赤いキツネは熱い
床に広がった溶岩が熱い。
間違っても触れたらやばい。
キツネまでの最短距離は完全に防がれてしまっているので、足下に気をつけながら迂回して距離を詰めようと試みるが、床が所々凍っているせいでスピードを出すことが出来ない。
注意深く歩くには問題ないが、赤いキツネに意識を割いた状態で速度を上げると完全に滑る。
そして俺の動きに反して何故か赤いキツネの動きは普通に素早い。
やはり、このフィールドでは4つ足のアドバンテージが大きいようだ。
あいりさんも俺より先行してはいるが、スピードは明らかに遅い。
赤いキツネは俺達が距離を詰めるよりも素早く動きこちらへと顔をむけてきた。
「あいりさん!」
必死で足裏に力を込めて、赤いキツネの正面から外れるように側面へと前転しながら跳ぶが、さっきまであいりさんのいた場所がオレンジ色に染まる。
あいりさんも俺同様に飛び退いて、溶岩を躱す。
俺は起き上がると同時にすぐに理力の手袋の力を使い赤いキツネの足首を掴み、動きを止めにかかる。
一瞬挙動がおかしくなり、効果を発揮して動きが止まったように見えたが、直ぐに動きを取り戻してしまった。
足を動かし逃げながら、赤いキツネの視界から外れるように側面へと向かう。
やはり赤いキツネも色付きだけあって強い。
攻略のイメージが湧かない。
赤いキツネに注意を払いながら、もう一体の色付きとひとりで戦っているベルリアが気になり視線を向ける。
「当たらなければ、そんな攻撃私の相手にはなりません」
ベルリアは正面から青い狼と対峙していたが、凍らされる前に移動し完璧に氷結の攻撃を躱している。
青い狼のスキル発動のタイミングを完全に把握しているのか、『ファントムステップ』で敵を翻弄している。
ベルリアは心配なさそうだ。
俺には華麗なステップもスキルを感知する超感覚もないので、溶岩に溶かされないように集中だ。
「これならどうだ! 『アイアンボール』」
あいりさんが放った鉄球が赤いキツネに命中し、頭部を跳ね上げる。
俺もバルザードの斬撃を飛ばし追撃をかけ、ダメージを与える事には成功したが、赤くてもメタルモンスターの外装は硬く倒すには至らなかった。
俺たちの攻撃を耐えた赤いキツネがこちらの方へと顔を上げるのが見えた。
まずい。
再び、脚に力を込め全力で横へと飛び込むが、その瞬間下肢に急激な熱を感じる。
「あつっ」
着地と同時に、更に脚に力を込めその場から離れ、即座に熱を感じた脚を確認する。
よかった。俺の脚は燃えても溶けてもいない。
熱を感じた時には、溶岩をくらってしまった可能性を考えてしまったが、辛うじて避ける事ができていたようだ。
俺のすぐ傍を赤い溶岩が流れている。結構ギリギリだった。
「海斗〜手伝ってやろうか? たかだが赤いだけのキツネに随分手こずってるみたいだな」
後方から緊張感の薄いルシェの声が聞こえてくる。
「ルシェ、頼む。こいつ思った以上に強い」
「ふふん、あとで魔核いっぱいくれよ。溶けて無くなれ.『破滅の獄炎』」
ルシェの獄炎が赤いキツネを覆い燃え上がった。
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