
「あぁ、奥様ですねぇ?初めまして、賀正院様の付き人と言いますか…マネージャーをしております。武岡 誠です。」
「えぇ?武岡さんですかぁ。宜しくお願い致します。」
「やっと、奥様にお逢い出来たのですねぇ?」
「そうだなぁ…。」
「ちょっと待って。奥様って…。まだ、状況がよめないけど…。それに、少し、おなかが空いたわぁ。」
「えぇ?知らないのですか?今日は新聞で、「賀正院 京介!70年振りに前世の恋人に出逢う?奥様に出逢えるかぁ!」っと天界上げて盛り上がっていますよぉ。あぁ、見て下さい、花火、花火ですよぉ。」
「すごいなぁ。有難う。」
「では、1度、自宅に戻ってもらえるかい。」
「はい、かしこまりました。」
「あれぇ、電光掲示板に…えぇ?健さんが出ているのぉ?えぇ、向こうにも、健さんが出ているわぁ。すごい、すごい。トップスターじゃないのぉ。」
「美幸。実はなぁ。俺は死ぬ前の夢がなぁ。アクションスターだったんだぁ。黄泉の国に来てから賀正院 京介として今まで出来なかった事を叶えたにすぎないんだぁ。ここでは、時間がある。努力しだいで夢を叶える事が出来るだよぉ。」
「そうなんだぁ。大変な苦労をしたのねぇ?」
「どうかなぁ。苦労というよりも、黄泉の国は広くて人口も多いから人気があるのは一部の地域だけだよぉ。それに、ファンもバーチャルなのかも知れないとさえ思う時があるよぉ。まだまだ、上を見たらきりがないし。鏡花水月の花言葉喫茶店で出逢えた事がきっかけで天界エリアにきただけなのさぁ。本来なら、このエリアには入る事さえ出来ないのだから。」
「そんな事はないわぁ。あなたが努力して今のポジションがあるのよぉ。間違いないわぁ。それにしても、天界って?」
「後で説明するよぉ。」
「賀正院様、自宅に着きました。」
「あぁ。有難う。」
「ちょっと、ちょっと、ここはどのくらいの敷地があるのぉ?」
「そうだなぁ。現世だと東京ドーム4つ程が入るかなぁ。ここの世界では、かなり狭い方になるかなぁ。オリエンタルホテルの部屋より狭いからなぁ。」
「えぇ、オリエンタルホテルの部屋より狭いって…嘘でしょ?」
「あれぇ、もしかして知らないのかぁ…オリエンタルホテルは黄泉の国では3つ星ホテルで、最上階の部屋まで行くのに1日かかるし部屋を開けたら10キロ以上の草原や荒野などが続いていて、部屋に到着したら、全ての物が動いて世話をしてくれるのさぁ。」
「そうなんだぁ…。有り難いけど…1人でのんびりしたいなぁ。」
「だよなぁ。でもなぁ…別のエリアに行けばここがどれだけ恵まれているか解るよぉ。貧富の差もあるし、治安も悪いし、何よりも現世よりも悪いエリアも存在するのさぁ。」
「そうなんだぁ。別のエリアはどうなっているのぉ。」
「このエリアは天界と言われているけど…この下には守護界、人命界、畜生界などなどが存在する。でもなぁ。現世に近い人命界は消費税が35%、失業率も25%と見るに耐えない地域だよぉ。とはいえ、現世でお金の有り難みに気付かなった金持ちが行く場所だけどなぁ。たいていの人は人命界でもそれなりの生活はしてるけど…とにかく、勉強や努力は現世の10倍は必要さぁ!」
「そうなんだぁ。もっと知りたいなぁ。知る方法はないのぉ?」
「あるよぉ。ここにあるテレビはあるゆる界層のテレビを見る事は出来るけど…人命介から下の世界は見ない方が良いかなぁ。」
「えぇ?どうして?」
「あまりに酷い現状だから見れないのさぁ。でも、解る範囲なら教えるけど…。知っている事は生活困窮でお金に縁がなければお金を得るし、障害があった人は障害がない状態で生まれて来るさぁ。でもなぁ。最後はどれだけ努力したかにはよるさぁ。だから、現世よりも厳しいのは人命界なのさぁ。」
