70. 最後の戦い
エリーズはあれから、次々と降ってくる魔法攻撃を、ひたすら切り落としていた。
もう、体の限界を感じる。
けれど、魔王は傷一つないままで。
もしあとひとつ、ものすごい威力の魔法が来たら、きっとエリーズは死んでしまう。きっと、勝てない。
「もう、次で終わりか」
無自覚なのかそれとも意識してなのか、先程から煽りまくってくる魔王に、エリーズは思わず舌打ちした。
少年漫画とかで、煽ってくる敵キャラクターとか見て、え、こんなんで腹立つの。明らか煽られてんじゃん、て思ってたけど、実際死にかけの状態で使われたらびっくりするくらい腹が立つということを、エリーズはこの戦いで学んだ。
魔王はゆっくりと手を構えた。おそらく、次で殺すつもりだ。魔法は、闇魔法を使ったかと思えば炎魔法を使い、次は何かと思ったら水魔法であった、というふうにランダムで、予想もつかない。
ただ、次で、生き残らなければ。
エリーズは大きく深呼吸した。
集中しろ。
剣に、体に、意識を。
ふと、ナイフが青く光ってるのを感じた。もしかして、瀕死の状態になり、覚醒したのだろうか。
一応神様から、このナイフももらったものだからな。
さっきよりも、目が良くなったように感じる。いや、良くなったわけではないか。
少し変わった点といえば、魔王の体の中央に、黒い核みたいなものが、見えただけだから。
けれどそれは、今までの漫画の知識を総動員するに、魔王の魔力の素となるようなものなんだろう。
じゃあ、きっと。
エリーズは、大きく剣を振りかぶった。
魔王が趣味の悪い声で笑う。
絶対に、勝つ。
魔法の猛攻をかいくぐったエリーズの剣が魔王に届いたその瞬間、「ちょっと待って!」と大きな声が、フロアに響き、そして、紫色の光が放たれた。
聞き覚えのある声に、思わず振り向く。
声を張り上げた人物は、レオンの姉ーージュリーーーその人だった。
バタン、と重力に従って地面に倒れた魔王を見て、強ばった顔をすると、ちょっと話をしましょう、と微笑む。
頷いたエリーズを、彼女は自分の部屋へと連れていった。
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