第三章 えたいの知れない不吉な塊がエリーズの心を始終押さえつけていた。
49. 恋する乙女は最強なのだ
次の日、エリーズは久しぶりに目覚ましいらずで目を覚ました。起きた瞬間から湧き上がるやる気。全てのコンディションが最高で、朝からバレエさえ踊れそうな勢いであった。まぁ、踊れないんだけど。
恋する乙女は最強なのである。
(まさかあんなことになるなんて……これがビビビ婚ってやつ? 元から婚約はしてたけど……)
エリーズとしても昨日の話はわりと事件だったのだが、言われてみれば、頭の中にはアランと結婚するというのが一番自然に思えたし、それにエリーズにとって彼は、恋人だのなんだのを全て通り越した存在として認識されていた。
それが突然本気の愛の告白をされて、それでもう、なんだかビビビっときたのだ。
要するにアランは、愛だとか恋だとか、そういう感情では縛れない相手ではあるが、少し違う一面を見て、さらに好きになったということである。
(さぁ、今日も頑張ろう!)
こうしてエリーズの今日は、いつもの五倍くらいのテンションで幕を開けた。
*
「エリーズ、昨日大丈夫だった?」
学校に着くとまず、リルが心配そうに駆け寄ってきた。昨日の一連の流れを見て、きっとエリーズはアランに反対されているんだろうと、思っているらしい。
「あ、うん。全然大丈夫だった! 昼休みに話すね!」
先生が教室に入ってきたのを見計らい、エリーズが言うと、リルは怪訝そうな顔をしつつも、頷いた。
時は流れ、昼休み。いつものベンチの場所に、リルと一緒に向かう。
「エリーズが言ってた意味、分かっちゃった」
ニヤニヤと笑いながらリルが言う。
「アランに、告白とかされちゃったんでしょ」
ばっちり当てられて、エリーズは目を瞬かせた。
「なんで分かったの?」
「だって、アランと話してるエリーズ達の空気がさ、なんかいつもと全然違うのよ。甘酸っぱいっていうか……」
タコさんウィンナーをつつきながらリルが言う。全部お見通しらしい。
「そんなに?」
自分ではそんなつもりなかったんだけど。
「そんなに。ね、どんな感じだったの?」
身を乗り出してリルは言った。
「まぁ色々、ね?」
こうして昼休みが終わるまで、エリーズは質問攻めにされたのだった。
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