「そうなんだぁ…。ところで天界はどういう場所なの?」
「天界については一言で話すのは難しいかなぁ。時の概念がないからなぁ。」
「そうなんだぁ…。時計はないのぉ?」
「時計はないけど…現代に戻る時に気付くと思うけど…」
「ちょっと、もしかして、浦島太郎みたいにはならないでしょ?」
「それは俺からは言えないなぁ。」
「そうなんだぁ。そろそろ、私は現代に戻らなくちゃ…」
「えぇ!もっとゆっくりしていけば良いのに…」
「俺に逢いたかったんだろぉ?」
「そりゃ、逢いたかったけど…今のあなたではないわぁ。」
「えぇ!どうしてだよぉ。昔の俺が良かったのかよぉ。」
「そうよぉ。やっぱり、私が知っている健さんは博打好きで不器用で真っ直ぐで汗をかいて涙もろくて一途じゃなきゃねぇ。だから、惚れたのよぉ。」
「おいおい、俺がおまえに逢いたくて俳優になる為、努力して成功したってのによぉ。」
「それは有り難いけど…。今の健さんではないわぁ。」
「有難うなぁ。逢えて良かったよぉ。」
「あぁ、ところで食事はどうする?」
「食事はいいわぁ。なんだか、天界で過ごしてみて、貧しくても温かみがある現世が今は良いみたい。だから、駅前の箱根そばでも行くわぁ。」
「そっかぁ…。ごめんなぁ。」
「謝るなら…私の気持ちに気付いて欲しかったわぁ。」
「そんなぁ。おまえこそ、常にお金がなければ…とか、ブランドが…って言ってたじゃないかよぉ。」
「あれは…私が若かったからよぉ。あれから、お金の大切さや温かみに気付いたのよぉ。だから、私を忘れてここでの生活を楽しんでねぇ?」
「私がこの世界で偶然にでもお互いが惹かれあったらうれしいわぁ。たぶん、これまでの記憶はないと思うけど…」
「そうだなぁ。」
「えぇ、戻るのですかぁ?」
「ちょっと、用事を忘れてきたから戻るわぁ。」
「かしこまりました。どうでしたか?久しぶりにご主人にあったのは?」
「逢わなくなった時間でお互いにすれ違ったみたい…。」
「そうなんですか…愛は複雑ですねぇ?はい、到着しましたよぉ。オリエンタルホテルに。」
「はい、有難う。」
「えぇ?チェックアウトですかぁ?宿泊しなくて宜しいのですかぁ?」
「大丈夫よぉ。私は贅沢とは無縁の生活をしてきたから私には合わないわぁ。」
「そうですかぁ…かしこまりました。では、こちらがお荷物です。お帰りはこちらになります。」
「有難う。」
その頃…
「店長。まだ、死なないで下さいよぉ。」
「明日から、お店をどうしたら良いのですか?」
「よし!おいおい、姉さんが立派な堅気になって「美容室みゆき」を開業して、俺達を誘ってくれたんだぁ。」
「大好きな健さんが亡くなってから、俺達の事を心配して、美容師の専門学校のお金を工面してくれたんだ。あの小さな港町で漁師になって、地震が起きて、津波で漁船や家も何もかもがなくなっちまった。避難所に直ぐに駆けつけくれたのは、美幸さんだけだっただろう。あれから、30年が経過しているじゃないかぁ。俺達は恩返しする番じゃないかぁ!この店を無くさないで維持する事が恩返しにならないかぁ!」
「ですねぇ…。美幸さんは天国から見ていますよねぇ。」
「あれぇ、私だわぁ…美容室みゆきのスタッフがいるわぁ。そうだったわぁ。癌で余命1週間だったんだぁ。忘れていたわぁ。という事は私は亡くなったのねぇ…。これからも頑張ってねぇ?有難う。」
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