第10話 廃墟に佇むホテル〜外界からゲストがやって来る➁
「そう言えば、中村 義雄さんはあの後どうなったのですか…?」
「えぇ?知らないのぉ?先週、黄泉の国に予約リストを取りに行ったら…黄泉の国でデートしているよしさんと美砂さんに偶然出逢ったわよぉ。」
「えぇ?そうなんですか?よしさんが亡くなったのですか?」
「そうねぇ。あれから、3年程経過してからだけど…なんでも、よしさんと美砂さんには子供がいたとの事。黄泉の国では楽しく住むと言っているけど…現世での償いをする為に、美香さんがこっちに着たら記憶の消去と自分達の子供として赤ん坊にする申請を出しているとの事。」
「えぇ?この世界で1週間でも、外界では3年ですか?それにそんな事出来るのですか?」
「えぇ?知らなかったのぉ?この世界では1週間は外界では3年よぉ。しょうがないわよぉ。外界では母親の温もりや父親の温もりなどを知らないで育ったから特別に申請出来るのよぉ。」
「なるほど…。」
「ほらほら、次のゲストが外界から来る時刻よぉ。黄泉の国に案内しないとねぇ?」
カラン コロン〜カラン♪
「すいません、誰かいませんかぁ?何々、ちょっと出掛けてきますって…。はぁ、本当にこのホテルで間違いないのかしら?周囲には人すらいない無人駅で車さえも走っていないからなぁ。聞くに聞けないから…まぁ、良いわぁ。少しベンチで休んでいようっと。」
「あれぇ、誰か座っていますよぉ。もしかしたら、お客様ですかねぇ?あやめさん?」
「ちょっと、声をかけてみて、猿渡君。」
「えぇ、僕ですか?やっぱり、ここは新入社員に…」
「ちょっと、あなたに留守番頼んだわよねぇ?フロントを離れて仮眠取るって…あり得ます?」
「すいません。いやぁ〜、ちょっと、昼飯食べたら急に眠くなってしまって…」
「今回は見なかった事にするから行って来て。」
「はい、はい。解りましたよぉ。」
「すいません。お客様。スタッフが戻って来ましたので、お手続きを…」
「ちょっと、出掛けてきますで30分以上待たせるホテルがありますかぁ?」
「お客様、大変申し訳ございませんでした。」
「謝ってすむ問題じゃないって…あれぇ、あやめさん?澤村 あやめさんですよねぇ?なんでここにいるのですかぁ?」
「えぇ!お知り合いですかぁ?」
「あやめさんの知り合いですか?」
「いやぁ、ちょっと覚えていないなぁ…」
「恐れ入りますがどちら様でしょうか?」
「ちょっと、ちょっと、私よぉ。たかはら 高原 美幸よぉ。花言葉喫茶店でお客として来た。高原 美幸よぉ!覚えていないかなぁ?
それにしても、びっくりだなぁ。あれから、20年ぐらい経過するけど変わらないわねぇ。まさか、ここで逢えるとは思わなかったなぁ。」
「えぇ!もしかして、右の肩に刀傷がある。あの時、ヤクザに追われていたスナックで働いていた高原 智美さんですかぁ。」
「そうよぉ。そうよぉ! 良かった。思い出してくれてぇ…あの後、美容専門学校に通って美容師になって、小さな美容室に勤めて高齢者施設で訪問理美容をしたり、充実した日々を過ごしていたんですよぉ。本当に感謝してます。有難うございました。」
「そうなんですねぇ?幸せになれて良かったですよぉ。」
「それにしても、まさかねぇ?こんな、ハガキが届くと思っていなかったからビックリしてますよぉ。」
「えぇ?もしかして、美幸さんにもあのハガキが届いたのですか…?」
「正直、あり得ないとは思ったけど…鏡花水月の花言葉喫茶店で、夢、幻って…事があったから信じてみたのよぉ。」
「では、河井さん、チェックインをお願い致します。」
「お客様、こちらでチェックインをお願い致します。後、ハガキの確認をさせて頂きます。」
「はい、有難うございます。では、こちらがお部屋の鍵になります。では、ごゆっくりお寛ぎ下さい。」
「あぁ、こっちねぇ?」
「あぁ、恐れ入ります。こちらではなく、あちらがホテルの入口になります。」
「えぇ?こちらがお部屋へのエレベーター乗り場でしょ?」
「今日は特別なお客様になりますので、あちらが入口になります。入って、右側にエレベーターがございます。なお、ロビーでお連れ様がソファーで座っております。」
「あぁ、そうなんだぁ。こっちねぇ?えぇ!どうなっているのぉ?このホテルは?一歩、入ったら、素敵なシティーホテルじゃないのぉ!」
「お客様、お待ちしておりました。黄泉の国、オリエンタルホテルにようこそ。
ベルボーイのN20214649です。エレベーターはこちらになりますが…お部屋に先に行かれますか?それとも、お連れ様に先にお逢いした方がよろしいでしょうか?」
「そうですねぇ…。先に、私を待っている人にお逢い致します。」
「かしこまりました。それでは、お荷物はフロントでお預かり致します。こちらが控えの番号札になります。」
「鍵はどうしますか?鍵ねぇ…、あれぇ、さっきまであった鍵がないわぁ。おかしいなぁ。」
「お客様。このようなカードはありませんか?」
「これかしら?」
「そうです。こちらがオリエンタルホテルの鍵になります。ちょっと、待って、さっきまであった鍵は?」
「あの鍵はサザンクロスホテルの鍵になりまして、黄泉の国、オリエンタルホテルに入った瞬間にカードキーに変更する事になっております。」
「ちょっと、それって、面倒くさくない?」
「まぁ、そうなんですが…黄泉の国に行けるのも限られたお客様だけでして…黄泉の国からのハガキとサザンクロスホテルの鍵がないとこちらにはこれないのですいません。」
「そうなんだぁ。」
「ところで、お客様…お部屋の鍵はどうしますか?」
「そうねぇ…預けておきます。」
「かしこまりました。では、お連れ様はあのテラスのソファーでお待ちになっております。」
「あぁ、有難うございます。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます