16. 休日の朝
ガヤガヤ、と少し騒がしい音で目が覚めた。
(今日何かあったっけ?)
カレンダーを確認しようと体を起こした。が、その前に頭が冴え、今日はアランがうちに来る日であることを思い出した。
アランは婚約してから週一で、学校に通いだしてからも、休日に、最低月に一度はここに来る。
現在の時刻は午前十時。アランが来るのはいつも大体午後一時くらいだから、まだ準備するのに時間があるだろう。
アランはルソワール王国第二王子であるため、絶対に失礼な態度は取れない。それで、彼がうちに来る時の準備にはこの家の人全員余念がないのだ。
「お嬢様、朝食の準備が出来ました」
ノックしてから部屋に入ってきたメイド長のミアが言った。彼女はいつも綺麗なブロンドの髪を三つ編みにしていて、頬にはそばかすが浮いている。目が少し離れていてファニーフェイスだ。
そして仕事がとんでもなく早い。何か頼んだら、十分以内に必ず対応してくれるくらいだ。
「あら?」
ミアが首を傾げた。一体何だろうと思って、彼女の目線を辿ると、赤いシーリングスタンプの付いた便箋に行き着いた。神様からの手紙だ。
「手紙ですか?」
ソプラノの高い声で彼女が言った。
「ええ、そうなの。最近出来た友達が手紙を書くことが趣味で、よく交換するのよ。これは、昨日貰ったやつ」
ベッドから降り立ち上がって、手紙を持つ。慌てたように聞こえただろうか。ちょっと焦るが、ミアのことだから、人の手紙の内容なんて勝手に見ないだろう、と判断して、手紙はそのままにしておいた。
それにエリーズの部屋に入るのは、ミア以外ほとんどいない。
「そうなんですか」
予想通りミアは納得したように頷き、ほら、早く用意して下さい。スープが冷めてしまいますよ、と言ってエリーズの背中を押した。
食堂に行くと、お母様、お父様がもう席に座っていて、ご飯を食べていた。今日のメニューは、ホットコーヒーにサンドウィッチ。それと具沢山なポトフだ。デザートに苺ジャムのかかったヨーグルトがついている。
ふわふわの卵サンドを口に運びながら、エリーズは昨日のことについてふと思い出した。
レオンに言われたこと、そして叩き折ったフラグ。もしかしたら神様からの今日の手紙に、諸々のことについて何か書いてあるかもしれない。
それに、単なる噂話にしては、レオンの声にはいくらか真剣さが滲んでいて、エリーズに何か訴えかけているようだった。
考え事をしていると
「エリーズ、ぼーっとしすぎです。アラン様が来ると言うのに、その調子ではいけませんよ」
母親から注意を受け、エリーズは素直に頷くと、ご飯を食べ終え、席を立った。
(まずは髪を結ってもらうか)
エリーズはミアを呼ぶと、部屋へと戻って行った。
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