俺、隼人

「理香子、この人たちは理香子の知り合いってことでいいんだよね」

「うん、茜もう大丈夫だよ。海斗先輩が助けに来てくれた」

「海斗先輩ってもしかしてあの超絶リア充『黒い彗星』! 本当に知り合いだったんだ」

「だから、前からそう言ってたじゃない」

「みんな『黒い彗星』だよ。これで帰れる。やった〜」

「あの〜理香子ちゃん、俺もいるんだけど」

「『黒い彗星』って本当に装備黒いんですね。黒っていいですよね」

「ああ、どうも」

「いや、そっちの子も俺もいるんだけど」

「そっちのピンクの女の子は、もしかして噂のサーバントですか?」

「ああ、まあ、そうだけど」

「きゃ〜やっぱり。かわいい〜」

「いやだから俺も……」


隼人がどうにかして存在をアピールしようとしているが、ことごとくスルーされている。

それに野村さんのパーティメンバーを見ると四人とも野村さんと近い年齢に見える。さっきまで、完全に落ちきっていたはずだが、女子高生中心だからなのか、特有のノリで既に盛り上がっている。

それにしてもこの子たちにまで『黒い彗星』として認識されているのか。

いったいどこの誰が噂を拡散しているんだ。もう沈静化することはほぼ諦めたけど、以前より拡がってるんじゃないのか。


「あ、隼人先輩、なんでここにいるんですか?」

「理香子ちゃん……なんでって、そりゃあ理香子ちゃんたちを助けに来たに決まってるだろ〜」

「冗談です。ありがとうございます。本当にうれしいです」

「あ、そ、そう? ははは、まあ、俺も放っておけなくて」


隼人……野村さんの反応に完全に舞い上がってるな。


「あ〜すいません、そっちのマントの人も理香子の先輩ですか? 助けに来てくれたんですか? 助かった〜」

「あ、うん、そう。俺、先輩」


隼人がロボットみたいな喋り方になってる。

隼人普段はあれだけ軽やかに口が回っているのに、女の子を前にして舌が全く機能していない。


「隼人さんっていうんですか?」

「はい、俺、隼人、です」


それから少し落ち着いてから他のメンバーの人にも事情を確認してみた。

やはり、五階層には、まだ数回潜っただけで、昨日調子が良かったのでいつもよりも奥まで探索エリアを伸ばしたらしい。

そこであの隠しダンジョンへとたどり着いて気がついたらこのエリアへと来ていたそうなので、まず間違いなくこの中の誰かがトラップにハマったのだろう。

一応トラップの件は伝えようとは思うけど、伝えるのは誰がハマったのか喧嘩にならないよう、抜け出すことができてからの方がいい気がする。


「それにしても無事でよかったよ。この階層のモンスターと戦ってよく逃げ切れたなぁ」

「はい、それは、完全に運です。戦ったんですけど、全く歯が立たなくて死ぬかと思いました」

「ここのモンスターは俺たちでもヤバかったから」

「そうなんですか? 海斗先輩でもヤバかったんですか? それじゃあやっぱりわたしたちじゃ絶対無理じゃないですか。逃げてずっと隠れてて正解でした」

「ああ、本当に正解だと思う。この階層のモンスターはおそらく二十階層クラスだ」

「二十階……」


俺の話を聞いて今までテンションの上がっていた女の子たちも一様に言葉を失ってしまった。



あとがき

新しくサポーターになってくれた読者の方ありがとうございます。

お陰でモチベーションが上がりました。

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