第42話 告白

 本日、ものすごい勢いで作品フォローは増えてる。

 日曜日ということもあるかもですが、とてもありがたい。

 是非楽しんでもらえると嬉しいです。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~



 数十分前……。


 僕の姿は宮廷の前にあった。

 息と服装を整え、守衛に話しかける。

 守衛は僕の顔を見ると、懐かしそうに笑った。


 事情を話し、中に入れてもらう。

 宮廷に勤めていた時に何度も歩いた道を歩きつつ、僕はいよいよ宮廷内へと入っていった。


「よく来たな、ユーリ」


 待ち構えていたのは、ドラヴァンだった。

 その周りには、ドラヴァンの子飼い私兵が群がっている。

 すでに僕は囲まれていた。


 衛兵の姿はあまり見られない。

 どこかひっそりとしていた。


 周囲の状況を確認した後、僕はドラヴァンに向き直る。

 くぐもった笑いを響かせると、ドラヴァンは蛇のように笑う。


「飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな。まさか自分で宮廷にやってくるとは……」


「これはどういうことですか、大臣」


「お前に大臣と呼ばれる覚えはないのだがな、ユーリ・ヴァン・キーデンス……いや、今はユーリ・キーデンスであったか?」


 やれ、とばかりにドラヴァンは首を振る。

 一斉に私兵たちが襲いかかってきた。

 僕は無抵抗のままその様子を見ている。

 あっという間に、私兵たちは僕を縛り上げた。


 何もしなかった僕を見て、ドラヴァンは眉間に深い皺を寄せる。


「解せんな……。抵抗しないのか? 全く……。貴様の行動は読めぬ。宮廷に来たかと思えば、今度は無抵抗か。もしかして自分の罪が軽くなると期待して、参内したのではないだろうな? くくく……。残念だったな。それは筋違いだ。お前はここで処刑される」


「違います……」


 僕は静かに言った。

 ドラヴァンの眉間に皺が寄る。


「ふん。往生際が悪――――」


「そういうことじゃない。僕は減刑を望むわけでもなく、無実の罪を訴えるために来たわけでもない……」


「はああああああ? ならば、何をしに来た? おめおめと私に掴まりに来たのか? 違うだろう。お前は姫勇者に会いに来た。あの女と結託し、私を――――」


「それはエイリナ姫が望むことであって、僕が望むところじゃない。あなたの陰謀も、国に蔓延る膿も、今の僕にとっては関係ない」


「では、何をしに来た、ユーリ・キーデンス」


「僕は――――」



 謝りに来たんです……。



「…………はっ?」


 ドラヴァンは大きく目を見開く。

 周りで聞いていた兵士達も戸惑っていた。


「僕は、僕は正式に宮廷鍵師をやめたいと思います」


「なっ! お前は何を言っている!?」


 宮廷に来るまで、僕はずっと考えていた。

 僕が何をすべきか。

 今まで何をしていたのか。

 これから何をするべきなのか。


 ずっと、ずっとずっと考えていた。


 宮廷鍵師の仕事は重要だ。

 国家に関わることだろう。

 それはきっとやめることは難しい。

 合い鍵を作るひきつぐなんて、早々できないだろう。


 宮廷鍵師という仕事から離れてやっとわかった。

 自分がやってきたことの大変さ。

 異常さにようやく気づけた。


 そこにかかわる人と、その上で生活している人の大切さも発見することができた。


 勿論、大臣の蛮行は許すことができない。

 でも、皮肉にもそのおかげで、僕は広い視野を手に入れた。


 多分、きっと今宮廷の地下で並々ならぬ事態が起きてるはずだ。

 宮廷の近衛が出払っているのは、そう言うことだろう。


 今、僕が行って事態を収めるのが先決なのだ。

 きっとそれが1番のハッピーエンドになる。


 けれど、僕は知ってしまった。


 アストリア・グーデルレインという女性を知ってしまった。

 強く、気高く……。

 まるで1匹の獅子のようであるのに、時々妙に女の子らしい表情を浮かべるアストリアのことを知ってしまったんだ。


 だから、僕は決めた。

 僕が成すべき事を……。


「大臣……。いつか誰かに捕まるあなたに行ってもしょうがないことかもしれないけど、これだけは覚えておいて下さい」



 僕は目指します。未踏の領域『第10層』を……。



「アストリアとともに……。僕は目指します!」


 きっと僕がいなくても彼女は、第10層を目指しただろう。

 アストリアは強い女性だから。

 放っておけないとか、そういう感情じゃない。

 狭い世界にいた僕をアストリアは引き揚げてくれた――そんな恩でもない。


 そのすべてにおいてアストリアだからこそ、僕は付いていきたい。

 アストリアと2人で、第10層を目指したいってそう思えたんだ。


「だから、もう僕は宮廷には戻りません。戻れません……」


「な、何を言っておる! お前に戻る場所などない! ここで即刻縛り首にして――――」



 大変です!!



 宮廷へとやって来たのは、先ほどの守衛だった。

 息を切らし、慌てた様子で王都の方を指差す。

 今、僕がどんな状態になっていることすら構わず、守衛は告げた。


「王都の方で巨大な爆発が……。今、街の衛兵が都民の避難を行っていると」


「ええい! うるさい! 今はそれどころでは――――」


「場所は!? 場所はどの当たりですか?」


 縄で縛られたまま、僕は叫んだ。

 そこでようやく僕の状況を守衛は知ったが、僕の形相を見て、答えを告げた。


「多分、あの辺りはギルドがある――――」


「――――ッ!!」


 僕は息を呑む。


「行かなきゃ……」


「何を言っている! ここからギルドまではかなり――――」



 【開けリリース



 その瞬間、僕の身体が青白く光る。

 僕の姿を見て、周りの私兵やドラヴァンはおののいた。


「なんだ? その光は――――」


 僕はさらに鍵魔法を使う。


 次の瞬間、ペタンとドラヴァンは尻餅を付いた。

 額からは大量の汗が滲み出ている。


「あ、あやつは一体、何者なのだ…………」


 声を震わせた。


 おののくドラヴァンの視界から、僕は忽然と消えていた。



 ◆◇◆◇◆



 そして僕は戦場へとやって来た。

 宮廷から再び走って、参上する。

 絞め上げられていたアストリアを見た瞬間、僕の中でさらに強い感情がわき上がった。


 身体が勝手に動き、腰のナイフを抜く。

 【開けリリース】で跳躍すると、彼女に絡まった黒い剣のようなものを切り裂いた。


 落下を始めたアストリアをなんとか受け止める。

 なんだか久しぶりの見たような気がするアストリアの顔は、当然驚いていた。

 それがまたチャーミングだったのだ。


「ユーリ、何故!? 君は、宮廷に戻ったはずじゃ……」


「違いますよ。僕が居るべきはここです」


 僕は安心させるようにアストリアに微笑む。

 そして告白した。


「アストリア――――」



 僕は、あなたのことが好きです。



~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


本日はここまでです。

引き続き更新して参ります。

面白い、と思っていただけたら、

★★★のレビューをいただけると嬉しいです。

よろしくお願いしますm(_ _)m

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