足下注意
「ルシェ!」
「なんだよ。うるさいな〜」
「あれって効いてないだろ」
「こらからだろ。まあ、みてろって」
赤いキツネは獄炎に覆われ少し動きが鈍ったものの普通に動いている。
「おあっ!」
獄炎を放ったのはルシェだが、赤いキツネの視界には俺しか捉えられていないのか、完全に俺をターゲットにスキルを発動させてきたので、必死に避ける。
「ルシェ、大きな口をたたいたんだからなんとかしてくれ」
「そんなに焦んなって。生意気なキツネだな」
溶岩を操るだけあって、赤いキツネはルシェの獄炎に対して強い耐性を持っているようで、倒れる様子は一切見受けられない。
「ルシェ!」
「何回も言わなくてもわかってるって。急かす男はモテないぞ」
「いや、この状況なら急かすだろ」
「はいはい。炙れないなら溶かせばいいんだろ。さっさと溶けて無くなれ.『侵食の息吹』」
俺に急かされ、緊張感なくルシェが赤いキツネに向け新たなスキルを放つ。
どうだ?
反撃に即座に対応できるよう神経を張り巡らせ赤いキツネの動きを観察する。
さっきまで左右に動きを見せていた赤いキツネの身体が動きを止める。
「ガガがggghgaがggggaaaaa」
キツネが機械音とも呻き声とも取れない異音を発し、小刻みにその身体を震わせ始める。
「ほらみろ。もう溶けてきたぞ。赤いだけしか取り柄がないキツネが私に敵うわけないんだからな」
キツネの身体が溶け始め、ほんの数秒でその場から完全に消えて無くなった。
「あ〜疲れた〜。赤いだけあっていつもより疲れたな〜。普通のキツネより疲れたな〜」
「そんなアピールしなくてもわかってるって。魔核はちゃんと渡すけど、まだ終わってないから」
「え〜遅い男はモテないぞ」
「ルシェ、さっきは急かすのがモテないって言ってただろ。言ってることが変わってるぞ」
「まあ、どっちにしても海斗はモテないって事だな」
赤いキツネを倒す事には成功したが、まだ戦闘は続いている。
ルシェに魔核を食べさせている場合ではない。
俺はサポートをするべく、青い狼と戦っているベルリアの状況を確認する。
「え……なんで」
さっき確認した時は青い狼の攻撃を『ファントムステップ』を使い華麗に躱していたはずのベルリアが凍っていた。
両手を上に上げ、斜め30度くらいの角度で後方へと倒れかけている状態で凍ってしまっている。
青い狼は健在なので、すぐに氷漬けになったベルリアの方へと向かい対峙する。
「あいりさん……」
「すまない.私もベルリアの戦いは見ていなかったんだ。しかし、この体勢は……」
「やっぱりそうですよね」
ベルリアの戦況をフォローしていたわけでは無いが、俺と一緒にベルリアの前に立つあいりさんにもベルリアが凍ってしまった状況が理解できているようだ。
氷漬けのベルリア。
その氷の中の体勢と表情が如実にその状況を表していた。
ベルリア……滑ったな。
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