71. 全てが終わった時

「ごめんなさいね。強引に。だけど、命をかけてもらった者として、聞いて欲しいことがあって」

 

  ジュリーは、寂しそうに微笑む。

  エリーズは、真剣な顔をして頷いた。


「あのね、私は、日本という国で生まれたの」


  独特のハスキーボイスが紡ぎ出した言葉に、エリーズは目を見開いた。まさか、彼女も転生者だったなんて。


「私は、そこでシナリオライターとして、働いていた」


  ゆっくりと、頷く。


「シナリオライターっていうのは、ゲームとかを作る仕事でね。ある日私は、SIX O'clockっていう、ゲームを作ってたんだけど。納期に間に合って、喜んでお酒飲んで歩いてたら、車にひかれて死んじゃったの」


  まさかのトラ転らしい。というか、この流れでいけばきっと……


「それで、信じてもらえないかもしれないけど、ここ、そのゲームの世界なのよ」


  予想が当たった。こんなに身近に、自分と同じような

 転生者がいたなんて。もはや、どう反応したらいいのか分からないけど。あと、元々ここが乙女ゲームの世界と分かっていただけあって、ショックは少ない。


「分かります」


  とりあえずエリーズは何度も頷いた。


「私も、転生してきた身なので」


  今度はジュリーが、目を見開く。あれ? ちょっと待って。じゃあ、あの手紙は?


「あの、知らなかったんですか?手紙は?」


「手紙? 知らないわ。それよりあなたも……そう。道理で、偉そうじゃなかったのね。エリーズは、悪役だもの。それより、そしたら話が、通じるかもしれない」


  ジュリーは顔をあげた。


「魔王には、悲惨な過去があるの。実は魔王城に来るまで、私は自分が作ったゲームのことをぼんやりとしか覚えていなかったのだけど、しばらくして夢に見て思い出して……彼らがこうなってしまった理由を知った。それで私は、彼らを、助けたい。本当の愛を、教えてあげたい」


  けれどそれなら、これからどうするつもりなんだろう……それにいくら悲惨な過去だと言えと、罪のない人々を大量に殺したことに変わりはない。


「夢の中で、神様からも、言われたのよ。だから」


  膝の上で、手をぎゅっと握る。


  沈黙が流れ始めたとき、不意にガヤガヤとした喧騒が近づいてきた。

  扉の方を見つめる。


「エリーズ!」「姉さん!」


  部屋に飛び込んできたのは、リルとサラ。あと、アランとレオン。

 

「良かった! 無事で!」


  みんなに、ぎゅっと、抱きしめられる。



「ちゃんと約束。守ったよ。ちゃんと、生きて帰ってきた」


 

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