予想外の来客
それから。
フクロウが運んできたメッセージを受け取った俺は、急ぎパラケノスに向かっていた。
ふむ。
思った通り、今日の仕事は荒れそうな予感がするな。
大小様々なコンテナと、錆びた外装の倉庫が立ち並ぶ港湾のエリアは、人通りが少なく何処となく寂れたような雰囲気であった。
「サッジ。状況はどうだ?」
一足早く現場に到着していたサッジに状況を尋ねてみる。
「うーん。今のところ特に異常なしッスね。何も変わったところはないッス」
前に掴まえた《ブルーノファミリー》という『色付き』たちから得た情報だ。
どうやら今夜、この港湾の倉庫の中で、DD(ディーツー)の取引が行われる手はずとなっているらしい。
取引相手となる組織は、俺たち《ネームレス》にとって長年の宿敵であった《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》である。
一体何故?
どうして3年前の事件から姿を見せなくなっていた《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》が、再び出没するようになったのか?
詳しい事情は分からないが、今回の仕事はその詳細を知る良い機会となるかもしれない。
「気を抜くなよ。今日は、《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》のメンバーと全面戦争になる可能性がある」
「あの、アニキ。ところで、その《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》っていうのは、そんなにヤバイ連中なんスか?」
そうか。
そう言えばサッジは、《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》のメンバーと交戦した経験がなかったのか。
「組織としての総合力では《ネームレス》の足元にも及ばない。だが、奴らの大半は、貴族に恨みを持った庶民だ。この世界では、持たざる人間ほど厄介なものはない。かつては、俺たち組織も苦しめられた」
「ふーん。でもまあ、アニキがいれば楽勝ッスよね。問題なしッス!」
なら良いのだけどな。
《|逆さの王冠(リバース・クラウン)》の全盛の時代は、《ネームレス》のメンバーの3割近くが殺されたこともあった。
格下だと思って侮ると手痛いしっぺ返しを受けることになるだろう。
「アニキ! どうやら、さっそく、ターゲットが来たようですぜ!」
サッジに言われた方角に視線を移すと、そこで俺の視界に入ったのは、予想外過ぎる光景であった。
「あれ……? なんだか薬の売人にしては、若すぎませんか? 学生服……?」
赤色のツインテールを揺らして歩く女の姿には見覚えがあった。
レナだ。
あのバカ……。よりにもよって、こんなタイミングで……。
どうしてレナが、この港湾に姿を現したのか?
思い当たる節が1つしかない
ウチの学園では、クエストと呼ばれる生徒たちが能動的にSPを獲得できる制度が存在しているのだ。
おそらくレナは、SP(スクールポイント)欲しさに、犯罪者を捕まえるつもりでいたのだろう。
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