20. 何か神様の手紙、適当になってきた気がする
すぐに手紙を隠し、授業を受ける。
内心それどころではなかったのだが、どうしようもない。我が家では、というか前世でも、お母様の言うことは絶対なのである。
(何で今日はあんなに赤かったんだろう。ていうか、何も書いてなかったんだろう)
先生が話している間、エリーズはずっと上の空だった。
「じゃ、ちゃんと復習するんですよ」
たくわえた髭をいじいじと触りながら、先生は帰って行った。後ろ姿もやっぱり、ザビエルに北条政子と何かを足した感じだった。
(明日の手紙に、今日のについて何か書いてるんだろうか)
お風呂から上がった後、宿題を済まし、ベッドに潜り込む。
(やっぱりこういう時、いや、こういう時だけじゃないけど、日本が恋しくなるなぁ。お母さんにも会いたいし、友達にも会いたい)
(明日になって、何か変わってたらいいけど)
祈るようにして眠る静かな夜は、優しく更けていった。
少し温かい朝日が瞼を照らし、エリーズは目を覚ました。
頭が覚醒してすぐ、エリーズは手紙へと手を伸ばした。周囲に誰もいないことを確認して(いたら怖いけど)封を切る。
恐怖のせいか、若干震える手で、便箋を開いた。
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親愛なるエリーズ嬢へ
昨日も上手くいったようで良かった。いやぁ、アランが早目に来たのは予想外でしたけどね。レオン君が何やら裏で動いているのも気になりますし。
さて、今日は、というか昨日もですけど、学校はありませんね。知ってるとは思いますけど、ここの世界、日本と同じで太陽暦を採用してるんですよ。それに週休二日制。貴女もこの国の歴史で習ったでしょう?
で、まぁ今日は何も無いと言えば何も無いんですけど、でもあんまり何もないのも退屈でしょう? と、いうわけで、リルと遊びにでも行かれたらいかがでしょう。
私、ゲームの中の貴女がリルと仲が悪かったの、あまりお互いのことを知らなかったのも原因の一つだと思うんですよね。
だからまぁ、遊びに行ったりして仲良くなれば、フラグの数も減ったりするかもしれませんし。二人でいるの見ててちょっと面白いですし。(これは冗談ですよ)
じゃ、ご機嫌よう。
神様より
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「何か最近、適当になってきてない? ていうか、レオンのこととかちゃんと把握してるわけじゃないのね。それに昨日のことについても何も書いてないし」
首を捻りつつ呟くと、何がですか? と後ろの方から声が聞こえた。はっとして振り向くと、ミアが笑いながら、部屋の扉を閉めていた。いつの間にか部屋に入ってきていたみたいだ。どうやら手紙を見ていたわけではないようで、胸を撫で下ろす。
「驚かせようと思って、静かに部屋に入ってみたら、何やら独り言を言っておられたので」
「何でもないの」
答えると、そうなんですね、とくすくす笑う。そういえば、とエリーズは手紙の内容を思い出した。
「それよりも今日、クラスメイトと、出かけるかもしれない。あ、まだその話は決まってないんだけどね」
そう言うと、ミアがぱちぱちと瞬きをする。エリーズが友達と出掛けることなんて、今まで数える程しかなかったのだ。
「予定は何もなかったと思いますけど、お母様に確認してみますね」
ミアは軽く部屋の掃除をおえると、嬉しそうに部屋を出ていった。
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