第54話 感動の再会?
2日連続PVが4000回でした。
読んでくれた方ありがとうございます。
レビューも大幅に増えました。重ねて感謝申し上げます。
皆様の年始の暇つぶしになってくれたら、有り難いです。
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タタタタタタタッ!!
魔王と紹介されたサリアは、僕に向かって走ってくる。
久しぶりの再会だった。
どうやら息を切らして走ってくるほど、僕に会いたかったのだろう。
「ユゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウリィィィィィィイイイイイイ!!」
サリアの高い声が響く。
その瞬間、飛んできたのは、彼女の身体じゃない。
小さな拳だった。
「魔王
サリアの拳が見事、僕にヒットする。
そのままキュイーンと空気を切り裂き、僕は岩肌に激突した。
「ゆ、ユーリ! 大丈夫か? き、貴様――――」
「待て!」
アストリアが激昂する。
だが、それを制したのは、サリア自身だった。
「ユーリ? 貴様、何をしている? いつものお前なら、小賢しい鍵魔法で回避するところであろう。何故、我の拳をまともに受けた。我が気付き、直前で力を抜いたから良かったものの……。0.1秒遅かったら、貴様死んでいたぞ」
「これぐらいはされて、当然だよ。君を1人にしてしまったからね」
「べ、別に寂しくなんかなかったぞ」
「僕は寂しいなんて一言も言ってないんだけどな……」
すると、サリアの頬がカッと赤くなる。
「うるさい! うるさい! うるさい! おのれ! やっぱり今の一撃で、忌々しいキーデンス家の血を断っておくべきだった」
「大丈夫。僕には妹がいるから。前に話さなかったっけ?」
「お前の家族関係などこれっぽっちも興味ないわ。そういえば、昔クッキーを差し入れてくれたお前の母親は息災か? 確か病弱であったろう」
「興味ないって言ってて、舌の根も乾かないうちに、母親のことを尋ねるってどういうことだよ」
「黙れ、ユーリ。いちいち揚げ足を取るでない。我を誰だと思っておる。魔王じゃぞ」
「うん。知ってるよ。骨身に沁みてるから大丈夫。ちなみに母さんは元気だよ」
「それよりもだ! ユーリよ、あれを出せ? 持ってきているのであろう?」
「持ってきてるよ」
僕はあらかじめ岩陰に隠しておいた物を差し出す。
厚手の紙の袋を開けると、ショートケーキが現れた。
「おおおおおおおおおおおおお!」
サリアは目を輝かせる。
待ちきれなかったのだろう。
僕が差し出すフォークを無視して、手掴みで持ち上げる。
そのままあんぐりと大きく口を開けて、3口で食べてしまった。
「うまい……。けど、不味い……」
「どっちだよ……」
「ふん。人間の甘味なぞ、我の舌に合ってたまるものか! 精々腹の足しじゃ」
「目を輝かせて、3口で食べた人がよく言うよ」
「人ではない。我は魔王じゃ」
ああ……。そうだったね。
「ところで今日のケーキはうまかった。どこの甘味だ? フーゼンか?」
フーゼンは王都では有名な甘味処だ。
元々は昔ながらの饅頭を売る店なんだけど、サリアはいたくフーゼンが作るケーキにこだわっていた。
もちろん、ケーキも美味しい店だ。
「その通りだよ」
「くっくっくっ……。やはりな。あそこは饅頭も作る故、甘味というのがわかっておる。この上質な甘さは、フーゼンだとすぐ気付いたわ」
この世のどこに、人間の甘味に詳しい魔王様がいるんだよ。
「サリア、手に生クリームがついてるよ――って、怪我してるの?」
サリアの右手が少し鬱血していた。
青白い肌だから余計いたそうに見える。
「心配するな。これぐらい軽傷じゃ。お前の間抜けな後任者のおかげでな。あやつめ、無理矢理扉を閉めおって! おかげで手を挟んでしもうたわ」
「後任者って、ゲヴァルド? もしかして、サリア……。その腹いせで?」
「本気で言うておるなら、今度こそ全力で殴るぞ、ユーリ」
サリアは鋭い視線を僕に送る。
こんなに小さくても、サリアは魔王だ。
その双眸は言うなれば、魔眼である。
その気になれば、人を殺すことだって可能だろう。
