第14話 宮廷はどうなっている?
カラカラと荷車の木車が、轍を進んでいく。
幌付きの荷車を引っ張るのは、サーゲイという馬と魔物の混血動物だ。
鶏を大きくしたような動物で、鋭い嘴にモフモフの羽毛が特徴的な陸の移動手段である。
移動手段として馬も使われることもあるが、馬は魔物の臭いを嫌う。
そのため活躍の場所は畑や街の中だけと、限定されていた。
そのサーゲイが向かうのは、王都で1番近いダンジョンだ。
荷車の中には、屈強な冒険者たちがいて、その中に僕とアストリアさんの姿があった。
僕が離れていく王都の方を見ていると、アストリアさんが僕の顔を覗き込んだ。
「ユーリくん、残してきた母上と妹君が心配かい?」
「え? あ、いや……。それもありますけど」
「けど――?」
「今、宮廷はどうなってるのかなあって……。あははは……。駄目ですよね。前職の心配なんかして」
「そんなことはない。君にとっては、思い入れの強い仕事だったんだろう」
「家業みたいなものでしたからね。……それでも自分なりに頑張ってきたんですけど」
「宮廷鍵師とは、具体的にはどういう仕事だったんだい?」
「ここだけの話にしてほしいんですけど……」
僕は声を潜め、他の冒険者に聞こえないようにアストリアさんに囁いた。
「魔王の封印を担当していました」
「ま、魔王の封印……!!」
S級冒険者は珍しく悲鳴じみた声を上げた。
アストリアさんは声を上げた後で、あっと慌てて口を塞いだがもう遅い。
ギロリと冒険者がこちらを向いたが、何か言葉を発することはなかった。
「す、すまない。思わず――――」
アストリアさんは頭を垂らす。
まあ、そりゃビックリするよね。
「なるほど。君が意外と度胸が据わっているのは、毎日魔王と相対しているからだな」
「そんなに度胸が据わってるように見えますか、僕?」
自分では全然実感がないんだけど……。
それならよっぽどアストリアさんの方が据わってるよ。
あれだけの冒険者に凄まれても、顔色を1つ変えなかったんだから。
「そうなると、君の後任者が大変そうだな」
「はい。引き継ぎもないまま解雇されたので……。まあ、魔法学校を首席で卒業して、鍵師になったんだから、優秀だと思いますけど」
「待て、ユーリくん。首席で卒業したなら、なんで不人気な鍵魔法なんて覚えるんだ?」
「さあ……」
僕は首を傾げる。
アストリアさんは何か色々なものから目を背けるように前を向いた。
「ま、なるようになるか……」
「なるでしょう」
僕はまた宮廷の方を見つめたが、すでに地平の影へと消えていた。
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本日もたくさんの方に読んでいただき、
並びに★の方もいただき感謝申し上げます。
とても励みになります。
明日も更新して参りますので、よろしくお願いします。
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