19階層主戦4
目の前に現れたオレンジ色のスライム。
「あいりさん、俺は右側を!」
二体のうちの右側のスライムに狙いを定める。
『アイスサークル』
ヒカリンのスキルが発動しスライムの一体を捉えるが、みるみる内に氷は溶けだしスライムの周囲にはマグマ溜まりが出来上がり、溶けた氷により蒸気を噴き上げている。
間違いない。やはりこのスライムは色をかけることにより攻撃属性が変わる。
それも複数。
小型のスライムですら、これだけのスキルを使ってくる。
ボススライムと戦っているベルリアに目を向けるとボススライムを中心に広範囲がマグマの沼と化し近づくことさえままならない状況となっていた。
「マスター! 前です! 注意してください」
ベルリアの状況に意識を取られてしまった間に、目の前のオレンジスライムが高速移動してきたところをティターニアが『ドラグナー』で撃ち抜いた。
「まだです。マスターとどめを! 『ウィンガル』」
『ドラグナー』の一撃は確かにスライムを撃ち抜いたが、急所を的確に捉える事はできなかったようだ。
弾けた身体が再生し始めているスライムへと駆け、殺虫剤ブレスを吹きかけ倒す事に成功する。
即座にあいりさんのサポートに回る。
ティターニアのスキルによるステータスの底上げによる効果で身体が軽く感じる。
「あいりさん、俺も入ります」
「ああ、頼む」
あいりさんも、スライムによるマグマとその高速移動に手を焼いている。
ステータスのおかげでスライムの高速移動もどうにか見える。
移動する先を予測してバルザードの斬撃を飛ばす。
「ギィイイイン」
斬撃の先で金属音が響き渡る。
バルザードの斬撃も決定打とはならないが、動きを止めることには成功した。
「あいりさん!」
「任せろ。やああああ〜! 『斬鉄撃』」
動きを止めたスライムへとあいりさんの一撃が炸裂しとどめをさした。
残るはボススライムだが、広範囲のマグマ溜まりに近づく事が出来ず、ベルリアが遠目から『ヘルブレイド』を放ち攻撃している。
俺達もベルリアに並び遠距離攻撃をしかけるが、僅かばかり削るだけでボススライムを倒すには威力が足りない。
その時頭の中にシルの歌声が聞こえてきた。
これは『戦乙女の歌』か。
身体中を高揚感が駆け巡り、それと同時に放つ斬撃の威力が増す。
目に見えて、ボススライムに与えるダメージが増える。
横で攻撃しているベルリアの威力も増しているのがわかる
ようやくか。
切迫したボス戦の最中だというのに、俺は感慨を覚えていた。
『戦乙女の歌』の効果は互いの信頼関係に依存する。
最初の使用時にはベルリアに効果らしい効果は現れなかった。
それが今ははっきりと効果が現れている。
それは信頼の証。
ベルリアは俺以外にもしっかりと受け入れられている。
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