「あれは、あやつの自業自得じゃ。怪我を負った時、我の魔力の一部が、体内に入り込んだのだろう。普通の人間であれば、何ともない。そもそもお主らは、毎日我の魔力を吸っているのだからな。通常時よりも濃い魔力を吸い込んだところで、何ともないはずじゃ」
「けど、ゲヴァルドは違った」
「よっぽど精神的に薄弱であったか。何か病気を患っていたかというところじゃろ」
「あれは事故だった、と?」
質問したのは、アストリアだ。
化け物になったゲヴァルドを見たのは、つい先日。
まだまだ頭の中に、鮮烈に残っているのだろう。
醜く歪んだ人であって、人でない者の姿を。
「事故であろうと、なかろうと我には関係ない。人が死んだ。そしてそのものは多くの人間に迷惑をかけた。良いではないか。我は魔王だぞ。愉快極まりない。笑っても誰も文句を言うことはあるまい」
サリアは奥歯を剥き出し、魔王らしく笑う。
可愛く見えても、やはり人類とは相容れない。
その邪悪さを包み隠さず、その場にいる人たちに見せつける。
「それとも、聖剣使い……。お前が、我を断罪するか?」
「私のことを……」
「お前のことは知らぬが、お前に宿っている忌々しい聖霊のことはよく知っておる。昔、我を倒した勇者も、纏っておったものだからな。……さあ、来い、聖剣使い。食後の運動にはちょうど良かろう」
「全身――――」
【
僕は鍵魔法をかけた。
殺意を漲らせたサリアに向けてだ。
「はい。そこまで……。もう! 相変わらず喧嘩っ早いんだから」
僕はフッと息を吐く。
だが、事態はこれで収拾しない。
油を差していない撥条時計のように、カクカクとサリアは動き出す。
さらに、その口からは声が聞こえてきた。
「こ、ら、! 鍵、魔、法、は、禁、止、と、い、っ、た、じ、ゃ、ろ」
そう言えば、そんな約束をしてたっけ?
それじゃあ、
「確かに言ったね。でも、約束を破ったのは、サリアの方だ。人を無闇に挑発したりしない。争いの種を蒔かないって約束しただろ」
「うっ……、で、で、も……」
サリアは涙目になっている。
彼女の弱点は、ズバリ鍵魔法だ。
魔王である自分が、鍵魔法によって拘束されるのが、いやなのだそうだ。
よっぽど屈辱的なことらしい。
とはいえ、僕の鍵魔法にかかって、【
「あの~~。ちょっといいですか、ユーリ」
ずっと僕とサリアのやりとりを見ていたルナが、手を上げる。
「多分、この場にいる人がずっと訊きたいと思ってることを質問するのですが? あの……その…………大変いいにくいことなのですが、ユーリと魔王サリアさんは、とっても仲良しなのですか?」
「そ、そ、そ、そ、ん、な、わ、け、な、か、ろ、う、!!」
鍵魔法にかかりながら、全力でサリアは否定する。
だが、僕は「ははは」と苦笑しながら、言った。
「仲良しっていうと、ちょっと違いますが……。1番近いところで言うと、ライバル、うん? 戦友? えっと……。なんかそれも違うんだよな」
「簡単に言うと、保育士とクソガキよ」
迷ってる僕に助け船を出したのは、エイリナ姫だった。
「エイリナ、もしかしてあなたは知っていたの?」
「黙っててごめん、ルナ。立場上、うちの鍵師と魔王が仲がいいなんて、口が裂けていえないもの。このことを他の階層の盟主に知られたら、何を言われるかわからないし。お父様に報告してない。知ってるのは、私とユーリだけよ」
すると、エイリナ姫が皆の前に立つ。
「ユーリが説明するより、多分あたしが説明する方が早いから、言うんだけど。心して聞いてね」
エイリナの言葉に、アストリア、ルナ、さらに護衛として付いてきた近衛たちが、息を呑む。
僕も側で、その説明を静かに聞いた。
「あのね。魔王の封印は――――」
もう3年前に解かれているのよ……。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
みなさん、仕事始めってどれぐらいですか?
早かったら明日? 明後日ぐらい?
ともかくそこまでは複数投稿しようかなあって思ってます。
引き続き応援よろしくお願いします。
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