偽りの実力主義
「静粛に! 受験生の諸君! 中央広場に集まってくれ!」
そうこうしているうちに試験官が会場に到着したようだ。
「ワシが当学園の入学試験を取り仕切るブブハラだ。以降、よろしく頼む」
ブブハラと名乗る男は、中年太りをした三十代の後半くらいの外見をしていた。
この男が試験官なのか。
いかにも鍛錬の足りていなそうな姿をしているのだが、果たして正確な実力を測ることができるのだろうか。
「我が校の理念は徹底した『実力主義』だ。よってキミたち受験生には、ケチな筆記試験を受けてもらおうとは思わない。合否の判定は、二つの実技試験の結果を以てのみ測ることにする」
実力主義か。
好きな言葉ではあるのだが、この学園の合格者の大半は、高ランクの貴族らしいからな。
真偽のほどは怪しいものである。
「向こうに用意したものを見て欲しい」
そう言ってブブハラが指さしたのは、草原の上に建てられた『的』であった。
ふむ。
見たところ何の変哲もない金属製の的のようだが、一体コレでどんな試験を行うというのだろうか。
国内最難関と称される魔法学園の入学試験が、どの程度のハードルに設定されているのか。
純粋に興味があるな。
「あそこに魔法を飛ばすことができたらキミたちは合格。できなければ不合格。どうだい。シンプルだろう?」
え? 飛ばすだけでよいのか?
このオッサンは一体、何を言っているのだろうか。
「ここから1人3回まで魔法を発動して、あれに当ててみろ」
単に魔法を飛ばして的に当てるだけなら、誰にでもできるような気がするが。
少なくとも俺の場合、物心付いた時からそれくらいの魔法は心得ていたと思う。
「嘘だろ……! 的って、あんな遠くにあるじゃねえか!?」
「流石は天下の王立魔法学園。試験のレベルも恐ろしく高いのだな」
こ、こいつらは一体何を言っているのだろうか。
あんな遠くって、せいぜい20メートルくらいしか離れていないぞ。
そもそも動かない的に当てることに何の意味があるというのだろうか?
実戦では止まってくれている相手などいないのである。
相変わらず貴族の考えていることは、よく分からないな。
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