50. 魔王討伐計画

「で、どうやって魔王を倒すんだ?」

 

  あくる日の放課後、いつもの集会の中に、アランも加わりだしてしばらく経った頃、アランがそんな疑問を口にした。


「分からない」


  即座に答えたのはレオンだ。彼は計画の中心も中心。この中では確実に一番魔王に関する情報を持っているだろうし、それにこの計画を考えているのは、彼だと言っても過言はない。

  彼の父親も今回の計画には協力しているようだが、計画の発端であるレオンに、ほぼ全てを任せているらしいというのが、彼の言葉の端々から見受けられた。


「今回の計画に関しては、そもそも不確定要素が多すぎる。魔王城の場所も分からないし、どうやって戦う気なのかもわからない。ただ、今までの戦いから予測して、備えることができる」


「記録は残ってるのか?」


  アランにそう問われ、レオンはゆっくりと頷いた。


「今回の件で、偶然発見した。ずっと死んだと思われていた兵が、生きていたことが発覚したんだ。彼から話を聞き出すことにも成功した」


「それでずっと、討伐班の陣営を考えてたのか」


「あぁ、そうだ」


  レオンはそう言うと、どこかから紙を取り出してきた。あれだ。アニメとかでアングル変わってまた戻したら、登場人物がいつの間にか道具持ってるってやつ。あれに感覚が近い。


「まず、魔王は骸骨やアンデッドなどの兵士をぶつけてくる。これらは国王軍より少し劣るくらいの能力であり、死んでも生き返る。要するに、無限ループだ。そのうちに人間が疲れ、死んでしまうという寸法なんだろう」


  言いながら、レオンは、魔王城、と書かれた部分の少し前あたりを指す。

  魔物の兵士達がいるらしき場所だろう。


「ちなみにそのアンデッド達は、その場限りで魔王の魔法により生み出されるものであり、元から兵士として仕えているわけではない。これは、その生き残った兵士の、魔物達を斬ったときに、魔法を斬ったときと同じ感触がするという証言から分かる」


  最近になって分かったことだが、ある一定以上の質の武器を使い、かつ一定以上の強さがあれば、魔法を斬ることができるらしい。

  ただ、それは単に魔法を"斬る"だけであり、その感触はあるが、魔法にダメージを与えることも、ましてや、相手にダメージを与えることもできないという話だった。

  つまり、「魔法を斬る」ということは、「魔法に剣で触れる」だけの行為であり、意味はないということだ。

  やはり魔法を剣で「斬る」ことができるのは、エリーズしか確認されていないらしい。


「それでだ。そのアンデッド達は、国王軍の者達に、戦ってもらう。その間、クルーエさんやサラには後方部隊として、国王軍をサポートしてもらう。で、ここで問題はベルナールさんだ」


  レオンをはじめ、リルやアランなどの視線がこちらに向けられた。


「ベルナールさんには、先に魔王のところへ向かい、戦ってもらう。ベルナールさんしか、渡り合える人がいないからだ。魔王が倒されれば、必然的にアンデッド達は死ぬ。つまりそこで戦いは終わる。あ、あと、魔王の部下達には、アレクサンドルなどの、大魔法士達をぶつける。それでどうにか、均衡を保つ」


  言い終わるとレオンは、またどこかに紙をしまい込んだ。


「つまり攻撃の要は、エリーズってわけだ」


  アランと目が合う。彼は、おそらく自分の恋人が一人でラスボスと戦わなければならないという不安から、苦々しい表情をしている。


  それを見て、思い出した。


(あれ? 私、もうバッドエンド回避したんじゃない?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る