凍ってもたぶん死なない

そこからの決着は早かった。

一方的に緑のたぬきを叩き潰し、残りの2体も程なく消失した。


「ドロップは無しか〜。赤字だ、赤字。強いくせにケチくさいんだよ」

「八雲、いちいちうるさい」

「お! 戦闘で気づかなかったけど、他のパーティがきてたのか」

「ほんとだ」


どうやら戦闘を終えこちらに気がついたようなので、挨拶しておく。


「こんにちは」

「ああ、こんにちは?」


ダンジョンで「こんにちは」というのもおかしな気もするが、咄嗟に思い浮かぶ言葉が他になかったので仕方がない。


「すごい戦いでしたね」

「ああ、ありがとう。君たちは……随分若いな」

「幼女? 子供もいるのか? いや、サーバントなのか」

「いや、まあ」

「もしかして君、『黒い彗星』じゃない? 真っ黒な装備にかわいい女の子、それにサーバント。絶対そうでしょ」

「いや、まあ」

「おお〜君が噂の『黒い彗星』か。もう19階層なのか。さすがだな」

「いや、そうでもないです」


こんなガチ目なパーティの人にまで俺の事は知られてるのか。

俺も普通に答えてしまっているけど『黒い彗星』をいまだに受け入れ難い自分がいる。


「本当に、女の子ばかりのパーティなんだな。噂通りのリア充ぶりだ。羨ましい限りだよ」

「いや、そんなことは……」

「『黒い彗星』も19階層なんだな。よかったらしばらく一緒に行かないか? 戦闘は一緒でもいいし、交互でもいいから」


以前一度他のパーティと一緒にまわった事があるが、結構勉強になったし俺としては誘ってもらえて嬉しいところだ。

それにこの階層まで来ている人達にサーバントの事を見られたとしても問題にはならないだろう。

ただ勝手に決めるわけにもいかないので、メンバーに確認を取る。


「俺はいいと思うんだけど、みんなどうかな」

「いいんじゃないか」

「いいと思うのです」

「海斗の好きにすれば」


みんな賛成してくれるようなので、あらためてこちらからもお願いする。


「よろしくお願いします。19階層にきてから、結構苦戦してたりするんで勉強させてください」

「いやいや、俺たちも今見た通りこの階層には苦労してるんだ。硬いし特に色付きのやつには手を焼いてる」

「あ〜俺たちもです。特に青いのに」

「凍らせてくるやつな。あれはくらったらヤバい。あれをもろにくらったら生命はないだろう。回避一択だ」

「はは……」


それが、凍っても生命に別状はないんだよなぁ。ベルリアは2度凍ってるけどピンピンしてるし。

いや、ベルリアが悪魔だから大丈夫なだけなのかも。


お知らせ

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚8の発売が2/1に決定しました。

現在鋭意製作中です。

12/27発売のコミック3巻とあわせてよろしくお願いします。

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