発見

「海斗、ヤギは強かったけど無傷で倒せたんだ。まずいのはまずいけど大丈夫……だよな」

「いや、正直かなりキツイ。ティターニアのサポートを受けて三人がかりでやっとだからな。それにさっきのはどう考えてもボスじゃない。普通にいるモンスターであのレベルだぞ。かなり慎重にいくしかない」

「やっぱりそうか。本当はわかってた」

「まあ、ポジティブに考えれば三人でかかればなんとかなったんだから、三人で進むしかないだろ」


この場に留まるという選択肢がない以上このまま進むしかない。

もしかしたらすぐこの先に出口があるかもしれない。

周囲へ注意を払いながらダンジョンを進むと分岐しているので右折して、そのまま進もうとすると、その先は二十メートルほどで行き止まりとなっていた。


「あっ……」

「おい、海斗あれって」

「こんなところにいたのか」


行き止まりの端に五人の女の子がくたびれた様子で座っているのが見えた。

それぞれかなり汚れていて装備も乱れているが、出血等はこの位置からでは確認できない。

その中には俺たちが探していた相手、野村さんの姿も確認できた。


「えっ……だれ?」


女の子の一人がこちらに気がついたようで、顔を上げてこちらに視線を向けてきた。

こういう時にはできるだけ落ち着いた対応が必要だ。

俺は一呼吸置いてから、極力ゆっくり喋りかけようとしたが、


「あ〜! よかった〜! 君たちのことを探してたんだ! もう大丈夫だよ! 安心してよ!」


俺より先に隼人がハイテンションで声をかけた。

残りの四人も一斉にこちらに顔を向けてきた。


「探してた? えっ? なんで? 誰?」


俺たちのいきなりの登場で五人が混乱しているのが伝わってくる。

そりゃそうだよな。いきなり知らないマント姿の探索者二人と幼女が現れたら対応に困るよな。

この後どう声をかけたらいいか考えていると顔を上げた野村さんと目があった。


「あっ、海斗先輩」

「ああ、野村さん、大丈夫だった?」

「えっ、なんで海斗先輩がここに」

「いや、海枝さんって子が教室に来て野村さんが帰ってこないっていうから探しに来たんだ」

「紀梨花が……それじゃあ本当に助けに来てくれたんですか?」

「まあ、そうなるな」

「う……ううっ。海斗先輩〜、怖かったんです。五階層で張り切ってたら、訳がわからないうちにいきなり飛ばされて。ここのモンスターに全く歯が立たなくて、煙幕使ってなんとか逃げ出して、うう、わぁあああん〜」


野村さんが泣き出してしまったが無理もない。

さっきの言葉からだとトラップにハマってここに飛ばされたことすら把握できていないような気がする。

それにしても、レベル十にも満たないはずの彼女たちが、この階層のモンスターとやり合ってよく無事だったものだ。

煙幕を使って逃げたと言っていたが、本当に幸運だったといえるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る