第18話 国王クリュシュ
体調不良で朝の更新ができませんでした……。
でも、なんとか昼と夜だけでも……(がくっ)
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真っ赤な絨毯の上で、内大臣ドラヴァン・フォーン・ディケイラは膝を突いていた。
周りは国旗を掲げた近衛たち。
正面に盾と聖杯が描かれた国章が大きく掲げられている。
その下で、玉座に座っているのはこの国の王だ。
クリュシュ・ゾル・ムスタリフ。
第87代ムスタリフ王国国王である。
クリッとした団栗眼。
綿を彷彿とさせるモコモコした白髭。
上背はあまりないものの、今でも玉座の上でピンと背筋を立てて座っている。
そのクリュシュは、先頃起きた地下の封印の件について内大臣から報告を受けていた。
「――――以上が顛末にございます」
内大臣は軽やかな口調で報告を告げた。
「うむ。ご苦労だった。そなたの息子ゲヴァルドといったか、新人とは思えぬ良き働きをしているようだな」
国王は頷く。
周りで聞いていた近衛の眉が、ピクリと動いた。
その機微に気付かぬまま、2人の話は続く。
「ありがとうございます、陛下。不肖の倅ながら、何とかお務めを果たしておるようです」
「うむ。だが、お主の息子が怪我をしたという報告を聞いたが、大丈夫か?」
国王が口を開くと、そこまで笑みを浮かべていたドラヴァンは逆に口を結んだ。
王の言葉を賜りつつ、周囲の近衛の方に視線を向ける。
ゲヴァルドの傷に関しては、報告していなかった。
近衛の誰かが王に漏らしたのだろう。
「前任者――確かユーリと言ったか。かの者がいた時には、こんなことはなかった。彼を呼び戻してはどうかな?」
「そ、それには及びません。怪我も大したことはありません。むしろ名誉の負傷かと」
「そなたの息子が大役を務めているのは理解しておる。だが、新人の鍵師が唐突に魔王の封印の任に就くのは、例のないことだ。別に余は、そなたの息子から仕事を取り上げようというわけではない。ユーリをそなたの息子の指南役にしてはどうだろうか?」
おお、と言うように、聞いていた近衛の一部が口を開く。
一方ドラヴァンとしては面白くない話だ。
建前としては、王の話を熱心に聞く振りをしながら、内心では苦虫を噛むような思いで聞いていた。
「陛下の献策、実に見事だと下臣は考えます」
「ふむ」
「ですが、陛下。実はお耳に入れていないことがありまして」
ドラヴァンはユーリが予算の一部を横領していた疑惑があることを、ここで初めて明かした。
「誠か……」
「先日、ヤツの屋敷にあるものを片っ端から接収して、証拠を探しているところです。時間の問題かと……」
「信じられぬな」
国王は吐息を漏らし、モコモコの白髭を撫でた。
「心中お察しいたします。ですが、ヤツめはかなり甘い汁を啜っていたようです。ばれないと思っていたのでしょう。今期の予算として、1000万ルドを要求してきました」
「い、1000万ルド。小さな公共工事並ではないか?」
「はい。一部門が抱える予算としては、あまりに膨大です。もちろん突っぱねました。そこから調べたところ、ヤツが予算を横領している疑惑が出てきたのです」
「ふむ……」
「魔王の封印は、国民を守ることと同様に我らに課された使命です。そのような事業を盾にし、多額の予算を請求、そして横領するとはなんとも嘆かわしい。国民の血税をなんと考えておるのか。これまでの功績があったからこそ、放逐しましたが、今思えば縛り首にしてやれば良かったです」
最後にゲヴァルドは首を絞めるようなパフォーマンスを見せ、国王に訴えた。
その国王は白髭をなで続けている。
団栗眼は少々悲しげに見えた。
「嘆かわしいことだな。エイリナが聞いたら、なんと思うか?」
「エイリナ……? かの『姫勇者』様の名前が、何故ここで?」
「エイリナはあのユーリという宮廷鍵師を非常に高く買っていた。何度か彼の話を聞かせてもらったものだ。とても優秀な宮廷鍵師だと……」
「チッ!」
「どうした内大臣……」
「いえ。何でもありません。……ところで王よ。そろそろ謁見時間が過ぎている頃かと。後ろに控えている者もおります故」
「そうであったな。ゲヴァルド、報告ご苦労だった」
「はっ……」
ドラヴァンが大人しく謁見の間を辞した。
待合いの家臣に向かって、ふんと鼻息を漏らしながら、足早に去っていく。
宮廷の長い廊下に出ると、ドラヴァンは爪を噛みながら速度をさらに上げた。
「くそっ! あの小僧! 『姫勇者』とも繋がっていたのか。あの
ゴォォォォオオオオンンンンン!!
宮廷が大きく揺れる。
窓がバリバリと音を立て、一部は割れて砕け散った。
あちこちから悲鳴が聞こえ、給仕の女が部屋から飛び出してくる。
地下から突き上げられるような揺れ。
ドラヴァンはハッとなって下を向いた。
「くそっ! 馬鹿息子め!! 全然封印できていないではないか!!」
吐き捨てるのだった。
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昨日もたくさんの方にお読みいただきありがとうございます。
この作品では初めて1日のpv数が1000件をこえました。
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