唯一のカード


このまま進んでいいのかもわからないが、ダンジョンなので出口がどこかにあるのは間違いないだろう。


「隼人、ここにいてもどうしようもないしとりあえず進んでみるか?」

「そうだな。もしかしたら野村さんたちもここにいるのかもしれないしな」


たしかに隼人の言うことにも一理ある。もし野村さんたちがダンジョンにいるとすれば五階層の隠しダンジョンからここに飛ばされた可能性は十分にある気がする。


「問題はこの階層のモンスターだな。俺たち二人でいけるやつだといいけど」

「海斗、シルフィーさんたちが喚べないのはわかったけど、ティターニアちゃんも喚べないのか?」

「隼人……冴えてるな。たまにはいいこと言う」

「海斗、その言い方はひどいな」


シルフィーたちは喚べなかったがティターニアはもともとカードに戻していた。もしかしたら喚べるかもしれない。


「じゃあ喚んでみる。ティターニア召喚!」


俺が 喚んだ瞬間エフェクトが発生してその場にティターニアが現れた。


「おおっ!」

「ああっティターニアちゃん」

「マスター……ここは」

「トラップにハマってどこか違う場所に跳ばされたんだ。シルたちとははぐれて、おまけに喚び出せないんだ。ティターニアだけでも来てくれて助かったよ」

「そう……なのですね」

「これから先に進むけどティターニアも一緒に戦ってくれ。俺たち二人だけじゃ不安だったんだ」

「わかり……ました。がんばり……ます」


ティターニアもサーバントの中では前衛タイプとは呼べないが、それでも普通の探索者として考えるとドラグナーを使えば十分前衛もこなせる力があるし、補助スキルもあるので俺と隼人だけの時と比較すると格段に戦力がアップしたといえる。


「それじゃあ進もうか。ティターニアも敵の気配があるようなら教えてくれ。一応俺と隼人が前でティターニアはそのすぐ後ろでいこう」


ティターニアもシルほどではないがモンスターの気配がわかるようなので、この未知のフロアでは頼りにしたいところだ。


「海斗、やっぱりこの階層の感じに見覚えは無いのか?」

「ああ、全くないな」

「じゃあやっぱり十九階よりも下なのか」

「いや、シルたちを喚べないことを考えても通常のフロアとは全く別のフロアの可能性も高いと思う」


注意を払いながら進んで行くとすぐにモンスターと遭遇した。


「海斗、あれは羊、いやヤギか?」

「そうだな頭が3つか。普通じゃないけど毛も少ないしヤギだろ」


サイズもかなり大きいし頭が三つあることを考えても弱いモンスターでないのはすぐわかる。


「ここは俺からいく。『必中投撃』」


隼人が手に持つ大きめの釘を五本同時に放った。

放たれた釘は、それぞれ三つの頭に命中した。


「やっぱり浅いか」


釘は頭部に刺さってはいるが、三つ頭のヤギが止まる気配はない。


「ティターニア!」

「はい……いきます」


ティターニアがドラグナーを使い高速の弾丸を放つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る