第38話 魔砲術
失礼しました。
これにて、なろう投稿と同時進行になりました。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
鎧の隙間から見える白い肌。
まだあどけなさが残る童顔と、綺麗な金髪のツインテール。
武装は胸当てと、ガントレット。
腰には弾帯のようなものを帯びている。
やや傲慢とも呼べる瞳を光らせ、姫勇者エイリナはギルドの入口に立っていた。
「ぐあああああああああああああああ!!」
吠えたのは、死の淵から蘇った冒険者だ。
他の者と同じく頸動脈を切り裂かれ死んだらしく、傷口にはあの黒い膿が瘤のように膨らんでいた。
それも2体同時にだ。
ギルドの入口に立っていたエイリナに襲いかかった。
「
エイリナが手を掲げ、呪唱する。
その瞬間、現れたのは杖のように細長い武器だ。
だが、杖のように柄を持つのではなく、石突きの先を襲いかかってくる冒険者に向けた。
まるでボーガンのように狙いを定めると、筒状になった石突きの先が、赤く光る。
【
タンッ、と乾いた音を立てると、冒険者の頭を打ち抜いた。
高速で打ち出された炎の弾は、冒険者の頭と胸付近を消滅させる。
先ほどまで五月蠅いぐらい吠えていた冒険者は、ついに物言わぬ骸となり、その場に倒れた。
だが、冒険者はもう1人いる。
エイリナは杖を返し、狙いを定めた。
腰に巻いた弾帯から弾を取りだし、杖に込める。
再び冷たい声で呪唱した。
【
もう1人も仕留める。
先ほど同じく胸から上が消滅すると、冒険者は沈黙した。
「なんか反射的に撃ったけど、これ何? 冒険者の中には荒くれ者が多いってのは、知ってるけど、一国のお姫様に飛びかかるなんて世も末ね」
「エイリナ、挨拶は抜きだ! その
アストリアは2人組の黒ずくめに視線を向け、剣を構える。
状況はわからないエイリナは、金髪を揺らした。
「
「わからん! 私も今会ったところでな」
「ふーん……」
エイリナはアストリアが
よく観察すると、見覚えのあるものが、
つまり傷口の黒い膿だ。
「あれ? もしかして、地下の黒い塊?」
そう。よく似ている。
封印の扉から出てくる黒い塊と色も雰囲気も酷似していた。
「エイリナ、何か知ってるのか?」
「悪いけど、説明は後にさせて……。まさか人を探しにきたら、こんな厄介なことに巻き込まれるなんて」
「お互い……。色々事情を説明する必要がありそうだな」
「そのようね。今はともかく、この気持ち悪いヤツらを倒すしかないわ」
エイリナはアストリアに背中を預け、杖を構える。
アストリアもまた剣を構えた。
「正面は受け持つ。他は任せるが構わないか?」
「何よ。あんた、楽をする気?」
「なら変わるか?」
「いやよ。そっちもすっごくやばそうだし」
「じゃあ、交渉成立だ」
「建物を壊さないでね。あんたの聖霊魔法は、本気出すとこの建物だけで済まないんだから……」
「その言葉、そっくり返すぞ」
タンッ!!
足音が重なる。
先に仕掛けたのは、
一斉にアストリアとエイリナの方に向かって、飛びかかる。
だが、2人は慌てない。
むしろ不敵な笑みすら浮かべていた。
先に呪唱したのは、エイリナだった。
弾帯から数弾の弾を取り出す。
それをすべての杖の中に込めると、天井に向けた。
【
ドンッと1発の弾が打ち上がる。
それはギルドの屋根を突き破り、外へと飛び出した。
誤射……。
あるいは動揺による発砲か。
否である。
一旦ギルドを飛び出した弾は、空中で6つに分裂する。
すると、弧を描きながらギルドの方に戻ってきた。
その瞬間、襲いかかってきた
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」
断末魔の悲鳴に見た叫びが響く。
すべての弾は
「こんなもんね」
エイリナは得意げに鼻を鳴らす。
くるりと彼女が
B級冒険者すらおののかせた
『姫勇者』と呼ばれる彼女だが、その得物は魔法だ。
特にエイリナオリジナルと呼ばれる『
方法はシンプルだ。
圧縮された魔力が入った弾丸に、魔法を呪唱し撃ち出すだけ。
それでも魔砲を形作る成形魔法と、撃ち出す魔弾の性質、さらに高速で射出するための魔法――少なくとも3つの魔法を同時詠唱しており、やはりそこに『姫勇者』と呼ばれる非凡な才能を示していた。
「さて……」
エイリナは振り返った。
剣を構えたS級冒険者に視線を向ける。
目を向けた瞬間、飛び込んできたのは目映い光だ。
黒ずくめ2人の剣戟を抑えつつ、アストリアは魔力を持った剣に集中させていた。
「ちょっ! アストリア!!」
エイリナは叫ぶ。
だが、遅い。
すでにアストリアの魔力は解放された。
「風よ――――」
【
それは風属性の攻性魔法の中でも、初歩レベルにある魔法だ。
比較的に威力も小さく、厚めの鉄盾ぐらいであれば耐えうるほどである。
だが、アストリアは風の聖霊と契約している。
その彼女が生み出す風の刃は、普通の魔法士とは全く異なる。
ジャンッッッッッッッッッッッ!!
斬ったというのには、それはあまりに禍々しい音だ。
まるで溶けた鉄を、鋭い氷の剣で切り裂いたかのようであった。
黒ずくめの男が止まる。
まるで彫像のように。
右に剣を払ったアストリアは、空気を切りつつショートソードを鞘に収めた。
直後、黒ずくめの身体に斬った痕が浮かび上がる。
粉みじんとなり、消滅するのだった。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
本日もたくさんの方の読んでいただきありがとうございます。
すでに今日だけで10以上の★をいだきました。
感謝を申し上げます。
もうちょっとで★が200になりそうです。
引き続き頑張りますので、応援の方よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます