転移


「お、おいっ! ルシェまさか!」


俺は後方のルシェの方に振り返るが、その瞬間周囲の景色が、加速するように流れていき一変した。

完全にトラップが発動したらしいが、これってなんだ?


「海斗、これって……」

「隼人もか……」


周囲を見回してみるが、どうやらこの場にいるのは俺と隼人だけらしい。


「ここってダンジョンの中だよな。だけどどうして……」

「たぶんルシェだ。ルシェがトラップにハマったんだと思う」

「じゃあルシェリアさんはどこに?」

「ルシェがトラップにハマって影響を受けたのは俺たち二人てことだ」

「そんなことあるのか?」

「ああ、よくあることだ」


もしかして隼人も不幸体質なのか? それとも俺に巻き込まれただけ? いずれにしてもここはさっきまでいた場所とは違っている。

どう見てもダンジョンには違いないが、おそらくどこか違う場所の飛ばされた。

ただ、この感じ五階層とは違うように思える。


「それより、ここどこなんだよ」

「五階層ではない気がするけどな」

「海斗、焦ってないのか? なんか落ち着いてるな。俺は正直かなり焦ってるんだけど」

「まあ、ここがどこでもシルとたちを喚べばいいだけだし、最悪『ゲートキーパー』で跳べばいいだけだからな」

「あ〜それでか。シルフィーさんたちを喚べるのか。さすがはサーバントカードだな」

「それじゃあ、早速喚ぼうか。シルフィー戻れ。シルフィー召喚!」


あれ? なにも起こらない。


「海斗?」

「なんで? ルシェリア戻れ。ルシェリア召喚!」


やはりなにも起こらない。


「海斗もしかして」

「いや、ちょっと待ってくれ。ベルリア、カードに戻れ。ベルリア召喚!」


サーバントカードがあれば距離があったとしてもカードに一旦戻すことで、再召喚できるはずだ。

今まで最大有効距離を測ったことはないが、俺の中では今までできてきたのでそういう認識だった。

それが、なぜかなんの反応もない。

距離がありすぎるのか? それともここが特別なフィールドなのか。

いずれにしても、全く未踏の地でサーバントがいないということは、俺にとって死活問題と言っても過言ではない。

ここが、見た目通り五階層ではなかったら。

少なくとも俺の記憶にある十八階層までで思い当たる階層はない。

俺の杞憂であればいいが、もしここが十九階層よりも下層であったらやばい。


「隼人、手をかしてくれ」

「海斗、こんな時にまさか……」

「おい!」

「冗談だよ」


俺は隼人の手を握りスキルを発動する。


『ゲートキーパー』


「海斗、移動は……してないよな」

「ああしてないな。『ゲートキーパー』も発動しないのか」


今まで十八階層までで『ゲートキーパー』が発動しなかったことは一度もない。

やはりここは特別なフィールドなのかもしれない。


「海斗、まずくないか?」

「ああ、まずいな」


未知のエリアでサーバントも喚べず『ゲートキーパー』で戻ることもできない。

ルシェ! ルシェのせいでヤバい。たぶんものすごくまずい状況に陥ってしまったようだ。

冗談抜きでどうしよう。

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