剣術の試験(前編)



 それから。


 無事に一次試験を突破した俺は、試験官の男に連れられて学園の地下を訪れていた。


 一次試験の結果によって400人余りいた受験生は100人くらいに絞られることになった。


 正直、300人も落ちるような試験内容ではなかったような気がするが、そこに関しては気にしないでおくことにしよう。



「着いたぞ。ここが我が校の地下決闘場だ」


「「「おおお……!」」」



 集まった受験生たちから驚きの声が上がった。


 ふうむ。


 学園の地下にこんな施設があったとは、驚きである。


 円形にくり抜かれた広い空間は、かつて貴族同士の戦闘の場に用いられたとされる決闘場(コロッセオ)のような形になっていた。



「二次試験の内容は『剣術』だ。これから支給する武器を使って、受験生同士で試合を行ってもらう。各自、日頃の訓練の成果を見せて頂きたい」



 剣か。生憎とあまり剣は得意ではないんだよな。


 普段使っている武器が銃ということもあって、剣とはあまり縁のない生活を送っていた。



「それでは武器の支給を開始する。名前を呼ばれたものから、武器を取りに来るように」



 試験官の合図によって、受験生たちに次々と武器が支給されていく。



「よし。次で最後になるな。受験番号398番。アルス」



 試験官に呼び出されて前に出る。



「ふんっ。貴様。先程は、よくもワシに恥をかかせてくれたな」



 俺と目を合わせるなり試験官の男は、敵意を剥き出しにした表情を浮かべていた。



「おおかたバカの1つ覚えのように、火属性の魔法だけを練習したのだろう? たまにいるのだ。貴様のような一芸しか能のない魔法師が!」



 見当違いも甚だしい。


 だが、この期に及んで貴族以外の人間を認めようとしないスタンスには、一周回って感心してしまうな。

 


「次の試験で、ボロが出ないといいな。この世の中に、貴族より優れた庶民はいない。いてはならないのだよ」

 


 差別意識を丸出しの言葉を残した試験官は、俺に向かって鞘に入った剣を投げ渡す。



「それでは、剣術試験の対戦相手を発表する。を発表する。各自、相手となる番号の人間を見つけて申告するように」



 闘技場の二階から大きな紙が下りて、各々の対戦相手が発表される。


 ええと。俺の相手は、受験番号【004】が相手か。


 随分と若い番号の受験生が相手のようだな。



「よぉ。平民。また会ったな」



 その男に声をかけられるなり俺は、深々と溜息を吐くことになる。


 何故ならば――。


 そこにいたのは、校門の前で絡んできた|三つ星(トリプル)の貴族、デルクの姿だったからだ。


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