緑の

「ご主人様、この先にモンスターです。ですが、すでに戦闘中のようです」

「それって、先行の探索者とって事?」

「はい、おそらく」

「珍しいな。19階層で他の探索者に遭うのは初めてだな」

「そうよね。探索者の数もそれなりにいるはずなのに、ほとんど遭わないわね」

「まあ、それだけダンジョンは広大でしかも下層手前の19階層ともなるとな」

「そうですね」

「とりあえず、警戒しながら進んでみましょうか」

「そうだな」


前方へと注意を向けながら進んでいくと、先行者の戦闘音が聞こえてきた。


「くそっ、やっぱりこいつら硬すぎる」

「英士叩き壊せ」

「軽く言ってくれるな。おおおああ!」

「動きが止まった。いまだ!」


まだ声しか聞こえてこないが、かなり激しい戦いのように思える。


「ここからじゃ、まだ状況がよくわからないな。邪魔しないように、もう少し進もう」


他のパーティの邪魔にならないよう声の方へと更に向かっていくと、すぐにモンスターと戦っているパーティを目視する事ができた。

モンスターは3体。

それに対するパーティは7名。

年齢は俺たちよりも上に見える。


「慶次! 緑の奴がヤベ〜。2人じゃ無理だ。誰か1人寄越してくれ!」

「こっちは手一杯だ。桂花、八雲をフォロー!」

「まかせて。絡めとれ! 『ローズバインド』」


もしかしてあのモンスターは緑のたぬき!?

赤と青が出たから、可能性は感じていたが本当にいるとは。

緑のメタリックモンスターは、他のモンスターに比べるとずんぐりとしているがその動きは、少し離れたここからでも速いのがわかる。

桂花と呼ばれた人が放った拘束系のスキルをかい潜り、攻撃を放った。


『ガアアアァン』


緑のたぬきの前方に大きな岩が現れ、それが弾け四方へと飛び散った。


「クソッ、痛えっ。このたぬき反則だろ。桂花無事か!」

「大丈夫、それより大地、あのたぬきどうにかして」

「仕方ねえ。突っ込む。八雲行くぞ」


たぬきに向け、男の人2人が突っ込む。

2人ともかなりのスピードだ。

ただ、たぬきは2人の速さを上回っている。


「止まれ! 絡めとれ『ローズバインド』」


女の人が再び放った荊がたぬきを捉え、たぬきの動きがにぶる。


「ナイスだ桂花! オラああ! 砕けろおおお!」


『ガギイィイン』


「こっちもだ! 潰れろ! 」


2人がハンマーのような武器をたぬきに叩きつけると、火花が飛び散る。

おそらく何かのスキルか武器に特殊効果が付いているのだろう。


「クソッ、硬えぇ。勿体無いけど、くれてやる。喰らえぇ」


『ドウゥン』


男の探索者の言葉の直後、たぬきの頭部が突然爆ぜた。


「いまだ!」

「うおらああああ〜!」


こちらまで火薬の匂いが立ち込めているので、さっきのは爆弾の一種を使ったのだろう。

緑のたぬきにかなりのダメージを与え、動きが完全に止まったところを2人が襲いかかった。

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