終章


ツインテールの女の子は、艶を失った黒い長い髪のママと手を繋いで、昨晩降った雪が踏み固められコチコチに凍った定禅寺通りの中央分離帯の遊歩道を転ばないように注意しながら、幻想的なイルミネーションの光の葉の中を歩いていました。


しかし、なかなかピンク色の電球を見つけることができません。

ママからパパは大切なお仕事のために、遠くへ行ったのだと聞かされ、いつ帰れるかわからないこともうすうす感じています。

でもピンク色の電球を見つけられればパパは帰って来れる?

ママは何も答えてくれません。


少し歩くとちょうど黒く光る「オデュッセウス」のブロンズ像がありました。

すぐそばで、クリーム色の長い髪のあおい目のとても美しい少女が、イルミネーションできらめく欅たちに向け、身体を軽くくねらさながらトランペットを吹いています。

軽くステップを踏みながら、ミモレ丈の少しふんわりした白いスカートを靡かせながら…


ツインテールの女の子にとって、はじめて聴く儚くもかなしく美しい曲でした。


ラーララララー

ラーララララー

ラーララララーララー


ラーララララー

ラーララララー

ラーララララーララー


そのクリーム色の長い髪に碧い目の少女が、ツインテールの女の子に気づくと碧い目でウインクをして、夜空を見上げるように合図を送りました。


ツインテールの女の子がイルミネーションを見上げると、光の葉の枝々の隙間から青みを帯びた夜空が覗いていました。

星たちが明滅し煌めく中、どこまでも続く黄色い線路を布団に鉄の車輪がついた電気機関車が走行しています。

犬の吠える声がして、星の明滅に合わせて電気機関車自身もまたたきながら、果てしのない宇宙へと向っています。

ひとつの宇宙の照明を追い求めて…


ツインテールの女の子は、ピンク色の電球よりも、夜空に煌めく星たちの方がきっと尊く美しいと感じました。


ママ

わたしね、わかったの

パパはきっとずっと遠くで星になって輝いているの

もしかしたら燃えている蠍の火と同じかもしれないね

………

きっとあの夜空を走る

布団に鉄の車輪がついた電気機関車は

パパの星を見つけてくれるはず

だって「宇宙の果て」行き電車だから

シーズーのシーちゃんがさがしているのだから

………



夜空から見下ろした定禅寺通りの欅並木のイルミネーションは、星のように煌めく大都市に浮かぶ「地上に舞い降りた天の川」です。


《銀河鉄道布団電車》は、ツインテールの女の子の願いを胸に、宇宙の果てまで、ひとつの宇宙の照明をさがす旅へと出発しました…






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シーと銀河鉄道「宇宙の果て」行き ユッキー @3211

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