第28話 カッコよかった
昨日pvが3000件を突破してました。
朝起きてひっくり返ったw
ありがとうございます。引き続き頑張ります!
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天使……??
薄く目を開けると、少女が泣いていた。
生憎と翼はなかったけれど、綺麗な銀髪と緑色の瞳が揺れている。
その瞳からポタポタと涙が落ちていたけど、それすら美しいと思ってしまった。
死んでしまったのかな、と思ったけど、そうではない。
少女の頬に手を伸ばすと、確かな感触があり、涙はとても熱かった。
「ユーリ!!」
アストリアは叫ぶ。
そこでようやく僕の意識は、覚醒した。
「アストリア? なんで泣いているんですか?」
「バカ! ユーリのバカ! 君が私に無茶を強要したからじゃないか!?」
ああ……。
なんとなく思い出してきた。
僕はホブゴブリンを穴に落として、僕も落ちて……。
その時、アストリアの聖剣の力を浴びたんだ。
僕は咄嗟に全身を【
「そうか。うまくいったんだ……」
「確かにうまくいった……。でも、あまりにも危険すぎるぞ。私の聖剣の出力が鍵魔法の効果を上回ったらどうするんだ?」
「でも、アストリアは撃ってくれた」
「それは……」
「ありがとうございます、アストリア。僕を信じてくれて」
アストリアの瞳の中の僕は笑った。
少し頬を赤くしたS級冒険者の少女は、うっと身を引く。
その表情のまま明後日の方向を見て、「バカ」と小さく罵倒する。
先ほどの美しい少女は、可愛い少女に変わっていた。
その姿を見て、また笑ったのは、僕だけではない。
「お二人とも本当に仲がいいんですね。妬けてしまいますわ」
ルナミルさんだ。
怪我の部分は変わらず痛々しいが、僕に向かって笑顔を向けている。
ところで妬けてって、どういうこと?
「ですが、アストリアさんはともかく……。ホブゴブリンと戦った手並み、出力が制限されているとはいえ、聖剣の一撃を耐えたあの魔法……。ユーリさん、あなたは何者ですか?」
「何者って言われても……」
僕は思わずアストリアと目を合わせる。
何故か笑気がこみ上げてきて、アストリアと同じく笑ってしまった。
「冒険者ですよ。そして、アストリアの仲間です」
「…………そう。そうですか? わかりました」
こうして僕たちはルナミルさんを連れて、第1層へと戻っていった。
ダンジョンの入口に辿り着くと、朝だった。
どうやら僕たちは夜通し戦っていたらしい。
ダンジョンの中だと時間感覚が狂う。
まさかいきなり朝日を拝めるとは思わなかった。
ダンジョンの近くにある救護施設に駆け込み、ルナミルさんを連れて行く。
かなり危ない状態だったらしいけど、僕の処置が良かったらしい。
ついでに言うと、鍵魔法で止血したというと、治療師の人はとても驚いていた。
しばらく付き添っていると、王国の正規兵たちがぞろぞろとやってくる。
ルナミルさんを迎えに来たのだ。
「どうやら、ここでお別れのようです。短い間でしたが、お二人にはお世話になりました」
ルナミルさんは丁寧に頭を下げる。
王国の正規兵の前で天翼族の人にそんなことをされて、僕は思わず恐縮してしまった。
「お二人は下層を目指すのですか?」
「はい」
「でしたら、もし第7層に来られた際には、わたくしの名前を出して下さい。
「それは一体どういうことですか、ルナミルさん?」
「ルナ……とお呼びいただいて結構ですよ、
「ル…………ナ………………?」
「親しい友達はそう呼びますの」
「親しい……」
と聞いて、僕は思わず頬を赤らめる。
ジト目で僕のことを見ていたのは、アストリアだ。
「ならば、私も呼ばせてもらおう。天翼族のルナ……」
「別に構わないですよ、
「はい。是非――」
というと、ルナの方から手を差し出してきた。
だが、握ったのはアストリアだ。
お互いムッと睨み付ける。
何か火花のようなものが見えた。
こ、怖い……。
僕は2人が握った手の上に、自分の手を置いた。
別れの挨拶を済ませると、サーゲイを引く客車に乗って、王都へと走り出す。
客車の窓を開けると、ルナは手を振り、僕たちもそれに答えた。
「天翼族の人たちって、結構人族を見下してるイメージがあったんですけど、ルナはそんなことなかったですね」
「ユーリ……」
すると、突然アストリアは真剣な表情になる。
「ダンジョンでの作戦のことだが……」
「は、はい……」
「ルナの前では言わなかったが、出来ればああいう作戦は控えてほしい。できれば、仲間に向かって、剣を向けたくないのだ……」
「あ…………」
そうか。
アストリアは仲間に裏切られて……。
まだ彼女の中で、仲間に剣を向けることへの抵抗があるんだな。
「すみません。僕、勝手な真似を……」
頭を垂れる僕に、アストリアはポンと手を置いた。
ざわり、と音を立ててなで始める。
「あ、アストリア……」
「これから改めてくれればいい。あと、もう1つ言わなければならないことがある」
「な、なんでしょうか? あと、頭を撫でないで。その恥ずかしいというか」
……頭が上げられないというか。
「カッコ良かった……」
「え?」
「それだけだ。さあ、私たちも王都に戻ろう」
もうその時にアストリアは、朝一番の王都行きの乗り合い馬車へと向かっていた。
カッコ良かった――。
そう言った時の彼女はどんな顔をしていたのだろう。
その確認もできないまま、僕は王都へと戻る帰路についた。
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ホブゴブリン編これにて終わりです。
そして、王都に帰ったユーリが待ち受けるものは?
いよいよ最終章へと向かっていきます。
よろしくお願いします。
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