VS 敵幹部



「お前の動き、普通じゃなかったな。何者だ! テメェ……!」



 俺の姿を見るなり、男は、殺気を剥き出しにした表情を浮かべる。


 その身長は170センチくらい。


 頭上に三発の弾痕を残した白髪の男であった。



「レナ。お前は先に逃げていろ」


「ワ、ワタシも戦います! 先程は遅れを取りましたが、ワタシだって!」



 レナが前に出ようとするので、俺は手を出して静止する。


 どう考えても目の前の男は、レナの力でなんとかなる相手ではない。


 先程倒した男たちの力を合わせても、まるで比較にならない圧を感じる。


 間違いない。


 闇の世界を生きる《逆さの王冠(リバース・クラウン)》のメンバーの中でも、確実に上位に位置する魔法師だ。



「アニキ! どうしたんスか! なんか、スゲー音がしたんスけど!」



 ふむ。


ちょうど良いタイミングで、ちょうど良い男が現れてくれたみたいだな。


 待機命令を出していたサッジが、俺の元に駆けつける。



「お前、この子を連れて、逃げてくれるか?」


「へいっ! 合点承知ッス!」



 こういう時、良くも悪くも頭の中が空っぽなサッジは、説明の手間が省けて助かるな。



「レナもそれでいいな?」


「…………ッ!」



 言葉にはしなくても、俺の思っていたことを察してくれたのだろう。


 悔し涙を浮かべたレナは、サッジと共に、引き下がってくれたようである。


 ふむ。


 ここで引き下がらないようであれば、殴ってでも戦線離脱させなければならないところだったのだが、上手くいってくれたみたいだな。


 気が強そうに見えてレナは、思ったよりも、素直なところがあるのかもしれない。



「クカカカ! 安心しろ。雑魚には興味がねえよ。カスどもに薬を売るつもりで来てみたら、とてつもねえ上物に出会えたもんだぜ!」



 どうやら男の興味は、既に俺一人に移っていたらしい。



「シャバに出てからの、久しぶりのバトルだ! せいぜい楽しませてくれよ!」



 不敵に笑った男は、魔法陣の構築を開始する。



「――――ッ!?」

 


 随分と発動が早いな。


 白髪の男は、氷の弾丸を空中に浮かべると、俺に向かって飛ばしてくる。


 勝負が長引くと面倒なことになりそうだ。


 付与魔法発動――《弾速強化》。


 そう判断した俺は、限界までスピードを強化した銃弾を放って、一気に勝負を決めに行くことにした。



「ガハッ――!」



 会心の一撃。


 敵の攻撃を掻い潜りながらも放った銃弾は、男の額を確実に捉えることになる。


 魔法を使って強化をした弾丸が頭部に命中したのだ。


 並みの魔法師であれば、この時点で決着が付いていただろう。



「クハハ……! 効いたぜ……!」



 だがしかし。


 驚いたことに男は、生きていた。


 ふうむ。


 ダメージを受ける直前に額を氷で纏うことで、致命傷を回避したのか。


 額に三発の弾痕を残しながら生きているのは、おそらく同様の手段でダメージを軽減していたからなのだろう。








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