月例試験
それから。
俺がルウのコーチを引き受けてから、2週間ほどの時間が流れた。
「なあ。聞いたか。今日の『月例試験』の内容」
「ああ。バッチリ予習済みだ。負けられないよな。今日だけは」
明らかに教室の中の様子が浮き足立っているのが分かる。
それもそのはず。
本日は月に一度の『月例試験』が行われる予定となっているのだ。
この『月例試験』とは、生徒たちが日頃の鍛錬の成果を見せるために与えられた場所となっている。
試験の結果によって、生徒たちの保有SPは大きく増減することになるらしい。
SPの獲得は、学生たちの進級、就職にも関わってくるのだとか。
クラスメイトたちが沸き立つにも自然な流れというものだろう。
「レナ。調子はどう?」
「ふふふ。バッチリです。今日の試験のために『秘策』を用意しましたよ」
秘策、とは気になる言い方だな。
俺がルウのコーチを引き受けてからというものレナは、独自の鍛錬を積んでいたようである。
「ルウ。今日は正々堂々と勝負をしましょう! あの男に何を吹き込まれているか知りませんが、ワタシが目を覚まさせてあげますから!」
ギラリと俺の方に睨みを利かせながらもレナは言う。
やれやれ。
俺はただ、コーチの依頼を善意で引き受けただけだというのに。
随分と嫌われてしまったものである。
~~~~~~~~~~~~
でだ。
通常授業が終わり、件の『月例試験』の時間がやってきた。
俺たちが訪れたのは、入学試験の時にも使用した見晴らしの良い平原エリアであった。
「静粛に。それでは今から今月の『月例試験』の説明を開始する」
月例試験の試験官を務めているのは、1Eの担任教師であるリアラである。
暫く接していて分かったのだが、リアラはこの学園の中では珍しく『貴族主義』の思考に染まっていない中立的な価値観の持ち主であった。
彼女なら入学試験の担当だったブブハラと違って、不正な行為を心配する必要はなさそうである。
「向こうに用意したものを見て欲しい」
そう言ってリアラが指さしたのは、草原の上に建てられた『的』であった。
ふむ。
入学試験の時とは違って、あの的には何か特別な仕掛けが施されているようだな。
「あそこにあるのは『試験石』と呼ばれる特別な的だ。諸君らが魔法を命中させると、その威力をスコアとして出力することができる。キミたちには、数値の大きさを競ってもらいたい」
なるほど。
入学試験の時は的に当てるだけで良かったのだが、今度は威力の高さを測るわけか。
僅かではあるが、試験のレベルも上がっているようだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます