第2話 廃墟に佇むホテル~やって来たのは…
『あのぅ、すいません。アルバイトの求人にぼぉ、募集したものでぇ、すがぁ。』
『良く来てくれました。ありがとうございます。サザンクロスホテル支配人の澤村 輝樹です。』
『ぼぉ、僕でもだぁ、大丈夫ですかぁ…不安になります。』
『詳しいお話はこちらに座ってお話しますよぉ。』
『はい。』
『まずは、履歴書を拝見しますねぇ。』
『こぉ、こちらになります。』
『なるほど…なるほど。河井 純一さんですねぇ?』
『はい、かぁ、河井 純一と言います。』
『年齢が29歳ですねぇ。』
『はい、29歳になります。』
『学歴は白山高校卒業ですねぇ?』
『はい。』
『職歴の記載がないけど…?』
『はい、実は高校卒業後にダンボールを作る会社に派遣社員として就職しましたが…数週間で同僚に吃音が原因で行けなくなりまして…。派遣先からは解雇されまして実家に…』
『大丈夫ですよぉ。言いたくない事もありますから…良く話してくれました。ありがとう。まずはよく来て頂きました。市役所の方からは聞いておりますのでゆっくりとトライアウトで慣れて行けば大丈夫ですから。』
『あぁ、ありがとうございます。』
『良かったら、これから、職場内を案内しますのでこちらに。』
『こちらが従業員の入口になります。入口は2ヶ所あります。出口も2ヶ所あります。駐車場は隣になります。10台駐車出来ます。フロントは2ヶ所ありますが…通常はこちらのフロントを使用します。館内にはラウンジと1階に更衣室兼仮眠室ツイン2部屋、レストラン、シングル5部屋、2 階に5部屋(ツイン3部屋→ソファベッドを入れてトリプルに変更可能、ダブル2部屋)で合計10部屋。最大人数は18人。非常階段は両端にあります。3階以上は従業員の寮になっております。現在、4階自立支援施設の利用者が使用してます。』
『という事は…自立支援施設の利用者と合う事もありますか?』
『もちろんありますが、みんな良い人ですよぉ。』
『そうなんですかぁ。』
『そういえば、寮に住みたいと書いてあったけど…』
『そうなんですが…実家には迷惑をかけられないので追い出される事は…ないでしょうかぁ…』
『大丈夫ですよぉ。ここには派遣切りにあって何処にも行けなくなった人やホームレスで仕事を失った人にも住む場所と仕事を斡旋してますから。ホテルのフロントに立つのが苦痛なら、裏方の事務やレストランの厨房なども出来るから安心すると良いよぉ。現在は、自立支援施設の利用者が宿泊者の為に、裏の畑で取れた、トマトやきゅうり、苦瓜などを栽培していますよぉ。道の駅にも出していますよぉ。寧ろ、そちらの方が売上が良いかも…。』
『そうなんですねぇ…。そういえば、支配人の他には従業員はいないのですかぁ?』
『あぁ、そうだねぇ。従業員は私の他には、私の孫の澤村 あやめがいるぐらいだなぁ。たまに、裏にあるNPO法人自立支援施設ナチュラルハウスが手伝いにきてくれるかなぁ。もちろん、お互い様ではあるけど…社会福祉士の竹中 晴子さんとアルバイトの猿渡君が来てくれるかなぁ。あぁ、猿渡君は4階に住んでます。ちなみに私は3階に住んでますが…』
『なるほど…。ちなみに私は…』
『5階に部屋を用意したから自由に使ってねぇ?とはいえ、最近では、竹中さんが501号を使用しているので、空いているのは502号室になるなぁ。』
『だぁ、大丈夫です。ありがとうございます。』
『明日から大丈夫かなぁ?まずは午前中からの出勤で9時から11時までの2時間からで宜しくねぇ。あぁ、そうだぁ。17時から河井さんの歓迎会を行うから参加出来るかなぁ?』
「もちろんですよぉ。うれしいです。参加します。」
「では、お待ちしてます。こちらが寮の鍵になります。エレベーターで5階に上がって奥の部屋が502号室になります。それまではゆっくりとすると良いよぉ。住所登録などの手続きは明日、竹中さんに頼むから一緒に市役所に行くと良いよぉ。」
「ありがとうございます。」
「あぁ、この部屋だなぁ。502号室。」
「ガチャ。えぇ!こんなに広いのかぁ…。部屋が5部屋って…バスとトイレも別。冷蔵庫には肉、魚、野菜何でも入っているなぁ。間違えていないのかなぁ?フロントに電話を入れなきゃ。」
「すぅ、すいません。かぁ、河井です。」
「どうしましたか?」
「冷蔵庫に食材が入っていて、部屋が広いのですが…」
「あぁ、すいません。勝手な事をしました。ご不満ですか?部屋が狭い方が良いですか?食材に不足はありますか?」
「いえいえ、不満なんてないですよぉ。寧ろ、大満足ですよぉ。全部使用して大丈夫なのですか?」
「もちろんですよぉ。タンスには下着や衣類、タオル、洗濯機などを用意しましたが…乾燥機は必要ですかぁ?」
「あるとうれしいですが…」
「かしこまりました。ちょっと待っていて…」
「はい、用意しました。他には?映画とかは好きですか?」
「そうですねぇ…あると見ますが…」
「かしこまりました。」
「ありがとうございます。」
「えぇ!さっきまで、浴室に洗濯機だけだったのに乾燥機があるって…あり得ないって…。」
「すぅすぅ、すいません。フロントですか?かぁ、河井ですが…」
「どうしましたか?かぁ、乾燥機が…」
「あぁ。ありましたか?」
「はい。ありました。ビックリしましたよぉ。」
「ですよねぇ?皆さん、ビックリされますねぇ?」
「もしかして、始めてですか?」
「えぇ?どういう事ですか?」
「サザンクロスホテルは異空間なんですよぉ。見た目は廃墟に佇むホテルで建物や外観は小さなホテルでも内観は自由にカスタマイズ出来るんですよぉ。例えば、先程見たシンプルな硬いベッドを布団に変える事もユニットバスのお風呂を温泉に変える事も夜景の綺麗な風景にも変える事が出来ます。朝食もパンと玉子とサラダだけでも…ベーコンやアボカド入りのサラダに変更もあっという間になります。」
「まさかぁ?」
「もしかして、信じてません?なら、やってみると良いわよぉ。では、17時にお待ちしてます。」
「はい、ありがとうございます。」
「まさかぁ。ある訳ないでしょ。」
「暗くなれ!」
「えぇ!マジかぁ。暗くなったぞぉ。あり得ないよなぁ?ちょっと、これは手品だなぁ。外に出たら解るぞぉ。ベランダに出て見よう。えぇ?マジかぁ。暗いぞぉ。時計は13時だなぁ。昼間なはずなのに…。ちょっと、鍵を持ってサザンクロスホテルの外に出てみよう。」
「お出かけですか?フロントに鍵をお願い致します。」
「直ぐに戻ります。」
「あれぇ、昼間だなぁ。」
「もう1度、部屋に戻ろう。きっと昼間になっているよぉ。間違いないって…」
「ガチャ。えぇ!やっぱり暗いやぁ。夜になっている。元に戻れ!」
「えぇ!明るくなった。」
「ちょっと、疲れているんだなぁ。少し、ベッドで休むとしよう。16時に目覚ましをかけてっと…」
「ジリジリ ジリジリ…フロントです。河井様おはようございます。ただいま、16時になります。」
「はい、すいません寝過ごしました。チェックアウトですねぇ?」
「もう、河井さん違いますよぉ…。モーニングコールをセットしたら、従業員であってもお客様と同様の対応をしているだけですよぉ。」
「えぇ?何故ですか?」
「これは先代の教えでねぇ。すれ違うのでさえ奇跡なのだから、関わる人は誰でも運命的な出逢いで繋がっている。だからこそ、人財何だってねぇ。」
「なるほど…。そうだったのですねぇ?」
「では、ゆっくりして支度をしたら、地下にある会議室にお越し下さいねぇ?」
「えぇ?地下に会議室があるのですか…?」
「あぁ、そっかぁ、館内案内ではお伝えしてませんでしたねぇ?ラウンジにある絵を軽く右に押すと地下にある扉が出てきます。その階段を降りると地下にある会議室に辿り着きます。」
「では、お待ちしております。」
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